離れたくない
険悪な空気の中、わたしの魔力検査が始まった。
みんなわたしの魔力に期待なんてしていないので、律がどうなるのかの話で夢中になっている。
特にサックとゴルドはエレサに敵意剥き出しで、彼女に聞こえる声で「この堅物女、人情のかけらもねえ」「ほんとだよね、なにを偉そうに」とぶつぶつ話していて、アンリーヌに引っ叩かれていた。
ヨナは呆れた様子で3人のやり取りを見て、ため息をついている。
わたしこれから魔力検査するんだが。
結構緊張してるんだが。
ー‥‥‥期待されてもどうせすごい結果なんて出なくて気まずいって思ってたけど、こうも誰にも見てもらえないと悲しいな。
大人数で友達とカラオケに来て、最初は「歌下手ってバレるから歌いたくない〜恥ずかしい〜!」とか思っていたのに、いざ自分が歌ってる時に誰も聴いてくれてなくてそっちで盛り上がってたら、なんか虚しくなるあの感覚‥‥‥。
いやいやもういい余計なことは考えるな、さっさと終わらせよう。
「エレサさん、お願いします」
「ええ、行くわよ」
律の時と同様に、わたしを囲んでいる壁が全方位どんどん縮まっていき、当たるギリギリで止まって、光り始めた。
あまりの眩しさに目を瞑って、ただひたすら終わるのを待つ。
あ、ほんとだ、律が言ってた通りなんかむずむずする。
‥‥‥ゴルドとサックがアンリーヌに叱られてる声がする。
なんていうか、今めちゃめちゃ発光しているであろうわたしをまじまじと見られるのも恥ずかしいけど、完全無視で脇で喧嘩されるのも‥‥‥結構シュールな状況だな。
そうこう考えているうちに、瞼を貫かんばかりの眩しさが徐々に収まっていった。
「終わったわよ。出なさい」
「あ、はい‥‥‥ありがとうございました」
「咲久、そんな女に礼なんてしなくていいよ」
「もー、律!最低限の礼儀はいるだろ!またアンリーヌに怒られるよ」
律がわかりやすく不機嫌モードに入っている。
サック、ゴルド、律を交互に叱るアンリーヌが、ほぼ母親みたいだ。
わたしは、今唯一話が通じそうなヨナの側にすすっと近づくと、「お疲れ」と声をかけてくれた。
なんだか無性に嬉しい。
「それにしても、アンお姉さんがいてくれてよかったよ、本当に」
「‥‥‥まあでも、アン姉もかなり焦ってるし、怒ってると思うよ、内心は」
「え、そうなの?落ち着いてるように見えるけど‥‥‥」
「だって、2人に魔力検査をさせようって言い出したのも、ここに連れてきたのもアン姉だし。これで律と咲久が離れ離れになるようなことがあったら、記憶消されちゃったりしたら、アン姉の責任ー」
「それは違う!!」
やばい、思いの外でかい声を出してしまった。
普段や態度に出すことがないヨナが、一瞬ビクッと肩を揺らして目を見開いていた。
3人を相手していたアンリーヌが、「なあにー?あなたたちまで喧嘩?!全くもう」と声をあげる。
「ご、ごめんヨナ、今のは違くて、つい」
「わかってるから。別に気にしてない。アンリーヌも世話焼きうざい、こっちはなんでもないから、そっちのガキ供いい加減黙らせて」
「おいヨナてめえガキって誰のことだ!!」
「ヨナちゃん、今のは聞き捨てならないんだけど?!」
「今のはない」
相変わらずのヨナの口の悪さにさらにヒートアップした3人に、ヨナはガン無視をかます。
もうめちゃくちゃだ。
「咲久」
「は、はいっ!」
「人の話は最後まできいて」
「ご、ごめんなさい‥‥‥」
「あのね、私だって、もし仮にそんな最悪の事態になっちゃったとしても、アン姉のせいだなんて思わない。思うわけないし。でも、アン姉は絶対自分のせいだって自分を責める。そんなの、ヨナは嫌。だから、アン姉ならなんとかしてくれるなんて思わないで、ちゃんと2人もエレサのいうクソみたいな結果にならないように抗って」
「ヨナちゃん‥‥‥」
ああ、やっぱり良い子だ。
でかい声あげた自分が恥ずかしい。
「わかった!大丈夫、わたしもわたしに出来ることならなんでもするし、わたしにできないことでも、無茶してでもする!」
「は?無茶はだめだし。極端すぎ」
「一生ついていきますヨナさん‥‥‥」
「きもっ、うざっ、今更さん付けとかやめてよ」
わたしとヨナが仲直り‥‥‥?した頃、痺れを切らして大激怒したアンリーヌによって、3人は正座でおとなしく叱られていた。
その様子を見て、ヨナと顔を見合わせてこっそり笑う。
改めて思った。
ー絶対に、この6人で一緒にいたい。
「いい加減静かにできないのあなたたち。分析結果が出たわよ」
エレサの声で、ようやく全員が静かに同じ方向をみる。
それを確認すると、エレサが水晶に触れた。
お読みくださりありがとうございます。
「ヨナ」と「ユナ」が名前がにすぎていて分かりずらかったので、(作者自身も2人の名前こんがらがって名前ミスって書いてました、、作者なのに、、)「エレサ」に名前を変更しました。
改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントをくださっている方々、本当にありがとうございます。この先もマイペースに書き進めて行くので、たまに覗きにきていただけたら嬉しいです。




