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第1話 不幸中の幸い

 目が冷めたのは、少し暖かいようで、少し涼しいような、暗くもなく、明るくもない、悪く言えば気味の悪い、良く言えば過ごしやすい空間だった。ここはどこだ?

「お、どうやら目が覚めたみたいだね」


声のする方をみると、髭の生えた老人がこちらを見て微笑んでいた。


「え、いや、ちょっとあんまりどういうことかわからないんだけど」


「えー、君は赤芽碧偉くんだね、生年月日は~」


老人は勝手に誕生日や住所を喋り始め、最後に合ってるかな?と俺に尋ねる。


「いや、合ってるけど…」


「君は、残念ながら死んでしまいました。老衰とか、病死とかではなく殺されて、いわゆる殺人、他殺によってね」


そう言われてはっとした。そういえば俺は雪の降る寒い日、この見た目のせいで後ろから殴られたのだ、それも誰かと間違われて。というか俺、あれで死んだのか。そう思うと少し情けなくなった。それと同時に疑問がふつふつと湧き上がる。なぜ、誰と間違われたのか?そしてここはどこなのか?


「うんうん、君の言いたいことはわかるよ、君はね、あの日、普段通らない時間帯に、普段歩かない道を歩いていたことによって、君も相手もお互いに知らない赤の

他人によって、更に背格好が似ているだけの赤の他人に間違われて、運悪くだよね、椎じゃったんだ、まあ苦しむ前に意識がなくなったことと、殺されたってところはある意味運が良かったよね!」


老人は飄々とした様子で、俺の頭の中の疑問を解いた。


「あんたは誰なんだ?なぜ全部知ってる?というか、殺されたんだから運はよくないだろ?」


俺は更に疑問をぶつける。


「ここは現世とあの世の間でね、僕はいわゆる崇拝される存在、神であり、仏であ

 り、悪魔であり、偶像なのさ。だから君から見えている僕の姿は君が思う《《それ》》の姿

 だし、他のものから見ると、僕の姿はまた別の姿なんだ」


「神様ってほんとにいるんだ…」


素直な俺の感想を無視して老人は喋り続ける。


「そして君は、運が悪いと言ったね、たしかに運は悪いかもしれない、ただ、不幸中の幸いなのさ。自然の摂理、例えば老衰とか病気で死んだら、ここには来られない。最近は事故も自然の摂理なんじゃないかって、僕らの間では言われててどうするかみんなで相談しているところなんだけど、君の場合は事故じゃなく殺人だからね、全く、全然セーフだよ」


「どうして、運悪く殺されて、こんなよくわからないところにきたことが不幸中の幸いなんだ?というかここは現実か?」


「うんうん、そうだね。ひとつずつ答えるね。難しいことじゃないんだ。僕らは他殺された人たちにチャンスとして選択肢を与えているんだ。異世界に転生するかどうかのね、可愛そうだしね」


開いた口が塞がらなかった。異世界転生って最近流行りのアニメの話じゃなくて、今俺に起きている本当の話?


「そしてここは現実かどうかと言われると、なんとも言えない場所なんだ。あの世とこの世の狭間ってところかな。ここは、不幸にも望まずに殺されてしまった君みたいな者たちと、僕たちがこうして話をするためだけの空間なんだ」


もし…


「もしも転生することを選ぶと、俺はどうなるんだ?」


「えっと、転生させるときはいくつか決まりがあって…」


老人の話をまとめるとこうだった。

1.転生する世界は必ず異世界でなければならない。

2.転生する姿は前世の姿を保つ(そのため同じような種が存在する異世界に転生される)

3.前世の記憶は引き継がれる

4,生まれる境遇は神が決める

5.転生する際、スキルを付与される(但しスキルの指定はできず、発現するかどうかは不明である)

6.転生は基本的に1つの魂につき1回

7.異世界転生を選ばなかった場合、あの世へ送られる


「なるほどな、ちなみに異世界っていうのはどれくらいあるんだ?」


「異世界の数でいうと、僕が把握しているだけで38垓1730京8347兆1892億476万8491個の世界があるよ。でもこうしている間にも世界は増え続けているし、僕以外の管轄は増えているところもあまり把握できてないから実際どのくらいあるかは、まあ君たちのいう実質無限だよ」


 別にやり残したこととか、やりたいことななんて特になかった。ただ、『異世界転生』にはロマンを感じざるを得なかった。最近の男の子なら、一度は夢に見るだろう。異世界転生もので、スキルがもらえることを。


 不幸中の幸い、棚からぼた餅、もっけの幸い…、そんなことを考えながら答えた。


「転生…するしかないだろ、しないわけにはいかないだろ」


疑問や不安はもはや湧いてこず、あるのは好奇心と期待感だけだった。自然と笑みがこぼれていた。

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