光
「‥‥‥わたし?」
訳がわからず、半笑いで首を傾げる。
わたしがなんの役にも立てなかったから、無能いじりでもされてるんだろうか。
いやいや、アンリーヌはそんなつまんないことタイプじゃない。
何より、アンリーヌの言葉に誰も突っ込まず、皆んな「うんうん」と頷いている。
「えっと、わたし、戦いもせず魔獣にやられて、誰よりも早く戦闘不能になって、目が覚めた時にはベッドの上で傷も治って戦いも終わってたんだよね‥‥‥。だから、誰かを助けたり、毒を浄化?したりしてないし、瀕死でできる状態でもなかったから、多分人違いなんじゃ‥‥‥あ、サックの魔術具で浄化したとか!」
改めて口に出して記憶を辿ると、本当にわたし何もしてなさすぎて、今こうして肉をいただいているのも申し訳ないくらいだ。
わたしは新たな肉に伸ばそうとしていた手を静かに引っ込めた。
「僕の魔術具じゃ毒は浄化できないよ」
「あ、そうなんだ‥‥‥じゃあ、アン姉の魔術とか」
「私は回復魔法は使えるけれど、浄化はできないわ。冒険者登録をするために、ギルドで2人の魔力属性を検査した時に、属性の話はしたわよね?」
「うん、軽く‥‥‥アンお姉ちゃんは炎の属性が強いから、赤い髪なんだよね。で、炎の魔術が得意、っていう認識なんだけど、合ってる?」
わたしが皆んなを助けたという話についていけていないのがわたしだけなようで、全員黙ってアンリーヌの話に頷いていて、ヨナはあくびをしている。
ていうかなんで属性の話になったんだ、誰が浄化をしたのかって話じゃなかったっけ。
ああもうダメだ、多分わたしの理解力がないんだ。
「うーんそうね、得意って認識だと少し違うかしら。炎の魔力は、そもそも炎の属性を持つ人にしか使えないの。他の属性も同様ね。だから、「私は炎の属性だから水の魔術は苦手」なんてことはなくて、そもそも水魔術を使用するどころか練習することすらできないのよね。得意不得意の話じゃなくて、自分の属性の魔術を勉強して極めるしかないから、必然的に炎魔法が上手になってくのよ」
「なるほど」
「それでここからが本題なんだよな?!アンリーヌ!」
酔ってきたゴルドが、鼻を鳴らしながらアンリーヌに顔を近づけた。
サックやヨナも少し前のめりになっている。
律は‥‥‥キョトンとしている。
本題についてはわかっていないらしい。
よかった、わかってないのがわたしだけじゃなくて。
「浄化の魔法を使える属性はたった1つ、光属性だけなの」
「ほんっとやばいよね、咲久ちゃんが光属性だったってことでしょ?」
「魔力検査で測定できなくてエラーになってたやつ、光属性がエラーになってたってことだったんだな」
え、待って待って、何がやばいの?
その、光属性ってのが、エラーを起こしちゃうくらいやばい属性なの?
確か魔力検査の時、わたしの検査結果に出てた表示は‥‥‥。
【50:回復 949:測定不可 エラー発生】
‥‥‥949光ってこと?!
「その光属性?だったら、何かまずいの?何がやばいの?」
わたしが怖くてきくに聞けなかったことを、律がさらっと聞いてしまった。
聞かないでほしかった、エラーが出るようななんかやばい属性なんだとしたら知りたくない。
わたしもヨナみたいに水とかが良かった。
「まずいというか、今この国に、光属性の人は咲久ちゃんを除いて1人もいないはずよ。その属性だって、私たちからしたら都市伝説だったもの。本来その属性を持つ者と庶民が関わることなんて絶対にないですもの」
でた、都市伝説。
例によって律が目を輝かせている。
「各国にたった1人、不定期で現れる光属性の少女」
サックが、都市伝説っぽい文章で、少し声を低くして話し出した。
「唯一浄化の魔法を使える少女は、聖女と呼ばれ崇められる。その一方で、その少女が現れたということは、その国に災いが起こるという知らせでもある。そしてその災いは、聖女の浄化の力無くして乗り越えられない」
お読みくださりありがとううございます!
新しい情報や説明多めでしたが、次もそうなってしまいそうです。
クリーム色のボブの、小柄な聖女は作者の好みです。
改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントをくださっている方々、本当にありがとうございます!!




