パーティー名
「わ、わたし達が?!」
あまりの無茶振りに、飲んでいたジュースを吹き出しそうになった。
わたしは慌てて首を全力で横に振る。
「いやいや無理!っていうか名前なんて今後ずーっと使っていく、パーティーを象徴するめっちゃ重要なものだよね?!それをぽっと出のわたしと律がつけるなんて‥‥‥」
なんだかすごく時間が経っているように感じるけど、わたしも律も、このパーティーのみんなに会ったのは2日前だ。
つまり3日前までは、アンリーヌたち4人のパーティーで、しかも一緒に過ごしていてわかるこの仲の良さや、周りの反応からわかる知名度から察するに、かなり長いこと4人で活動してきたのだろう。
確かに今日、わたしと律はこのパーティーに正式に加入したけど、このパーティーはアンリーヌたちが作って育て上げたものだ。
それなのににわたしと律で名前をつけるなんて恐れ多い‥‥‥っていうか絶対おかしい。
ー‥‥‥あとシンプルにネーミングセンスがないので、そんな無茶振りやめてほしい。
「いいのよ、そんなに難しく考えないで。それにいつ加入したかなんて関係ないわ。もうあなたたち2人は紛れもなくこのパーティーの仲間で、みんな対等。先輩後輩なんて概念、うちのパーティーにはないんだから」
「アンリーヌ、良いこと言うな!その通りだぜ!」
ゴルドに続いて、アンリーヌの言葉にサックとヨナも頷く。
‥‥‥いや、嬉しい、嬉しいけど、これってやっぱりわたしと律が名前考える流れになってるよね。
「律、律どうする?!」
「いやー‥‥‥私はパスだね。咲久に任せる。さてと、私は便所にー」
「ちょっ、何言ってんだよパスとかなしに決まってるだろ!」
ナチュラルに逃げようとする律の腕をつかむ。
こんな責任重大なこと、押し付けられてたまるか!
「あー、わかった。じゃあじゃんけんで負けた方が考えるってことでどう?」
「‥‥‥わかった、恨みっこなしだよ」
「よし、決まりだね。じゃあ、じゃんけんー」
『ぽんっ』
‥‥‥負けた‥‥‥。
「ええっと、3回勝負だっけ?」
「1回だね」
「あら、咲久ちゃんが決めることになったのね!」
「い、いや、でも‥‥‥」
やばい、完全にわたしが決める流れになってしまった。
もう仕方ない、諦めて受け入れて、ひと月くらいかけてのんびり考えれば‥‥‥。
「そうと決まれば話が早いね!僕が新しい魔術具を開発した時に名前をつけていく上で学んだことなんだけどさ、時間をかけて考えるよりも、直感と思いつきが大事なんだよ。だから咲久ちゃん、今から1分以内に名前考えてみてよ」
「い、1分?!」
「うははははっ!サックって割とS気質だよな!でも面白え!」
「もう2人とも、咲久ちゃん困らせたら律ちゃんに殺されるわよ‥‥‥って、あら。律ちゃんも面白がってるみたいね」
「いいじゃん、サックの案。今日は咲久に物申したいことたくさんあったし、ちょっとぐらい困らせてもいいよ」
クソ律!このひとでなし!
そもそもなんでわたしのこと困らせていいか決めるのが律なんだよ!わたしだろ!
サックが、「ほらほら、あと40秒だよ〜」と言って急かしてくる。
S気質どころじゃない、こいつは酔ったら完全にドSになるタイプだ。
どうしよう、とにかく早く考えないと。
そうだあれだ、学校でグループワークの時に班の名前決めるみたいに、メンバーの特徴とか理想とかイニシャル‥‥‥は流石にダサいか?
わたしたちに関連してて、このパーティーを象徴する名前‥‥‥。
「タイムアップだよ、咲久ちゃん!はい、発表お願いしまーす!」
酔ったサックの結構なウザさに苛立つ心を沈ませながら、みんなに注目される中、1分脳みそフル回転で絞り出した名前を言う。
「かたわれの永遠」
一瞬しん、となったあと、アンリーヌが繰り返す。
「かたわれのとわ?なんだかロマンチックな響きね。新鮮だわ」
いや、そうだよね。
パーティー名っぽくないよね。
うわあああー、もうだめだ、恥ずかしい。
いやわたしも、永遠をとわ、ってよますのとかちょっときもいかなとか思ったし、でもえいえんって読ませたら語呂悪いし、いや違うな、そもそも「永遠」っていう単語を入れようとした時点でダサいのか?
ああもうわからなくなってきた、全部変な気がしてきた。
「どんな意味が込められてるの?」
真っ赤になって俯いていたわたしの頭に、律がぽんっと手を置いて聞いてきた。
再びみんながわたしに注目する。
「えっと、かたわれは、かたわれ時からきてて、皆んなの髪の毛の色‥‥‥黒や青や赤とかわたしの黄色っぽいのとか、全部グラデーションしたらかたわれ時の空の色みたいだなって。あと、かたわれ時って別次元とか、別世界の物が出会いやすいっていう言い伝えがあって、別の世界から来たわたしと律、この世界の4人の出会いが、ちょっとリンクしてるかなあ、なんて‥‥‥。たそがれでも良かったんだけど、夕方のたそがれより明け方を意味するかたわれの方が、これから色々始まりそうな感じがしたから。永遠は、その‥‥‥ずっと6人が続けばいいなあと‥‥‥思った、から」
早口で説明したあと、わたしはまた俯いた。
なんだこれ、本当に恥ずかしい。
お願いだから、誰か何か言ってくれ。
お読みくださりありがとうございます。
めちゃめちゃ考えました、パーティー名、、、。ネーミングセンスが悪くても、作者のネーミングセンスが悪いんじゃないです。咲久のネーミングセンスが悪いってことにしてください。
改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントをくださっている方々、本当にありがとうございます!




