暗躍する存在
一方その頃、激戦を終えた大阪拘置所では、残党の捕縛または殺害といった事後処理が行われる中、屋上から下りてきたペガサスが、瀕死の黒猫の治療を済ませていた。
「ペガサス! 柚は?」
「安心して。幸い、黒縄毒は混入してなかったし、犬飼源士郎の血も排出したから、命に別状はないよ」
「そっか。良かったぁ」
友人が助かったことを知り、瞳は胸を撫で下ろす。
「それじゃあ……」
「うん。みんなの体力が回復次第、アレックス軍曹達に後のことを任せて、僕達も龍君のところに行こうと思ってる」
「あっちも人手が足りないかも知れないからね。そうした方がいいかも」
ペガサスの考えに、恋は全面的に同意する。そこに関しては、誰も異論を唱えないだろう。ただ――
「そう、だね……」
予定を口にした当の本人であるペガサスの歯切れがどういうわけか悪かった。
「どうしたの?」
「いや、ずっと引っ掛かってることがあってね」
「もしかして、敷島博士のこと?」
ユニコーンの問いにペガサスは一部肯定するが、厳密に言うと少し違う。
これまでペガサスは、ブラック・ナイトや聖民党に協力してきた京介が、圧倒的な科学力を有していると思っていた。
しかし、京介の専門分野はデミ・ミュータントを始めとする遺伝子工学。
チキンな性格故、保険として、他の分野も学んでいる可能性はあるが、それでも、死者を蘇生させるカプセルや、レーザー兵器やナパームボール等といった兵器を作り出せるほど秀でているとは、到底思えない。
「て、ことは……」
「そう。彼にその技術を提供した人物がいるはず。そして、その人物こそが真の元凶だと、僕は睨んでいる」
京介の裏に更なる黒幕がいる。ペガサスが辿り着いた推理に、その場にいた瞳と零と恋とユニコーンはゾッとする。
その時だった。どこからともなく拍手の音が聞こえてきた。
音がした方向を振り向くと、そこには、どこかのアニメで出てきそうな装飾が施された黒い仮面を被った黒ずくめの人物が立っていた。
「ピンポンピンポンピンポーン。だーいせいかーい。流石に賢いね、天使ペガサス」
声と背格好からして、10代後半の少年といったところか。男は威圧的な格好とは裏腹に、おちゃらけた口調で称賛した。
「そう言うってことは、君がその元凶か」
「如何にも! あ、自己紹介がまだだったね。僕はペルソナ。以後お見知りおきを」
本名なわけがないほど明らかなコードネーム。正体を明かす気の無い相手の登場に、短気な瞳はカチンとくる。
「あいつ――!」
「待った。瞳、今は堪えて」
詳しい動機を聞きたいペガサスは、今にも殴りかかりそうな瞳を制止する。
「君、ひょっとして、未来人?」
「おっ、そこもわかっちゃうかー。まぁあんな高度な技術を提供してたら、そりゃわかるよねー。と言っても、この時代からたった55年後から来たんだけど。あ、ちなみに言っておくと、○こでもドアはまだ無いよ」
55年であの科学力。文明の発達ぶりにも驚きだが、1番気になるところはそこではない。
「その君がどうしてこの時代に? 何のために彼に未来の技術を?」
「うーん、そうだなー……一言で言うと、楽しいから」
「ふざけるな」
「ふざけてないよー。だって僕にとっては、破壊や殺戮、そういった人の不幸こそが最高の快楽だからね。それらを生み出すには、あいつをサポートして欲望を加速させた方が、何かと都合が良かったんだ」
どこまでも利己的な発言。会ってまだ数分も経っていないが、同情も共感もできない存在に、零達は嫌悪感を露にする。




