後編 アルト氏に半分以上育てられちゃってるよ?
はじめに教えてくれたのが、結界だった。
人から感づかれることがない結界で、その中でいくら魔法を暴れさせても誰にも影響がないというありがたいものだった。
不透明にしておくと、中で何をしているかも見えないので「有用だよ」と教えてくれた。
アルト氏のおかげで私は魔力の扱いがメキメキと上達して、人死を出さずにすみそうなった。
アルト氏と二人であーでもないこーでもないと言いながら、魔法書を作成するまでになっていた。
需要があるのが不思議なのだけど、アルト氏の魔法書は人気があるそうだ。
アルト氏の使っている魔法が使えると、何でも出来るのが素晴らしい!!と言うことらしい。
アルト氏が使えているのだから、使える人が現れるはず。と人気があるらしい。
少数ではあるが、アルト氏と同系統で魔法を扱える人もいるらしい。
ただ、想像力が足りないために、何にでも魔法が使えるようにはならないらしい。
ほぼ一年間アルト氏は私に付ききりで魔法を教えてくれて、次の仕事があるからと言って、屋敷を後にした。
別れは淋しいけれど、仕事なら仕方ない。
などという感傷は全く無く、二人して転移魔法が使えたので、気が向いたら行き来していた。
アルト氏曰く、この世界の魔法と私達の魔法は根本的なところで違っているらしい。
私達が使っているものこそが魔法で、こちらの魔法は超能力に近いかもしれないと言っていた。
アルト氏が子供の頃に読んだ本に洗浄の魔法があったらしいのだが、あると便利だなぁ〜と思って「クリーン」と唱えたら、体から衣服まで全て綺麗になっていたらしい。
便利だから覚えなさい。と言われて洗浄の魔法を何度も見せてもらって、私も使えるようになった。
部屋の中全てが洗浄できるようになったので、試してみると、本や紙が駄目になったあげくに、壁紙までぼろぼろになってしまって、両親に物凄く怒られた。
使い所は考えなくてはいけない魔法だった。
今のところ、悠久の孤独からは遠ざかっているけれど、油断をした頃に痛い目に遭うことは七海の頃から知っているので、魔法に関してだけは自分で厳しく律した。
魔法の勉強の時以外は弟妹や両親と仲良くしている。
母には「ちょっと良い子すぎるわ」と額にキスを受け、私は両親や弟妹に同じようにキスを返す。
日本人ではありえない接触に戸惑うこともあるけれど、されたことはしても良いと考えて、行動している。
アルト氏のおかげか、十歳になっても両親も弟妹も顕在で、魔法で誰かに怪我を負わせることもなかった。
毎日楽しく暮らしていたのに、私に暗雲が立ち込め始めた。
悠久の孤独の始まりだった・・・。
十歳になると魔法学園に行かなければならなくなり、我が家にはタウンハウスはあったけど、両親が領地から離れたがらず、私は二十七歳になったアルト氏と一緒にタウンハウスで暮らすことになった。
お年頃だと反対されるかと思ったけれど、両親にとっては魔法の先生はいくつになっても魔法の先生のままのようで、反対はされなかった。
一緒に居ることをいいことに、アルト氏と二人で何冊も本を出版し、最後のページに日本語と英語でこの文字が読めるのなら連絡をとタウンハウスの住所を書き記した。
当然、まだ誰からも連絡はない。
何時か連絡があるといいなと思う。
転移者や転生者が居ても、本と出会わない可能性もあるからね。期待はしすぎない。
魔法学園に通い始めると「魔法のレベルが違いすぎて習うことがない」と教師陣に話をすると「その実力を見せてみろ!!」と教師たちのプライドを傷つけてしまったようで、まるで決闘を挑むかのように教師たちに取り囲まれた。
私は最大出力の魔法を放って見せた。そして、最小の魔法も。
教師たちは膝をついて「俺達の負けだ・・・」と言って飛び級の資格を与えてくれて、最終学年へと編入させてくれた。
十七歳の中に一人十歳が交ざって魔法議論を、あーでもないこーでもないと言い合って、やっぱり私の魔法は皆と違うことを再認識した。
けれど、こちらの魔法理論は本を読んで理解していたので、十七歳の中の十歳が学年で一位の成績を収め、十七歳達のプライドをへし折ってしまった。
十七歳のクラスで最初から最後まで首席の座を守り、私は十一歳で魔法学園を卒業することになり、魔法大学の入学許可を貰うことが出来た。
十一歳で魔法大学に入学することになったと両親に知らせると、冗談だと思ったらしく、軽く頑張りなさいと手紙が来て、私は頑張ることにした。
魔法大学では論文と実践があり、そのどちらもそれなりの成績を収めないと卒業できない。
大学に入学すると、冒険者カードのようなカードをを作る事になり、このカードにどれだけの実践経験があるか、そのカードが全てを記憶するので、どんどん実践に出ようとアルト氏に言われた。
