ダンジョン到着
魔王城を出発してから数日が経過した頃、俺達は比較的近くダンジョンに到着した。
道中は特に何も起きなかったのだが、魔王が終始抱きついてきたり、キスをしてきたりと色々大変だった。
俺としては別に嫌ではなかったし、むしろ役得だったので構わないと思っていたが、エミリエルはそれが気に食わなかったらしく、俺に対して文句を言いまくっていた。
しかし、ダンジョンの中に入ってからは流石に大人しくなっていた。
ダンジョンの内部に入るとそこは洞窟のような造りになっていて、道幅は5m程あり、高さも3メートルくらいあった。
俺達が中に入って少し歩くと、前方からモンスターが現れた。それはスライムと呼ばれる生き物で、ゲームなどに出てくる雑魚キャラとして有名な存在だ。
その数は全部で10体おり、その全てがスライムだった。
「おい!あのモンスターは俺に任せろ」
俺はそう言って前に出ると、剣を構えてスライム達に突っ込んだ。
「はぁー!!!」
俺は勢いよく踏み込んで、そのまま先頭にいたスライムの体を風魔法で斬り裂いた。
しかし斬られたスライムは、何事も無かったかのようにこちらに向かってきたので、続けて2匹目のスライムも倒した。すると残りの8匹の内4匹は、俺を無視して魔王の方へと向かっていった。
「魔王!危ないから下がっていろ!」
俺は慌てて魔王の方に視線を向けた。
「ふふっ、大丈夫ですよ。私を誰だと思っているんですか?」
魔王は余裕の表情を浮かべながらそう言うと、指先を軽く振っただけで、目の前に迫っていたスライムを消滅させた。
俺はそれを見て唖然としていたが、魔王は涼しい顔をしながら近づいて来た。
「どうしたんですか?もう終わりですか?」
「いや、まだ終わっていないぞ」
魔王の言葉を聞いた俺は、すぐに意識を切り替えると、残りのスライムを倒しに向かった。
それから数分後、最後の一匹を倒したところで後ろを振り向くと、そこには無傷のまま佇んでいる魔王の姿があった。
「……終わったみたいですね」
「あぁ、なんとかな」
「それにしても、まさかこんな簡単に倒せるとは思いませんでしたよ」
「そうだな。でも、油断は禁物だからな」
「分かっていますよ。それで、これからどうしますか?」
「とりあえず奥に進む事にしよう」
俺達はその後、何度か戦闘を繰り返しながらも順調に進み、遂に最下層と思われる場所に辿り着いた。
「この先にボスがいると思うんだが……」
「えぇ、恐らくはそうなるでしょうね」
「よし、行くぞ」
俺達は慎重に進んで行き、大きな扉の前にたどり着いた。