知っている
全員が一斉に、大きく手を挙げているレミをみた。
タカノの死んだ魚のようだった瞳に、ようやく希望の光が入る。
「レミ、まさかお前、何かわかったのか?!」
「まさかまさかのさらにその上をいくまさか情報を、この優秀なレミちゃんは目撃しちゃたのさ」
そう言いながら跳ねるような歩き方でタカノの方へ近づいていったレミは、彼の前で立ち止まると得意げな表情で仁王立ちした。
「ー!れ、レミちゃん、何か、わかったの?」
「もったいぶらずにさっさと教えろよ」
「本当ですよ、相変わらず目立ちたがり屋でめんどくさい人ですね」
「ねみい。長え」
その場にいるレミを除く転移者4人が、呆れた声で不満を垂れる。
レミは一瞬だけ不服そうな表情をしたものの、すぐに自信満々のいつもの顔に戻して言った。
「まあまあ、みんなせかさないでよね〜、この情報は、ためて言うだけの価値はあるんだよ?」
「レミ、頼む、時間がない。何かわかったなら教えてくれ」
タカノのやつれた顔を見て、レミは少し困ったように笑った。
「もちろん言うけどさー、これ教えたら、タカノンの気苦労もーっと増えちゃいそうだなー、レミ、結構ガチで心配してるんだからね?」
「ーどういうことだ?前に転移者かもしれない人物と接触したと言っていたが、その子らのことで何かわかったのか?」
「うんそうそう、折角転移者っぽい子たち見つけたって前に伝えたのに、魔力定着が完了しているのならその2人が転移者であることはあり得ないってみ〜んなに否定されちゃって、レミまじ泣きそだったんだけど、あ、別に泣きそーだったのは嘘なんだけど」
「‥‥‥レミ、頼むから要点だけを話してくれ」
両手を目の下へ持っていき、泣き真似をしていたレミは、疲労困憊のタカノの青白い顔をチラッと見て、さらに苛立ち初めている4人の空気を感じ取り、「わかったよお」と両手を下ろし声のトーンを下げて言った。
「先に結論を言うと、前にレミが言ってた2人のうち、少なくとも1人は転移者で間違いない。ー‥‥‥証拠を見せるからよーくみててよね」
レミは昼間、自身の見た光景を、映像として専用の、魔術具に保存していた。
言っても信じてもらえないと思ったからだ。
冗談とおふざけばかりの彼女が、本当は、誰よりも勘が鋭く、誰よりも頭の回転が速いことを、タカノを含めその場にいる5人は知っていた。
全員の視線が、魔術具の映しだした映像に集まった。
「レミ、ぜーったいあの2人が転移者だって確信してたから、証拠を得るためにずっと尾けてたの。ギルドの情報こっそり見て、2人が今日パーティーでどこで何の依頼を実行しているのか調べてたから、居場所を見つけるのも楽勝だった。そしたらー」
レミは説明する声を止め、ただ昼間見た映像を流した。
部屋の空気が変わる。
タカノが息を呑む音が聞こえた。
映像が終わると、レミはその光景が収められている魔術具をタカノに渡した。
「はい、タカノン。これ使うでしょ」
聖女が現れたということは、災いが起こるということを、タカノはもちろん、転移者である5人も、こちらの世界に来てから散々受けさせられている講義で知っていた。
ーその災いに、最前線で最終兵器として戦うことになるのが、自分たち転移者だということも。
タカノは無言でレミから魔術具を受け取ると、唇を噛んだ。
「ー……転移者の捜索、今日までご苦労だった。皆ありがとう。特にレミ、さすがだな。さて、5人共、気になるとは思うが、今回の件は後は俺に任せて、悪いが今日からまたいつも通り、学校へ行って講義と訓練を受けてくれ」
「た、タカノさー」
「それと、今日観たことは、学校の皆……他の転移者たちには公言禁止だ。いいな?」
5人は、顔を見合わせて、静かに頷いた。
「タカノさん」
「……なんだ、もう下がっていいぞ」
5人が、管理官室を出ようとパラパラと足先をドアへ向けはじめたところで、そのうちのひとりがタカノの方に体を向き直して言った。
「僕たちのこと考えすぎるがあまり、自分を犠牲にしないで下さいね」
他の4人は、その言葉に前のめりに続いた。
「ちょっと俺らよりちょっと年上ってだけで、タカノもただの転移者の1人に過ぎないんだしな」
「そ、そう、です!タカノさん、私たちのこといつも1番に考えてくれてるの、知ってます……!」
「そーだよー?タカノン!まずは怖いからその隈治してよね」
「睡眠不足はよくない。眠くなる」
タカノは、ふはっと吹き出して、ぎこちなく笑って言った。
「何がちょっとだ、お前らよりひと回りも年上だぞ俺は。……でもまぁありがとな、またお前ら5人には頼ることになりそうだ。決まったことがあれば、追って伝える」
5人はそれぞれ、力強く頷いた。
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