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 中に入って入り口を閉じると、完全な漆黒の空間になった。

 怖い、怖すぎる。

 お願いだから早く始まって早く終わってくれ。

 そんなことを考えていると、魔術具が光を放ち始め、その光が瞬く間にわたしの周りを囲うように伸びてきた。

 やがてその光はわたしを中心に綺麗な円型になった。


「あ、ちょっと綺麗かも‥‥‥って、え、え?!」


 あまりにも未知すぎる幻想的な光景に見惚れていると、わたしを囲む光の輪ががどんどん小さくなっていった。

ー待って、これ、当たっても大丈夫なんだよね?!機械の故障じゃないよね?!

 焦るわたしをよそに面積を縮めていく光の輪は、ついにわたしの身体の輪郭に触れた。


「怖くない怖くない怖くない‥‥‥」


 目を強く瞑って、ひたすら自分に言い聞かせる。

 光の輪が、自分の中にめり込む‥‥‥いや、浸透するような感覚を感じる。

 痛みもないし、気持ち悪さもないけど、自分の中に謎の光が入り込んでいるという事実が恐ろしすぎて震えが止まらない。

 しばらくすると、光が徐々に収まっていき、辺りは漆黒に戻った。

ー終わった‥‥‥?

 目がおかしくなりそうだ。


「咲久?大丈夫?終わったなら出てきなよ」


 外から律の声がして、心の底からホッとする。

「今出る!」と返事をして、テントから出た。


「な、なんかすごかった!思ってた感じと違ったっていうか‥‥‥普通に綺麗でー律?」 


 興奮気味で話すわたしの顔を‥‥‥いや、頭を、律が瞬きもしないでガン見してくる。

 ーそういえば、髪色が変わるんだったっけ。

 わたしは、自分の毛先を摘んで、恐る恐る確認してみた。


「えっ、うええ?!白、黄色‥‥‥?!」


 想像以上にブリーチされた髪色になってしまった。

 本当に自分の髪の毛なのかと何度も確認してみるが、短いボブなせいで、いくら髪の毛を見ようと前に持ってきても毛先しか見れない。


「咲久ちゃん、鏡あるわよ」

「あっ、ありがとうアンお姉さん」


 見かねたアンリーヌが渡してくれた手鏡で、ようやく魔力定着後の自分とご対面する。


「うわっ‥‥‥すっごい」

 

 声を漏らさずにはいられなかった。 

 ブリーチどころか髪を染めたことすらない、黒だったわたしの髪の毛が、パステルっぽいクリーム色になっていた。


「よし、成功だな!やっぱり魔術具は正常に動いていたみたいだ」


 ザースは、嬉しそうに魔術具を回収しにテントに中に入っていく。

 

「似合ってるわよ〜、咲久ちゃん!ああもう、可愛すぎるわ!」

「おう、雰囲気にあった色だな」

「うわああ、可愛いよ咲久ちゃん!」

「まあ、いいんじゃない」


 アンリーヌ、ゴルド、サック、ヨナが、順番に一言ずつ褒めてくれた。

 なんて暖かい人たちなんだろう。

 お世辞でも、純粋に嬉しい。


「えーっと‥‥‥律?なんか言ってよ。流石に無言でそんなにガン見されると怖いってば」

「え、ああ‥‥‥」


 律が、らしくなく口ごもった。

 律は、黒髪のわたしの方が好きだったのかもしれない。

 だとしたら、元の色に戻りたいー‥‥‥いやいやいやちょっと待て。

 なんで律の好みのわたしでいたいなんて思ってるんだ、別に律は関係ないじゃないか。

 なんでわたし、ちょっと落ち込んでるんだよ。


「あはは‥‥‥あんま似合ってないよねー、まあ、すぐ見慣れると思うから」

「は?似合ってるけど。っていうかめっちゃ可愛いけど」


 わたしが笑って流そうとすると、律がキレ気味で言った。

 時が止まったかのようにその場に3秒ほど沈黙が流れる。

 時間差で、顔が熱くなってきた。


「お、思ってないだろそんなこと!だってなんかずっと険しい表情でずっと無言だったし」

「それは、変わりすぎてて衝撃を受けてたのと、新鮮な咲久の姿を静かに噛み締めてたから」

「なっー‥‥‥はい?」

「クリーム色の髪、咲久の白い肌を際立たせててめっちゃいい。透明感すごすぎて、もはや透けてるんじゃないかってレベル。服の色とも合ってるし、妖精みたい。あとー」

「うわあああもういい!別に、褒めてくれなんて頼んでない!!」


 律の口を両手で必死に押さえて、唐突に始まったマシンガンベタ褒め攻撃を強制終了させる。

 

「褒めてくれなくて不安になってたように見えたけど、違ったの?」

「そ、だ、誰がそんなこと言ったよ?!別に律にどう思われようとどうでもいいし!」

「ふっ、あははは!ほんと、律ちゃんに褒められた時が一番嬉しそうだったわよ、咲久ちゃん」

「ちょっ、アンお姉さん!!」


 ゴルドとサックも大爆笑している。

 本当に違う、顔から湯気が出ているんじゃないかってくらい暑い。


「おい!今魔術具を確認したが、特に異常はなかったぜ。それにお前‥‥‥サクの魔力定着が成功しているのをみるかぎり、やっぱり魔術具は正常に起動していたみたいだしな!ってことで、2人の魔力定着は無事成功したんだ。契約は、これからしっかり守ってもらうからな。特にリツ、お前‥‥‥君のことは、じっくり調べさせてもらう!」


 テントからうきうきで出てきたザースが、獲物を捕まえてやったぜ、とでもいうような目で言った。

 律の魔力定着の結果についての疑問は残るけれど、とりあえず無事魔力定着は完了したのだった。


 

 

 

 


 

お読みいただきありがとうございます。

咲久の髪色にも意味があって、それについては次話で書きます。

作者の好みでどうしても咲久の髪色をクリーム色にしたかったので、髪色変わってヒャッハーで、咲久が可愛いという内容で今回はだいぶ文字数使ってしまいました。

他のキャラは設定から考えてそれに合った髪色や見た目を考えていますが、咲久だけはいつもまず見た目から考えて中身の設定を考えています。

改めて、ここまで読んでいただき、ブックマークやいいね、評価やコメントをしてくださっている方々、本当にありがとうございます。

誤字報告も大変助かります!

スローペースですが今後も更新続けていくので、たまに覗きに来ていただけたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も楽しかったよー ありがとうございます。 そして咲久ちゃんの髪色 わたしの想像はほんのり桜色(ソメイヨシノみたいな)でした わりと系統的にはあたってる?(ことにさせてもらいました) …
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