アルト氏が手伝うと、私の実績にならないので、安全のために付き合ってくれているだけで、申し訳ないと思いながら、私は一ヶ月で卒業までの魔物の討伐を済ませた。
欲しい魔石もどんどん集めた。でも浅いところで手に入る魔石の種類は少なくて、もっと奥に入りたいと、アルト氏にお願いし続けていた。
論文に関しては、少しだけ問題になった。
既に私はアルト氏と一緒に何冊も本を出版していて、その本は、継承の儀を受ける前の心の準備から始まって、各年齢でこれだけのことが出来ると飛び級で学園を卒業することが出来て、どれだけの威力の魔力を放つことが出来たら、どんな魔物が倒せるかまで網羅した本を出していたからだった。
アルト氏との共同名義の本になっているが、監修はしてくれているが、それ以外は私が書いた本なので、それを論文として扱うかが問題になった。
この本が論文として扱えるようなら、私は大学に入って一ヶ月で卒業ということになってしまう。
大学側は論文を一本、アルト氏が関わらない物を書いて、それが合格なら大学の卒業を認めると言われて、私は三日で論文を書き上げた。
提出すると、私の論文を本にしたいと出版社が出てきて、アルト氏監修なら出版してもいいと許可を出した。
私は大学は一ヶ月半で卒業となってしまった。
大学院へと入りたいというと、歓迎するが、実践で魔物を倒してくれる方がありがたいと言われ、大学院に在籍しつつ、私はアルト氏と二人で冒険者になった。
毎日血に濡れながら魔物を倒していく。
カードに何をどれだけ倒したのか記載されるため、カードを冒険者ギルドと大学院へ提出するだけで収入がある。
それ以外にも私の魔石の収集があって、かなりの金額を稼ぎ出していた。
奥へ奥へ進んでいくので普通では手に入らない魔石がどんどん手に入るようになってきた。
魔石のサイズもどんどん大きくなり、継承の儀よりもかなりいい儀式が行えるだろう。
魔石が二十五種類、大きさはこぶし大のもので揃えて、私は魔法陣を石板に魔力で彫っていった。
出来上がった石板に手を置くと、二十五種類の魔法が使えるようになり、魔力量も倍以上に増えた。
どうやら私は全属性持ちのようだった。
アルト氏にも試すように言うと、アルト氏の結果も私と同じだった。
「自分で継承の儀の石板を作っちゃうって凄いよね〜」
「継承の儀で石板を眺めていられる時間が長かったもので、魔法陣を読み解く時間があったんですよ」
「なるほど普通は数秒手を置くだけだから魔法陣まで見る暇ないもんな」
大学院は珍しい魔物を討伐した後の死体を欲しがり、私はそれを納め、一緒に解体して、魔物の不思議を勉強していった。
その片手間に論文を作成し、院と出版社に両方同じ内容を送って、論文は本となっていた。
院もいつ卒業してもかまわないと言われたのは十三歳で、私は領地の屋敷に一度戻り、両親に大学院までの卒業証書を見せると、両親は「信じられない!!」と首を振って現実を受け止めようとしなかった。
冒険者と本の出版の両方で、月収がこれくらいで、年収がこれくらいと話すと、またもや両親は唖然としていた。
「私の将来のことを話さないと駄目だと思うんだけど・・・」と両親に話すと「実際問題、私は誰かのお嫁さんには収まらないと思うんだけど・・・」というと「そうだな」と真剣な顔で両親に言われてしまった。
「もう、アルト氏に貰ってもらうしかないんじゃないか?」
とお父様が言い出し、母もそれに賛成した。
私は慌ててアルト氏を呼び出し、ことの成り行きを話すと、アルト氏も、まぁ、俺で文句がないのなら別にいいけどと言い出し「いくらなんでも年が離れすぎているでしょう?」っていうと「貴族ならそれくらい普通」と返された。
「私が結婚できるようになるまでまだ六年あるんだけど」と言うと「その六年で他にいい人を見つければいいじゃない」とお母様が言い出し、それで決定してしまった。
私は「こんなおじさん嫌だぁーーー!!」と叫んだが、私の叫びは気にかけてもらえなかった。
それからも冒険者で魔物を倒し、論文を出版して、せっせと貯蓄額を増やしていると、いつの間にか十八歳になっていて、アルト氏と結婚させられていた。
知らぬ間に子供もお腹に抱え込むことになり、四人産んだところで、子供は打ち止めと伝えた後に五人目をお腹に抱え、今度こそこれ以上子供は作らないと、魔法でコンドームを作成した。
それは一般にも大当たりして、私とアルト氏はせっせとコンドームづくりに励むのであった。
はっきり行って、御殿を建ててもお釣りが来るほど稼いでいる。
悠久の孤独からは解放されたけど、私の人生、六歳からアルト氏とずっと一緒なんだけど?!
タウンハウスには、私とアルト氏の論文の最後の日本語と英語を読める人がチラホラと現れ、異文化コミュニケーションしながら、魔法を日々磨きながら子育てを頑張っている。
ハイファンタジーで大丈夫だったでしょうか?