女難の相は永遠に
真理とも言える鳳凰の言葉に、黄泉は俯く。
「……妾にどうしろと言うのだ? 妾から破壊と殺戮をとったら、何も残らんぞ?」
「そうやって諦めてる内は、ガキだっつーんだよ。無いんなら探しゃいい。そうしてりゃ、いつかはみつかる。それでもわかんねぇっつーんなら、まずは俺達を頼れ。支配とか虐殺みたいなくっだんねぇこと以外なら、いくらでも力になっからよ。だいたい、らしくねぇんだよ。諦めの悪ぃお前が諦めるなんて」
白虎からの言葉を聞いて、吹っ切れたようだ。黄泉の口角が上がる。
「……それもそうだな。お前の言う通りかもしれん」
「だろ?」
「ならば、そこの女の言葉に従い、妾のありのままの気持ちとやらをさらけ出してやる。1度しか言わん。耳の穴をかっぽじってよーく聞け」
もったいつけたような言い方に、白虎は疑問を持ちつつも、一応了解する。
「妾としても、『何故お前などを?』とは思ったが、やはり自分の心には嘘がつけんようだ」
「な、何が言いてぇんだよ」
「つまり、だ。骸として操られるほど、間抜けで無能でどうしようもない俗物であるお前に、妾はホレてしまったのだ」
唐突な愛の告白。さらけ出せとは言ったが、予想の斜め上すぎるカミングアウトに、白虎は少しの間、沈黙した後、
「……はーっ!?」
と、分かりやすく戸惑う。
「え!? いつ!?」
「英理村で初めて見た時からだ。言ったであろう? 『妾好みのいい男』だと」
これ以上ないほどの一目惚れ。白虎としては俄には信じ難かったが、更正という点だけでいえば、ロケットスタートもの。鳳凰は素直に祝福する。
「でも、素敵です。恋に生きる方が殺人と破壊に生きるより、ずっと」
「そ、そうか? して、返答のほどは?」
頬を赤らめ、モジモジとしながら返答を待つ。そんな思春期丸出しな黄泉の姿に、白虎はギャップを感じ、キュンとする。
「ま、まぁ、そういうことなら、英理村でのことは水に流してやるよ。その、これからはよろしくな」
照れくさそうにする白虎からの返答をOKと捉えた黄泉は、嬉しそうな笑みを浮かべる。そこには打算や悪意など微塵もない。無垢な少女のようなあどけなさがあった。
こんな一面を知れたのもまた、1つの収穫。その嬉しさと気恥ずかしさから、白虎も微笑する。
戦場だった空間は幸せな空気で満たされ、敵対していた2人が和解を経て、愛し合う。
このまま終わればハッピーエンド。だったのが、ここでまた鳳凰が水を差す。
「あ、でも、いいんですか? 大牙さん」
「へ? 何がっすか?」
「透美さんがいるのに、告白を受けてしまって」
「……あ」
鳳凰に言われるまで、すっかり忘れていたようだ。今後の展開が見えてしまった白虎の顔から、サーッと血の気が引いていく。
「透美? 誰だ? それは」
「大牙さんの恋人です。黄泉さんと会う前から親しい女性で――」
「あーっ! ちょっと王賀先ぱ――!」
余計なことをベラベラと喋る鳳凰にストップをかけるが、もう遅い。黄泉の眉間に皺が寄り、目つきが一層険しくなる。
「大牙よ。それは真か?」
「お、おう……」
「にもかかわらず、お前はそのことを明かすことなく行為に及び、あろうことか妾を孕ませた、と?」
そういえば、そんなこともあったなと白虎は思いかけたが、必死に首を横に振る。
「いや! あん時は敵同士だったし、だいいち、あれは完全に逆レ――!」
「問答無用! この、ナンパ男めがぁっ!」
怒りを爆発させた黄泉は、念動力で白虎の脳を掴むと、地獄のような苦痛を与えた。
この上、緋蘭とのことが知られたらどうなることやら。そう考えるだけで前途多難。白虎の女難の相は永遠に消えない宿命にあるようだ――――




