表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/97

異常な結果

 エレサが触れると、例によってスクリーンのように白い壁に結果が映し出された。

 もう自分の潜在能力に期待するだけ無駄だということは今までの生活でよくわかっている。

 確か、庶民の平均が300らしいから、私もそのくらいかそれよりちょっと低いかぐらいだろう。

 

「‥‥‥えっ」

「ん?」

「何よ、これ」


 そこには、赤くエラーの文字が映し出されていた。

 そして、「50」の数字。

 ‥‥‥50?!

 え、すっくな。

 いや、確かに自分に期待なんてしないとは言ったけど、流石に少なすぎだろ!

 誰も何も言わずに、映し出された結果を釘付けになって見ている。

 絶対みんな今わたしになんて言って慰めたら良いかとか、なんて言ってフォローしてあげるべきかとか考えてる沈黙だこれ。

 気まずい、恥ずかしい、なんか申し訳ない。


「あ、あのえっと‥‥‥このエラーっていうのは、数値が低すぎて起こっちゃったエラーなんですかね。ですよね、あはは」


 気まずい沈黙に耐えられなくなりエレサに自虐紛れに言って笑って見たものの、こんなのさらに空気が悪くなるだけで逆効果だ。

 なんで言ったんだわたし。


「‥‥‥違うわ。測定できる数値が50しかなかっただけよ」

「ー?」


 つまり、測定できていないだけで、きっとあなたにも秘めたる力があるはずよ、ってことか。

 彼女なりに慰めてくれてるんだ。

 ついにはエレサにまで気使われてる‥‥‥ってか意外に良い人だなエレサさん。


「あの‥‥‥こんな低い数値でも冒険者登録ってさせてもらえるんですか?最低いくつ以上、みたいな基準があったりってー」

「だから、あなた、低くないって言ってるのよ。むしろ私は、律とかいうあの子よりもあなたの方が興味深いわ」

「あっははは、あの、もう大丈夫なんでわたしは!そんなフォローしていただかなくても、結構気にしてないっていうか、まあこんなオチだろうなーとは思ってたので」


 やめてくれ、これ以上は虚しくなってくる。

 いっそのこと、「お前まじかよ!!」って笑ってくれた方がありがたい。


「違うよ咲久、よく見て」

「ねえもう、律までやめてよほんとに‥‥‥」

「咲久ちゃん、私たちが驚いているのは数値の低さじゃないわ」

「アンお姉ちゃんまで‥‥‥」

「咲久、でっかく表示されてる真ん中の数値以外の項目見てないでしょ」

「左下の、所属魔力の属性と割合って項目見てみろ咲久ちゃん!」


 確かに大きく写されていた数値しか見ていなかった。

 興奮気味のみんなをよそにスクリーンから目を逸らしていたわたしは、言われるがまま左下に目をやる。


【50:回復 949:測定不可 エラー発生】


 なんだこれ、測定不可、エラー?


「測定不可っていうのは、わたしの魔力が回復属性?の50以外ないから、こうなってるんですよね」

「違うわ。それなら回復の50以外ここには記載されない」

「じゃあこの949は‥‥‥?」

「まだ水晶に登録されていない、この世界で確認されていない未知の属性の魔力を、949持っていると考えるしかないわね」


 ‥‥‥つまり、潜在能力があったってこと?!

 やばい、ちょっと結構かなり喜んでしまう。

 にやけるな、わたしの顔面。


「っていうか、50+949で999じゃん。結局2人とも999だったってわけだ!」

「やべえなこりゃ。これぞ都市伝説の転生者か!」

「‥‥‥ちょっと、きも、こわ」


サックとゴルドは興奮を隠しきれておらず、ヨナは多分引いている。

ヨナからの「きも、こわ」は正直結構きた……こう、心にグサッと。

けど文頭に「ちょっと」を置いて無理やりオブラートに包もうとしてるけど、結局包めてない辺りヨナらしくて憎めない。


「こほんっ」


わざとらしい咳払いがきこえ見てみると、エレサがこれまたわざとらしい笑みを浮かべていた。


「未知の属性がなんなのか、気になるところではあるけれど、ひとまずよかったじゃない。これで2人の進路問題は解決ね」

「え…?」


いったい何がどう解決したんだ……?

意味が分からないという顔でキョトンとしていると、アンリーヌが前にでてきた。

アンリーヌも笑顔だけど、目が笑っていない。


「あら、2人のことを貴族街に送らないでいてくれる気になったのかしら?」

「まさか。2人はいっしょにいたいんでしょう?さっきまでは律って子だけだったけど、この結果なら、咲久って子も、2人揃って貴族に引き取られるわ。それでいいじゃない、離れ離れにならないんだから」

「私たちと2人は離れることになるわ。私たちは、6人でパーティーになろうって決めたのよ」

「……別に、もういいじゃない?出会う前に戻るだけじゃないの。2人は生活が変わるかもしれないけれど、あなたたち4人は元の生活に戻るだけよ。それでいいじゃない」


緊迫した空気が流れる。

エレサもアンリーヌも落ち着いた様子で話しているけど、とんでもない気迫を感じる。


「長くなりそうだし、場所を移動しましょうか。さっきの客間に戻っておいて?私はここの片付けが終わったらすぐに行くから」

「……わかったわ」


こうして、わたしたちは魔力検査の部屋を後にした。







 

  

 

 



お読み下さりありがとうございます。

ようやく咲久の魔力検査が完了しました!

改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントをして下さっている方々、本当にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
そうきましたか 咲久ちゃんの能力もすごいとはおもったけど律ちゃんの能力と反対側(クロとシロみたいな)かなと思ってました これからどうなるかな なんとか乗り切って前の(なまえがでてこないけど)あのひとが…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