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ヨナと咲久

「さて、そろそろお開きかしらね」


日本の話に興味津々のゴルドとサックに色々と問い詰められているうちに時間はすぎ、すっかり夜中になっていた。

正直わたしたちの世界の話よりも、こちらの世界のことをもっと色々聞きたかった。

ーまぁ、一気に全部言われても覚えきれないし、常識が違いすぎて頭が混乱するので、わからないことがあったらその都度きいていくのがいいかもしれない。

お会計金額をみたアンリーヌの表情が一瞬引きつったようにみえたのは、みなかったことにしておく。

店の外に出ると、お酒と料理の匂いでこもっていた店内から解放され、気持ち良い夜風が頬をなでた。


「あ〜、おいしかった。ありがとね、アン姉」

「ごちそうさまでした!」


わたしと律がそういうと、アンリーヌは「いいのよ〜」と笑っているけど、一体服と合わせてどれだけお金を使ってくれたんだろう。

サランナの服なんて、貴族に認められた高級品だし、相当な値段だったはずだ。

洗礼の儀式で魔力定着を終えたら、わたしにも魔術がつかえるようになる…らしいから、そうしたらちゃんとパーティーに貢献してこの恩を返さないと……。


「おっしゃー、じゃあ帰るか!」

「そーいえば、これから私と咲久はどこで寝泊まりすればいいの?」


そうだ、宿もないんだった。

ホテルに泊まろうにもお金が無い。

またアンリーヌに出してもらうことになってしまう。


「それなんだけど、私たちと同じアパートでかまわないかしら?パーティーランク……って言ってもまだわからないわね…とにかく、そこそこ成果を出しているパーティーだけが無料で住むことを許されている寮みたいなのがあってね、私たちはそこに住んでるのよ。そこの部屋があまってるから、このパーティーに入ったあなたたちなら住める権利をもらえるはずよ。お風呂やトイレは共同だし、まあまあボロいのだけれど…」


「全然いいです!すっごくありがたい!ね!律」

「うん。屋根とベッドを与えてくれるだけで感謝しかないよ」


ホテルみたいに1夜をやりすごす案じゃなく、ちゃんと住む場所を与えてくれるアンリーヌは相変わらずわたしたちの救世主だ。

感謝してもしきれない。


「そう、ならよかったわ」

「そうと決まれば早速帰ろうよ!僕たちでアパートの中案内するよ!」

「その、たち、の中にヨナは入ってないよね?ヨナは案内なんてしないからね。はしゃいじゃって馬鹿らし」

「おい、ヨナ!お前またそんなことを…」


ヨナは相変わらずだけど、他は皆歓迎してくれているようでホッとする。

アパートに向かいながら、サック、ゴルド、律、アンリーヌが横並びに歩いてわいわい話している後ろで、わたしとヨナが自然と2人並びになった。

先程の食事の時もあの4人が主に話して、わたしとヨナの発言量が圧倒的に少なかった。

ヨナに話しかけようともおもったが、席が離れていたのでヨナに話しかける勇気がでなかった。

けど、今はとなりにいる。

これは話しかけるべきなんだろうか。

いやでも、多分好かれてないし、無視とかされたら…こう…心が……。


「ねぇ、あんたさ」

「え、あ、はっ…はい!」


なんとヨナの方から話しかけてくれた。

予想外すぎてかなり返事が挙動不審になってしまったのは許してほしい。


「さっきから、なんかうざい」

「ー……」


ここまで率直なディスりが他にあるだろうか。

言葉を失うとはこのことだ。

ヨナに嫌われるようなことはしてないはずなのに。

なにこれ、なんて返せばいいんだ。


「あっ……ははは……」


もう、笑うしかない。


「嬉しいの?」

「い、いや……さすがに、嬉しくはない……です」


これで喜んだらドMじゃないか。


「こんなにみんな良くしてくれてるのに、今日初めて会ってからあんたの作り笑いしか見てない。なんでなの?」

「ーっ!えっと……そんなことは……ほんとに今日は楽しくてー」

「まぁ、いいけど。ヨナは人間観察趣味だからわかったけど、他のみんなは作り笑いだなんて気づいてないだろうから」


ー……気まずい。

あれでも日本での部活のみんなとの打ち上げやバイトの食事会の時と比べたら、かなり楽しめていた気でいたけど、それでも複数人でのご飯は苦手なものは苦手なのだ。

今気づいた。

ヨナのことを、コミュ症同士だと勝手に思って仲間意識をもっていたけど、別に彼女はコミュ症なわけではないんだ。


「楽しめないうちは、無理に笑わなくていいんじゃない。みんなまあ…良い奴らだから、多分いっしょにいたらそのうち作ってない笑顔で話せるようになるでしょ」


今、もしかして慰めてくれてる……?


「ヨナちゃん……、実はめっちゃ優しー」

「は?!何勘違いしてんの?!まわりに気使ってばっかりで空気の変化にビクビクしてるあんたみてたらイライラしただけだから!」


少し顔を赤くしながら怒るヨナが、あまりにもかわいくて、思わず頬が緩む。


「あと、ちゃんはやめて」

「じゃあ、ヨナ…?」

「あーもうそれでいい」

「わたしは、あんた、じゃなくて咲久だよ」

「調子乗んないで」

「ごめんって」


わたしは今日はじめて、自然に笑顔がでた気がした。



お読みいただきありがとうございます。


ヨナにとっての世界は自分中心にまわっていて、咲久にとっての世界は自分を取り巻くまわりの人たち中心にまわっていて、だからこそコミュニケーションの仕方がお互いまったく違って、理解し合えないけど正反対だと何故か仲良くなれちゃう…みたいなイメージです。

ちなみに律の世界は咲久中心にまわっています。


ここまでブックマークやいいね、評価や感想で応援してくださっている方々、本当にありがとうございます。



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