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突然、結婚しました。

「おはようございます」


「うわっ!」


突然耳元で囁かれてビックリしてしまった。


「驚かせてすみません。起こそうと思ったのですが、気持ち良さそうに眠っていたものですから……」


そこには、昨日知り合ったばかりの魔王がいた。姿は、普通の人間に角が生えた程度、驚きはあったが、嫌う要素が全く無かった。


「あぁ、おはよう。起こしてくれれば良かったのに」


「いえ、あまりにも幸せそうな顔で眠っていたものですから、起こすのが悪いと思ってしまいました」


魔王はクスッと笑いながら答えた。


「えっと……ところで何か用があったんじゃ?」


「はい。実はお願いしたい事があるんですが……」


「いいですよ。何でも言って下さい」


「ありがとうございます。それでですね……私と結婚して欲しいのです」


は?今なんと言った?結婚?誰と誰が?


「えぇー!!!!!?」


「ダメでしょうか?」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!結婚ってどういう事なんだ?確かに昨日の夜、友達になったけどさ、そもそも種族が違うじゃないか」


「はい。ですが私はあなたを愛しています。どうか夫になって頂けませんか?」


おいおいマジですか? 見た目は完全に美少女だよな?


「いや、でも俺は人間だから君とは子供を作る事も出来ないし……」


「問題ありません。私が産めば良いだけです」


「いや、そういう意味じゃなくてだな……そもそも君は女の子じゃないのか?」


「私は女ですよ?ただ性別という概念がないだけです。なので女性でも男性でもどちらでも好きな方を選んで頂いて結構です」


「そ、そうなのか。でもどうして俺なんかを好きになるんだよ?」


「それは……一目惚れというヤツですかね。一目見た瞬間ビビッときてしまったんですよ。これは運命だと確信致しました。そして今も愛しています。なのでどうか妻にして下さい」


「……分かったよ。でも少し考えさせてくれないかな?一晩だけ時間をくれ」


「分かりました。いつまでも待ちますので、じっくり考えて下さって構いませんよ」


こうして魔王との衝撃的な出会いから始まった俺の人生は、またもや波乱万丈なものになりそうだ……。


俺は魔王からのプロポーズを受け、一旦保留する事にした。


魔王は、ずっと待っていると言ってくれたが、俺としても色々整理する時間が必要だからだ。


とは言ったものの、どうすれば良いのだろうか。


魔王は、俺と結婚する事に抵抗はないみたいだけど、俺としては男として生きていきたいと思っている。


まぁ今は、異世界に転移している訳だが、それでも俺は自分の意思でここにいる訳だし、何よりこの世界が好きだ。


なので出来ればこのまま、この世界で暮らしていきたいと考えている。


しかし魔王と結婚して夫婦になると、俺がこの世界に残れる可能性はかなり低くなるだろう。


それに魔王は、この世界の人達から嫌われている存在だ。


そんな魔王と結婚したら、俺は間違いなく迫害されると思う。


かといって、魔王と結婚せずにこの世界に残るとしたら、魔王はこの星を滅ぼすと言っているので、いずれ滅ぼされてしまう事になる。


つまり、この星を救う為には、魔王と結婚しなくてはならないという事だ。


まぁ俺は別にこの世界を救おうなんて、大それた事は思ってないし、この星に住む人々だって同じ様に思う人も多い筈だ。


ただ俺には、そんな力は無い。


でも、このまま何もしないでいたら、結局この世界は滅びるだけだ。


なら、俺が出来る事をやるしかないんじゃないか?


「よし決めたぞ!魔王、俺は君の求婚を受ける事にするよ」


「本当ですか!?嬉しいです!」


魔王は、嬉しそうに微笑んだ。


「それで、魔王が嫌でなければの話なんだけど、もし君が良ければ一緒に暮さないか?勿論無理にとは言わないけどさ」


「是非、お願いします!」


「本当に良いのか?魔王にとって、メリットがあるとは思えないんだけど」


「はい。それに、あなたのいない世界なんて、生きる価値なんてないですから」


魔王は真剣な眼差しで答えた。


「そこまで言われると照れ臭いな。これから宜しくな」


「こちらこそ、よろしくお願い致します」


こうして魔王と俺は結婚した。


「そういえば、この世界では結婚すると、お互いに名前を交換するんだっけ?」


「はい。お互いの名前を教えて夫婦となります」


「じゃあ早速やってみるか」


「はい」


「では改めて、俺は天川 三月だ。よろしくな」


「私は、エミリエル・フォンティーヌです。末永く宜しくお願いします」


「あぁ、こちらこそ」


「私の事は、エミリと呼んで下さい」


「分かったよ。俺の事も、さん付けは要らないから呼び捨てで呼んでくれ」


「いえ、流石にそれは恐れ多いです。ですが、どうしてもと言うならば仕方ありませんね」


「うん?どういう事?」


「ふふっ、こういう事ですよ」


突然、魔王がキスしてきた。


「ん!?」


魔王は舌を入れてくると、俺の口内を蹂躙した。


「ぷはぁ〜。これであなたと私は夫婦ですね」


「……急に何をするんだよ」


「私達はもう夫婦なのですから、これくらい普通ですよ?」


魔王が不思議そうな顔をして答えた。


「いやいやいや、いくら何でもいきなり過ぎないか?」


「大丈夫です。私は気にしませんから」


「いや、俺が気になるんだよ。そもそもなんでこんな事するんだよ?」


「あなたが可愛いからです」


「は?それだけ?」


「はい。あなたはとても可愛らしいですし、私好みの顔立ちをしているんです。だからつい襲ってしまいたくなるんです。ちなみに、私は人間の姿にもなれますよ?」


「いや、なんでだよ」


「ですから、さっきも言ったように私は人間も好きです。ですので人間の姿の方が都合が良いのです」


「そういうもんなのか?でも俺を襲うのは禁止だからな」


「えぇー!そんな殺生な……」


「当たり前だろ!それに俺はまだ、この世界で暮らすかどうか決めていないんだ。その状態で襲われたら困るんだよ」


「むぅ……分かりました。我慢致します」


「そうしてくれ」

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