冒険者登録へ
アパートの入り口でアンリーヌたち4人と集合したわたしと律は、彼らに連れられて冒険者ギルドへと向かっていた。
正直、かなり憂鬱だ。
正式にみんなのパーティーに入れること自体はすごく嬉しい。
でも、冒険者カードを発行するためにしなければいけないという魔力検査が嫌すぎる。
今日ではっきりと律との実力差が明確にわかってしまうのだ。
それと同時に、わたしが全くみんなの役に立てない無能だということも。
ずっと、わたしにも隠れた何かがあるかも、律が物理でわたしが魔術に秀でているのかも、なんて希望を持っていたけど、昨日の魔力定着で自分は凡人かそれ以下だということがわかったとき、なんというかもうショックと諦めで虚無だった。
ていうか転生者は魔力めっちゃ持ってて超強いとか言ってたのに、話が違くないか。
絶対律が私の分まで持ってっちゃっただろ能力。
ギルドへ向かう道中、みんな律の魔力検査の話題で持ちきりだ。
「魔力検査の魔術具壊れるんじゃねーか、もしかしたら」
「何言ってんだよゴルド、流石にそれは‥‥‥ありそうで怖いね」
「結成してから新メンバー1回も入れてなかったのに、急に入れたと思ったら1人は黒髪なんて、大注目で大騒ぎされるだろうね。ヨナうるさいの嫌い。帰りたい」
「こら、ヨナ。パーティーに新メンバーが入る時は、メンバー全員で登録に行かないといけないんだから、帰っちゃダメよ」
ーみんなわたしの存在忘れてる気がする。わたしもいるのに。
いやいやいや、構ってもらえなくて拗ねてる子供か!わたしは。
本当に自分が嫌になる。
「咲久、なんでそんな離れて歩いてんの、危ないからちゃんとついてきて」
「わかってるって、ちゃんとついて行ってるから。そんなはしゃいで横に広がって歩いてたら他の人に邪魔になるから後ろにいるだけ」
わたしは、我ながらあまりにも幼稚だ。
少し距離をとったら、律が気づいてそう言ってくれるだろう、と思っていた。
むすっとしながら歩いていると、手にひんやりとした気持ちのいい感触が当たった。
見なくてもわかる、これは律の手だ。
「な、なに」
「はぐれたらどうするの。方向音痴だから、咲久絶対迷子になるでしょ」
「ちゃんとついて行ってるって言ってるじゃん」
「そんなに離れて、1人で歩いてるって思われて誘拐されたらどうするの。ちょっとは自分の可愛さ自覚してもらわないと困るんだけど」
「されるかばか!大袈裟なんだよあほ!」
わたしたちと律のやり取りを見て、アンリーヌたちが「またいつものが始まった」とこちらをチラチラ見ながら笑っている。
そんなこんなで歩いていると、一際大きくて人に出入りが多い建物についた。
みるからに、ここがギルドだ。
「さて、ついたわ。入りましょうか」
「おう!お前ら、離れるんじゃねえぞ。ここにはおっかねえ奴らも多いからな。女2人だなんて思われたら、ほぼ確実に変なやつに絡まれるぞ」
「まあ、律ちゃんがいれば心配いらないと思うけどね」
ぴったりとゴルドたちの後ろについて、ギルドに入る。
すると、賑やかだったギルド内が一層騒がしくなった。
「おい、あのパーティー」「珍しいな、ギルドに来るなんて」「しかも全員揃ってる」「激レアね」
フードを被った律の黒髪に気がついて反応したのかと思ったけど、どうやらアンリーヌたちに反応しているようだ。
特にアンリーヌはただものではないと思っていたけど、結構有名なパーティーなんだろうか。
目立つことには慣れているのか、4人とも騒ぐ周りに見向きもしないで堂々と真ん中を歩いて受付カウンターに向かう。
「あら、アンリーヌじゃない。いつもご苦労様。へえ、今日は全員揃ってるのね、珍しい」
「ご無沙汰ね、エレサ。そうなのよ、今日はちょっと。あ、そういえば要件の前に少しいいかしら。こないだの依頼なのだけれどー」
エレサ、と呼ばれる受付のお姉さんとアンリーヌが親しげに仕事の話を始めた。
なんていうか‥‥‥アンリーヌって、この世界のすべての人と知り合いなのだろうか。
わたしたちにはよくわからない2人の話をひと通り済ませると、「ごめんなさいね、時間もらっちゃって」と言って、本題に入った。
「今日は、ここにいる2人の冒険者登録と、私たちのパーティーへの加入登録をお願いしにきたの」
聞き耳を立てていた人達で、ギルド内が沸いた。
「へえ、何事かと思ったら‥‥‥。わかったわ。とりあえずフードをとってもらえる?顔を確認したら、裏で冒険者カード用の写真撮影をして、魔力検査に入るわね」
こんな注目されまくっている状態でフードをとって大丈夫だろうか。
律に視線を送って訴えてみる。
「あー、どうせ黒髪は隠せないだから、何回も驚かれるよりもさっさと認知してもらった方がめんどくさくないし丁度いいかも」
そう言って、律は躊躇いもなくフードを取った。
お読みくださりありがとうございます。
ギルドのお姉さんと言ったら巨乳ですよね、、エレサもわたしの中では巨乳設定です。
改めて、ここまでブックマークやいいね、評価やコメントをしてくださっている方々、本当にありがとうございます。




