挙動不審すぎる
ということがあり、現在に至る。
「てかさぁ、どうすんの? 流石に不参加ってわけにはいかないでしょ?」
「うん。それぐらい警戒すべき相手だし、ほっとけないよ」
「でしょうね。となると、隠れて変身するしかないんじゃない? ○ラーク・ケントか○ルトラマンみたいに」
「それしかないか。はぁ……ヒーローなんてガラじゃないのになぁ」
よっぽど性に合わないと思っているようだ。龍は深い溜め息を漏らし、最後の一口を口に運んだ。
そんな彼の背後から誰にも気付かれることなく、近寄る者がいた。ちょうど話題に上がっていた芹である。
「あの、青山君達?」
出し抜けに声をかけられて、びっくりした龍は、麺を勢いよく噴き出し、思いっきりむせた。
「ひゃいっ!」
素っ頓狂な声で返事をするというオマケ付きで。
「そんなに驚かなくても……」
「あぁ、ごめん。それより、どうしたの?」
「さっき、先生から聞いたんだけど、赤羽さん達は、死獣神の仕事を辞めるために世間的に死んだんだよね?」
先生が明かしたのなら、偽る必要はない。雲雀らは素直に肯定する。
「なら、どうして青山君と青山君のお姉さんまで? 2人と叶さんは殺し屋じゃないんでしょう?」
龍=殺し屋じゃないと思ってるからできるごもっともな質問に、ギクッとした龍は、目を泳がせながら答える。
「あ、あぁ、うん。それは、柚達と幸せに生きるためには、エピウスで結婚して移住した方がいいと思ってね。そ、それで、ついでにってことで……」
浮気を指摘されたかのような挙動不審ぶり。
情けない旦那の様子に、妻4人からは『隠し事が下手すぎる』と、頭を抱えドン引きされたが、龍は正直者というイメージがある芹は、素直に信用した。
「そうなんだ。じゃあ、今はそっちで?」
「うん。娘も2人産まれたし、平凡だけど充実した毎日を送ってるよ」
「ま、仕事の方はやっと繁盛してきたとこだから、稼ぎとしてはまだまだだけどねー」
痛いところを突かれて、龍はガックリと肩を落とす。そんな家族間のちょっとしたいじりですら、家族を失ったばかりの芹には羨ましく思えた。
そうして、青山一家を眺めていた芹だったが、ふと、本来いるべきはずの人物がいないことに気付いた。
「あれ? そういえば叶さんは?」
「未来なら、さっき敷島博士にアポをとって、会いに行ったよ」
さらっと言われたとんでもないことに、芹は喫驚する。
「え!? どうして!?」
「おそらく、彼を止めたいんだと思います。これ以上、誰かの血が流れる前に」
それだけ未来にとって京介は、特別な存在だということである。
「そうしたいっていう気持ちはわからなくもないけど、やっぱり甘いし、無謀ね」
「せやな。敵の根城にたった1人、それも丸腰で説得に行くやなんて、あいつらしくないわ」
「じゃあ、どうして止めなかったの?」
「止めても無駄だからだよ。未来はあぁ見えて頑固なところもあるから。もちろん心配はしてるけどね」
未来の意外な一面にも驚かされたが、そこもひっくるめて信頼し、送り出した龍達一家に、芹は驚嘆した。
その時だった。爆発音と共に建物が大きく揺れ、警報が鳴り響いた。
「な、何!?」
「ママ……」
「どうやら、お出ましのようね。大丈夫よ果林。ママ達が果林を守るから」
敵襲を察知した柚は、娘を安心させる一言をかけると、雲雀と澪を先に行かせ、
「龍君。あなたは彼女に気付かれないところで、青龍になってから来て。この際、四の五の言ってられないでしょう?」
と、芹に聞こえないように耳打ちしてから、2人を追って外に向かった。
了解した龍は、ひとまず奏と芹と娘達と共にその場に留まり、機を見てこっそり変身することにした――――




