人間関係
「へ‥‥‥?わたし?」
「もともと崩壊寸前だったバド部の人間関係が、咲久がいなくなったことで一気に崩れて、もう大変だったんだからね」
わたしがいなくなったせいでバド部の人間関係が壊れた?
いやいや、わたしはバド部の中で特に目立ってなかったし、中心人物というわけでもなかった。
そもそもバド部は陽キャが多すぎて、そうじゃないわたしは若干浮いていたし、特別仲の良い人と言ったら律ぐらいしかいなくて、そのほかのメンバーとは満遍なく話す、くらいだったはずだ。
だから、わたしにそんな影響力があるはずがない。
「えーっとごめん、ちょっとわかんないんだけど。そもそも崩壊寸前だったってとこから初耳なんだけど」
「やっぱり咲久は気づいてなかったのか。バド部の中で、結構仲間割れしてたんだよ」
ー全く知らなかった。
大人数にしては珍しく、みんな仲の良い部活だなあとか思ってたのに。
自分の鈍感さに呆れる。
「えと‥‥‥ちなみに、何がきっかけで仲間割れが起こったんでしょうか」
「これといったきっかけはないかな。まあ分かりやすく言うと、AちゃんがBとCにDの悪口を言って、CがDにそのことを話す。Aがあんたの悪口言ってたよーって。するとDもAのことを嫌うようになる。一度そういうことが起きたらあとは火がつくのは一瞬だよ。その勢いのまま、Eもそういうとこあるよね、私はFが嫌い。それでゆうとこの間のGの行動どう思う?みたいなふうに、どんどん至る所で悪口大会が開催されていってたな」
‥‥‥何それ怖い。
本当になんで全く気が付かなかったんだわたしは。
わたしもどこかで悪口を言われてたかもしれないということか。
「まあ、弱小高の女子バド部なんて、青春したいだけで入ったやけにプライドの高い陽キャの集まりだし、仲間割れしないほうがおかしいよ」
「そ、そういうものなのか」
「表面上は取り繕ってたけど、誰が誰の愚痴を言っているのか、この子も陰では自分のことを悪く言ってるんじゃないかって、みんなそれぞれ疑いあってあから超絶ギスギスだったよ」
「うわあ‥‥‥」
バド部のメンバーも怖いけど、そんな空間にいて何も気が付かなかった自分自身が一番怖い。
「いやでも、わたしの退部がバド部の人間関係崩壊の原因になったってのはやっぱり理解できないんだけど」
律は、「うーん、なんて言えば良いのか」と頭をかく。
「咲久みたいな気取らない存在が、あのメンバーの中では結構大きかったんだよ。皆んなと平等に仲が良くて、小さいことでも褒めてくれたり、言い合いが起こったらサラッと止めに入ってくれる人」
ー誰だ?そいつは。
そんなことしていただろうか。
確かに相手を褒めることは多いしもみんなと平等に仲よくしてたけど、それはただ自分が嫌われるのが怖いからって理由でそうしてただけだ。
だってあんな陽キャ達を敵に回したら碌なことがなさそうだったし‥‥‥。
「咲久は人見知り兼気遣い魔だからね。息をするように場の空気をなだめてたんだよ」
「魔はやめてよ、魔は。褒められてんのか貶されてんのかわかんないんだけど」
「褒めてる褒めてる」
‥‥‥こいつ絶対褒めてない。
「でも私は皆んなの前での咲久よりも、私の前での、ちょっと生意気で、怒ったり拗ねたりコロコロ表情が変わる咲久の方が好きだけど。こっちのがかわいい」
「ーっ!!」
また律はそうやって、好きとかかわいいとかさらっというんだから、本当にやめてほしい。
顔が熱い。
辺りが暗くて良かった。
「咲久って、他の皆んなには笑顔振りまくだけで、誰かに促されたりしない限り意志の主張もできないしょうがないやつだからなあ」
「言い過ぎだろ!極度のコミュ障なんだよほっとけ!」
「そんなことないし」と否定したいのに、図星すぎてそれができないのが悔しすぎる。
「あ、そーいえば咲久はなんで部活やめたんだっけ?」
「えっ、あ、えー‥‥‥っと」
ついに聞かれてしまった。
どうしよう、律を避けるために、律との接点をなくそうと思ってやめた、なんて言えるはずがない。
「お、お金が欲しくて。部活とバイトの掛け持ちは流石にきつくて」
「咲久別にお金に困ってなかったよね」
「なっ何言ってんの、わたしはアニヲタだよ?!グッズはもちろん漫画も集めてたし、オタクは常に金欠なんです!」
アニオタで金欠なのは、部活を辞めた理由とは関係ないけど嘘ではない。
なかなか上手に誤魔化せた気がする。
笑顔、ひきつっていませんように。
「ふーん」
律が納得していなさそうに鼻を鳴らした。
‥‥‥絶対誤魔化せてないなこれ。
「よし、わたしはそろそろ寝る!明日は日の出と同時に出発するから、律もさっさと寝なよっ!」
これ以上探りを入れてこられたら確実にボロが出る。
わたしは話を無理矢理ぶち切ると、寝転がって律に背を向け、「おやすみ!」と吐き捨てたのだった。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
弱小高の女子バドミントン部に対する情報は、あくまで律による偏見ということにしといて下さい。そうです‥‥‥きっと平和な弱小女バド部だってあるはずなんです、、たまたま作者のところがアレだっただけで、、。
あくまで律による偏見ということにしといて下さい(しつこい)
次話は律の語りで、咲久に対する律の気持ちを明かします。
改めて、不定期でマイペースな更新な中ここまで読んでくれている方々本当にありがとうございます。ブックマークしてくれた方が10人になって、周りと比べたり他の人から見たら大した数字ではないのかもしれませんが作者は大喜びしておりますっ!
この先も宜しければお付き合い頂けたら嬉しいです。