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混乱

 ユユの母親の傷をあっという間に完治させたアンリーヌは、すぐに集落中を回って、怪我をしている他の住民たちも治していった。

 その間、ゴルドにサック、ヨナは、魔術を使って瓦礫を片付けたり、壊された家の修復作業をしている。

 律も、持ち前のコミュニケーション能力で集落になじみ、その怪力で瓦礫の撤去を手伝っている。

 まずい、わたしも何かしないと‥‥‥


「ふんっぬう‥‥‥くっ‥‥‥」

「ー‥‥‥咲久、何してんの」

「みて、わかる‥‥‥でしょっ、瓦礫、どけてるのっ」

「‥‥‥全然動いてないけど」

「うるさい!わたしには怪力も魔術も使えないんだから仕方ないだろ!」

「わかったわかった。咲久は向こうで見てて」


 わたしが体全体を使って持ち上げようとしてもピクリとも動かなかった瓦礫を、律は指2本でひょいと持ち上げて、わたしに「危ないからあっちに行け」と首の動きで促す。

 

「すごいね律お姉ちゃん、力持ち!」

「とっても強いパーティーなんでしょ?父さんが言ってた!」

「かっこいいー!」


 ジェラシー‥‥‥。

 なんだよ、ちょっと力があるからって子供達に囲まれちゃって。

 満更でもなさそうな顔しちゃって。

 あーもう、いつ覚醒するの、わたしの潜在能力!


「咲久、そこに瓦礫置くから、危ないから向こう行っといて」

「はいはいわかってるよ。どーせわたしなんて、なんの役にも立てないんだからゴミ拾いでもしとけってことだろ!瓦礫と間違えて捨てそうだから離れてろってことだろ」

「はい?そんなこと一言も言ってないけど」

「知ってるし!ちょっとヒスりたくなっただけだし!もうゴミ拾ってくるから!」

「あ、ちょっと咲久、待っ‥‥‥うお、ちびっこ‥‥‥!」


 わたしの後を追いかけよううとした律の周りを、「もっかい力持ち見せて〜!」と子供達が囲み、前に進めない律をおいてわたしはゴミ拾いに行く。

 さっきのユユの母親に何もできなかった失敗の恥ずかしさと、自分だけなんの役にも立てていない今の状況がキツすぎて、律のことわざと困らせてやつ当たりしてしまった。

 子供か、わたしは‥‥‥。

 律、わたしが急にキレて意味わかんなくて混乱してるだろうな。

 お願いだから、ヒス構文のギャグだと思っていてくれ‥‥‥。

 そんなことを思いながら、1人寂しくその辺のゴミを拾い集めてまわる。

 集落が大体片付いたら、ついに魔獣の討伐か‥‥‥怖いな。

 まあわたしはどうせ何もできないから、皆んなに守られて下がってみてるだけになりそうだけど。

 うあー、もうやだやだやだやー

 

「お姉ちゃん、なにしてるの?」

「ひゃ?!はい!」

「あっはは、なにその声ー!」

「なんだユユちゃんか。びっくりした、どうしたの?」

「んー?なんか、ひとりでゴミひろう背中がせつなかったから来た!ユユもいっしょにひろう!」


 わあすっごい、子供にまで同情されてるわたし。

 流石に泣きそう。

 またヒスりたい。


「えへへ、うそだよ。ほんとうのりゆうがあるの」

「本当の理由?」

「うん、あのね、ありがとう、サクお姉ちゃん。それをつたえたくてきたの」


 純粋無垢な満面の笑顔で唐突に感謝を伝えられて、何が何だか分からない。

 感謝されるようなこと、わたしはしてないけど‥‥‥。


「えっと‥‥‥あ、ユユちゃんのお母さんを助けたのは、わたしじゃなくて、アン姉ちゃんだよ」

「しってるよ〜!でも、さいしょユユのすがた見えたとき、いちばんさいしょに近くにきてくれたのサクお姉ちゃん。母さんのこと、さいしょに助けようとしてくれたのもサクお姉ちゃん。だから、ユユのせいぎのみかたは、サクおねえちゃんなの!いろんはみとめない!」

「ぷっ、あははっ、異論は認めないって、難しい言葉使えるんだね。もうほんと、ありがとうユユちゃん!メンタル復活したよ〜大好き!」


 わたしがユユに抱きつくと、「きゃはは、暑い〜!」とユユが笑いながら暴れる。


「よーしそれじゃあ、引き続き2人でゴミ拾いー」


ードンッ、ドンッ、ドンッ‥‥‥。


「な、なに?!」


 わたしの言葉を遮って、地鳴りのような音が響いた。

 徐々に音が近づいてくる。


「ユユ知ってる。これ、まじゅうのあしおと」

「え?!やばいやばいやばい!逃げ‥‥‥あっ」


 足音の方へ視線を移すと、ばっちり、魔獣と目が合った。

 その瞬間、魔獣が私たちの方へスピードを上げて向かってきた。

 どうしようどうしよう、アンリーヌたち呼んでこないとだけど、皆んな集落の中にいて、魔獣はわたしにロックオンしてるから、もしわたしが集落の中に呼びに行ったら魔獣がわたしを追いかけて集落に突っ込んでいくだろう。

 そした折角修復した家も壊れちゃうし、何より住人が危ない。

 あああもう!!なんでこんな変なところまでゴミ拾いに来ちゃったんだ!!


「ユユちゃん、ここはわたしが何とか食い止めとくから、集落に戻ってパーティーメンバー呼んでこれる?!」



 


  



お読みくださりありがとうございます。

咲久は相当面倒くさい子です。

改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントをくださっている方々、本当にありがとうございます!!

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― 新着の感想 ―
今回も楽しかったです 咲久ちゃんのきもちよくわかるよー わたしもなんかしなきゃってなるし、チカラになれないことがいたたまれないなんか不思議な感情になると思う さて魔獣に対峙した咲久ちゃんはどうなるかな…
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