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青龍さんじゃない!

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われていた1人の元殺し屋と仲間達の最後の戦いを描いた物語。

 その光景、というより現実に、未だ実感が湧いていない者が1人いた。芹である。


「……あの、青山君のお姉さん」


「ん? 何?」


「本当に、青山君が青龍さんなんですか?」

 かつて、自分もそう思っていた時期があった奏は、正直に答えるべきか迷ったが、ここまでバレては誤魔化しようがないと判断し、肯定した。


「どうして、青山君が?」

 芹に尋ねられた奏は、戦っていてそれどころではない青龍に代わって、彼が殺し屋になった経緯を全て明かした。

 クラスメートの知られざる裏の顔。悲しくも狂気に満ちた人生に、芹は言葉を失う。


「信じたくないだろうけど、事実だよ。あいつや雲雀達は、それを懸命に隠して日常を過ごしてたの。最初は私にも秘密にして……だけど、これもわかって。あいつらは保身のために隠してたんじゃない。友達であるあんたらにバレて、怖がらせたくなかったんだよ」

 奏の言いたいことはわかるが、それでも簡単に割り切れるものでもない。衝撃の真実を芹は受け止め切れずにいた。


 そのような会話をされてる間も、源士郎と戦っていた青龍は、彼の2つ目の能力を強く警戒していた。


(まずいな。あの火を放つ手をなんとかしないと。距離があるからまだ対処できるけど、下手に近付いて触れられたりしたら、それこそ……かくなる上は、龍人化するしかないか)

 龍人化さえすれば、源士郎の刀や火など無効化できる。そうなった自分の姿を見て、芹が更に怖がる可能性はあるが、背に腹は代えられない。

 源士郎を払い飛ばして間合いをとった青龍は、龍人化に向けて意識を集中し始めた。


 全ては彼女達を守るため。それなのに、


「もうやめて! 青山君!」

 何を血迷ったのか、当の芹は青龍に戦闘をやめるよう訴えた。

 依頼者の予想外の行動に、青龍は集中力を途切れさせる。


「あんた、何を!?」


「どんな方法でそうなったかわからないけど、青山君は青龍さんのフリをしてるだけなんでしょ? 私を守るために、希望を与えるために。なら、もういいよ! 青山君の気持ちは十分伝わったから」


「ち、違うんだ井川さん。僕は――」


「違わない! でなきゃ、信じられないよ。あの優しくて他人第一な青山君が、殺し屋なんて……」

 事ここに及んで、まだそんなことを言っている。あまりにも理解力が無さすぎる芹に、源士郎は大笑いする。


「フハハハハ! 前々から愚かだとは思っていたが、ここまでとはな。真実を知らされてもなお、そこから目を背け、自分に都合がいいようにねじ曲げるとは、やはり貴様はクズだ。いい加減理解しろ。お前が依頼した殺し屋・青龍とは、この男だ。どれだけ否定しようと、この事実は覆せん」


「そんなことありません! ()()()()()()()()()! ()()()()()()()()()()()っ!」

 芹は認めたくない一心で、感情に任せて強く否定した。

 その瞬間、源士郎の笑みが、邪悪なものへと変わる。


「その言葉を聞きたかった」

 そう言われて、初めて芹は『しまった』といった感じで口を塞いだが、時既に遅し。青龍の髪はみるみる内に黒髪になっていき、元の姿に戻ってしまった。

 自分の意思とは無関係に戻ってしまったことに、龍は当惑するが、それどころではない。


「スキありだ。小僧」

 懐まで一気に間合いを詰めた源士郎は、そう言うや否や、左手の平を彼の腹に当て、槍先のような赤い何かで貫いた。

 幸い、2本のドラコスラッシャーが盾となってくれたことで急所は外れたが、その場で吐血し、昏倒してしまう。


「龍っ!」


「感謝するぞ井川芹。お前のおかげで、最大の障害を排除できる」


「そんな……青山君……」

 ショックを受けた芹は、その場でへたりこむ。

 確保するには絶好の機会だが、源士郎は敢えてスルーし、後回しにする。先に龍の息の根を止め、後顧の憂いを断つつもりなのだ。


「貴様ともそれなりの付き合いだったが、ここでお別れだ。さらばだ。死獣神のエースキラー・青龍」

 刀を逆手に持ち、龍の首に切っ先を向けた源士郎は別れの言葉を告げると、非情な刃を突き下ろした。

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