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無能

 アンリーヌに許可をもらい、わたしはユユの母親が眠っている横に膝をついた。

 そして、彼女が怪我をしているところに手をかざし‥‥‥ん?

 ちょっと待って、めちゃくちゃ勢いで助けるとか言ったけど、そもそも魔術ってどうやって発動させるんだろう。

 なんとなくイメージでてかざしてみたけど、当然何も起きない。

 あれか、なんか念じたりするのか‥‥‥それとも、「ヒール!」とか叫ぶのか‥‥‥いやいや流石にそんな簡単じゃないか、もっと複雑な発動術式的なの唱えるんだろうか。

 やると言った手前、挑戦する前からどうやるんですかなんて聞けないので、とりあえず思い当たった方法を試してみるが、何も変化が起きない。

 ただ横たわってる人に手をかざしているだけの人になってしまった。

 やばい、恥ずかしい、消えたい、穴があったら入りたい。

 わたしは真っ赤な顔を上げて、消え入りそうな声で言った。


「すみません、できなそうです‥‥‥」

「ええ、おねえちゃんできないの?じゃあいま、なにしてたの?」

「うっ‥‥‥ほんと何してたんだろうね‥‥‥ごめんねユユちゃん」


 子供の率直な疑問に、心をグサっと刺される。

 魔力検査で潜在能力があるみたいなことを言われたから、なんかいけそうな気がしたんだよ‥‥‥。

 でも現実はそんなに甘くなかった。 


「うふふふ、流石に無理があったわねえ。ごめんなさい咲久ちゃん、手助けもしないで。もしかしたら本当に、教えてもないのにすごい魔術で治しちゃうんじゃないかって、魔力検査で異例の結果が出た咲久ちゃんなら有り得るかもって、私ったら観察しちゃってたわ」

「まあ確かに、あんな自信ありげにスタスタ歩いて行ったら、何か策があるのかなって思うよね。何もわからないのになんで出て行ったの咲久」

「い、いやなんか‥‥‥大怪我して倒れてるユユちゃんのお母さんをみたその瞬間、なぜか助けられる気がしてきちゃって‥‥‥力がみなぎる〜みたいな感覚が‥‥‥でもいざやろうとすると、その感覚がふっと消えたというか‥‥‥」


 自分でもよくわからないけど、確かに助けられるっていう確信を、あの瞬間感じた。

 ー‥‥‥いや、潜在能力があるとか言われて調子に乗っていただけか。

 ちょっともう、大人しくしていよう。


「もしかしたら、潜在能力が発動しかけたのかもしれないわね。また何かのきっかけで覚醒するかもしれないわ。良い傾向よ咲久ちゃん」

「そうだぞ咲久!助けようと動いたことが何より良い!俺はそう言う時にすぐ動ける奴が大好きだ!」

「うっわ、こんなガタイの良いおっさんに大好きなんて言われても鳥肌立つだけだよゴルド」

「なんだとサックてめえ!」


 サックとゴルドのいつもの喧嘩が始まったが、アンリーヌがそれを完全に無視して、不安そうなユユの頭を優しく撫でてこちらへきて、わたしの隣に同じように膝をついて座った。


「今回はわたしがやって見せるわね。とは言っても、魔術って感覚で発動するものだから、一度見たくらいで簡単に使えるようになるものじゃないのよ。何度も何度も経験を積んで、感覚を掴むの」

「は、はい!!」

「そうねえ‥‥‥体全体の力を抜いて、血液の流れを感じて、その血液を手のひらに集めるイメージよ。足先を巡る血が、指先まで移動しちゃうくらいの感覚で、手のひらに魔力を流すの」

「は、はい‥‥‥?」


 わかったような、わからないような‥‥‥いや、わからないかも‥‥‥。

 決まった術式を唱えるだけ、とかならよかったのに。

 しばらくアンリーヌが手をかざしていると、傷口が金色に光り始めた。

 徐々に、傷が塞がっていく。

 完全に塞がったところでアンリーヌは「ふう」と息をついて、軽く汗を拭きながら言った。


「こんな感じよ。できそうかしら?」

「あ‥‥‥ど、どうだろ‥‥‥へへへ‥‥‥」


 アンリーヌに聞かれて、苦笑いを浮かべる。

 全然どうやったのかわからなかった。

 それに、わたしには回復の魔術しかなくて、一応このパーティーで回復要因なのに、アンリーヌが回復もこんなに完璧にできるのなら、戦えないわたしはいよいよただの役立たずの足手纏いなんじゃ‥‥‥。


「咲久ちゃん、大丈夫?難しかったかしら」

「あっ、だ、大丈夫!」


 いちいちもやもや落ち込んでちゃだめだ。

 とにかく早く感覚を掴んで、使い物になるところから始めるんだ。

 わたしはこっそりと拳を握りしめた。

 

お読みくださりありがとうございます!!

咲久の脳内が騒がしめの回でした。

改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントを下さっている方々、本当にありがとうございます!!

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