天と地
不意を突いた一撃必殺。それしかペルソナを倒す方法は無いと、ペガサスらは悟った。
「これは、ますます本気でやるしかなさそうね」
「みたいね」
「零、恋。2人はあれになって。瞳はその間、時間を稼いでくれる?」
「OK」
そう返事をした瞳が恋と一緒に駆け出すと、零は自らの気を高め、ペガサスは滞空して腕をクロスさせた。
「あの構えは……なるほど。そうくるか」
「余裕ぶってるのも今の内だよ!」
手を額に当てて眺めるポーズをするペルソナに迫りつつそう言った恋は、妖気を収束した剣を形成すると、瞳との同時攻撃をくらわせた。
「無駄だってことがわかんないかなぁ?」
バリアで身を守ったペルソナは肩を竦めると、迂闊に接近した恋に対し、カオスによるボディーブローをくらわせ、腹を貫いた。
一目見て、致命傷だとわかるほどの深刻なダメージ。それでも、恋は死んでいない。
自身の体を貫通した男の腕を左手で掴むと、髪の毛の色を緑から青へと変化させ、有り余る妖気を幻魔に集めた。
「あらら。これ、マズったかな?」
「……やったなーっ! お返しだぁっ!」
やられた怒りをぶつけるように叫んだ恋は、自分の体からペルソナの腕を引き抜くと、妖気を帯びた幻魔による乱れ斬りをした。
こんなに暴れたら、出血多量か臓器の損傷によって、先に恋が倒れそうなものだが、その心配はない。何故なら彼女の腹は、腕を引き抜いてすぐ再生されたからである。
圧倒的な再生速度と、膨大な妖気の行使。これこそが、妖魔化した恋の真骨頂である。
「Oh,キョウレツー」
「それだけで済むと思わないで」
淡々とした口調でそう発した零だが、その姿は既に地上にはいない。
龍と同じく完全なる龍人化ができる彼女は、全身を青い鱗で覆い、立派な翼を広げた異形の姿に変化して、ペルソナの上空にいたのだ。
月を背に、敵を見下ろす位置についた零は、口内にエネルギーを集めると、某怪獣よろしくな光線を吐いた。
火力としては決して低くない。不意も突いたはずだし、ダメージぐらい与えられるだろう。瞳達はそう思っていたが、
「甘いね。ダークブラスター」
仮面の中でペルソナは不敵な笑みを浮かべると、左手から闇のビームを放ち、真っ向から相殺した。
「嘘でしょ!? あれに対抗できるなんて!」
「これぐらい軽いもんさ」
「だけど、時間稼ぎにはなった。いくよ。ホーリーヘヴンス、チャージ3……いっけーっ!」
ずっと腕をクロスし、光をチャージしていたペガサスは、技名を叫ぶと同時に、勢いよく両手を広げ、天空から光の極太レーザーを放った。
天国の三大奥義の1つにして、チャージ時間によって、段階的に威力と範囲が大きくなっていく特性がある技・ヘヴンス。その中でもチャージ3は、レーザーの形状としては最大の火力と範囲を誇り、体育館やスタジアムに大穴を開けるほどの威力がある。
そのため、周囲の被害を考えるとあまり得策とは言えないが、それだけペガサスもなりふり構っていられないほど本気だということである。
なのに、天の裁きが下されようとしているペルソナの表情は一切崩れない。何故なら――彼にはヘヴンスと対になる技があるからだ。
「ダークヘル、チャージ3。いけ」
瞬時に、ペガサスと同じモーションをとったペルソナは、地の底から闇の極太レーザーを放ち、ホーリーヘヴンスを打ち消す。
地獄の三大奥義・ヘル。ヘヴンスと違い、どれだけ段階を進めてもレーザーの形状を保ったままだが、その分、威力はヘヴンスを上回る。
そんな技を相手が使ってくると思っていなかったペガサスは、必殺の一撃を防がれたこともあり、驚愕する。
「な!?」
「うーん。同じチャージ3なら、ヘルの方が強いはずなんだけどなぁ。記憶を無くしても天国の英雄ってだけはあるか」
思い通りいかなかったことにペルソナは不満そうだが、そんなもの、こちら側の動揺と絶望感に比べたら些細なものである。
「まさか、君がヘルを使えるとはね。意外だったよ」
「そうかな? これもパラレルスリップも僕の中にいるソロモンの悪魔と必要悪の堕天使を利用して、引っ張り出した力だよ」
パラレルスリップや『必要悪』という単語から、ソロモンの悪魔と堕天使の正体について、ペガサスには何となく見当がついたが、この場においてそれらは何の問題にもならない。
重要なのは、そんな大物2人の意思を封じ、力のみを利用しているこの男の底知れない強さと悪意だ。
ちなみに、恋の妖魔化発動の条件は、致命的なダメージを負うことではなく、一定以上の妖気の行使(今回の場合だと、瞳との同時攻撃でやった妖気を収束した剣)することです。




