試合時間を短くするためだ!
プロ野球の審判組織委員会は会議をしていた。
本日の議題は、「試合時間が長くなっていること」についてだ。
選手たちの負担を考えれば、試合時間は短い方がいい。二時間の試合だろうと、五時間の試合だろうと、一試合は一試合だ。
では、どうやって試合時間を短くするのか。
審判組織委員会は「ピッチャーの投球間隔」に注目する。
あれに制限をつけてはどうか。十秒以内に投げないと、罰則を与える。そんな風にルールを改正した。
マウンド上のピッチャーに対して、「体に特製の電気パッドをつけること」を義務づけたのだ。
この電気パッド、カウントダウンの残りが「3」になると、軽く発熱する。さらに、「0」になると、電気が流れる仕組みだ。これを罰則とする。
で、その結果、
「うぎゃあああ!」
試合中に時たま、ピッチャーが悲鳴をあげる。
だが、試合時間を短くするためだ。電気ショックを味わいたくなければ、早く投げるように。
しかし、翌年になって新たな問題が発生する。
ピッチャーたちが電気ショックに慣れてしまったのだ。カウントが「0」になっても、平然としている。
この問題に対して、審判組織委員会は次の決断をした。
そうだ! もっと強い電気を流すことにしよう!
で、その結果、
「うぎゃあああああああ!」
今年も試合中に、ピッチャーが悲鳴をあげる。
だが、試合時間を短くするためだ。強い電気ショックを味わいたくなければ、早く投げるように。
ところが、これにもピッチャーたちは慣れてしまった。
そのあとも流す電気を強くし続けたが、ピッチャーたちはすぐに対応してくる。
大きなため息をつく、審判組織委員会の面々。
「これだと、別の手段を考えた方が良さそうだね」
「早く投げないとまずい、そうピッチャーが思うような方法か・・・・・・」
会議は何日も続いた。
そして、翌年のシーズンから、「新しい方法」を採用することが決まる。
翌年になった。
今シーズンから、ピッチャーが十秒以内に投げないと・・・・・・。
「うぎゃああああああああああああああ!」
「うぎゃああああああああああああああ!」
試合中に悲鳴があがる。
マウンド上のピッチャーは、「しまった」という顔になった。
味方のベンチではなおも、
「うぎゃああああああああああああああ!」
「うぎゃああああああああああああああ!」
監督と投手コーチが悲鳴をあげている。
審判組織委員会は今年から、マウンド上のピッチャーだけでなく監督と投手コーチにも、「体に特製の電気パッドをつけること」を義務づけていた。
監督と投手コーチはマウンドに向かって、「早く投げろ!」とジェスチャーしている。
ピッチャーは急いで従った。監督と投手コーチに嫌われたら、試合で使ってもらえなくなるかも。
こうして試合時間は短縮された。
めでたし、めでたし・・・・・・?
次回は「図書館」のお話です。