絶対悪
その隣で、ペガサスはこの謎の男・ペルソナのことを冷静に分析していた。
「なるほどね。君という人物なのか、なんとなく理解できたよ」
「というと?」
「さっきから、話しながら気を探ってたんだけど、君からは純粋な悪意しか感じない。けど、だからといって悪魔や邪神でもない。君は紛れもなく人間だ」
「そうだよ。僕はデミ・ミュータントでもなければミュータントでもない。天使と悪魔を宿してるだけの、ただの人間だよ。あ、でも、叶教授は僕の特殊能力を見て、ミュータントじゃないかって疑ってたみたいだけどね」
ペルソナが翔馬と同じ存在であることもそうだが、まさか未来の父親にも会っていたとは。デミ・ミュータントの由来に通じる新事実に、瞳達は驚きを隠せない。
「だろうね。だからこそ、信じられないんだ。僕は、人間のことを必要悪ではない巨悪だと思ってるけど、全部が全部、悪だと思ってるわけじゃない。人間にも良心があることは、彼らが築き上げてきた一部の文明や思想が証明しているからね。けれど、君は違う。君の悪意からくる邪気は、まるで深淵だ。底が見えない。こうは思いたくなかったけど、君は絶対悪だ」
絶対悪。生粋の外道と言い換えてもいいほど不名誉な称号なのに、ペルソナはそう呼ばれることすらも、誇らしく感じているようだ。
「だったら、どうする?」
「もちろん、君を殺す。その上で、使命を全うする。君みたいなのが未来に現れる可能性があるのなら、その芽を潰しておくことに越したことはないから」
「わーお、過激だねぇ。やっぱ、人類の8割を滅ぼすことになる極悪人は言うことが違うや」
ペガサスが人類の8割を? 想像し得る最悪のシナリオに、瞳達は絶句する。
「僕は僕の信念に基づいて行動する。君にとやかく言われる筋合いはない」
「あっそ。じゃあ、そろそろ始めよっか」
ペルソナはそう言うと、手に光と闇の力を帯びた。
「キララ。悪いけど、柚さんをどこか安全なところに運んでくれないかな。巻き込みたくないんだ」
「ペガサス?」
「今回ばかりは……手加減できそうにないから」
「……わかった」
ペガサスの真剣な目から、本気さが伝わったユニコーンは、黒猫をお姫様抱っこすると、その場から離脱した。
「瞳達は――」
「言っとくけど、除け者はナシだよ」
「そうね。この男だけは放っておくわけにはいかない」
「たとえ、あいつの言う未来がどんなに悲惨で、それがあんたのせいで起こるとしても、私達がここで手を貸さない理由にはならないよ」
そう言う瞳と恋と零は、既に武器や拳を構えている。臨戦態勢はバッチリのようだ。
「ありがとう。頼りにさせてもらう」
ペガサスは感謝の言葉を述べると、光の力を全開にして、ペルソナを見据える。
「麗しい愛だねぇ。感動しちゃうなー」
「微塵も思ってないくせに、よく言うよ。2度と悪さができないよう、君はここで終わらせる」
明確な殺意を込めてそう言ったペガサスは、邪悪な意思に終止符を打つべく、ペルソナに挑んでいった。




