色んなコレクター
表通りから少し入った所に、隠れ家的なバーがあった。
今夜も常連客たちが集まってくる。このバーは居心地が、とても良いのだ。落ち着いた雰囲気で、お酒の味も悪くないし、値段もお手頃。
ただし、バーテンダーは口下手なので、会話を楽しもうと思ったら、客同士ですることになる。
今夜の話題は、自分のコレクションについてだ。
常連客の一人が言う。
「僕はコインの収集をしているんだけどね。妻によく怒られるんだ。この家は『子どもの貯金箱』か、って」
周囲にいる常連客たちは、「わかる、わかる」とうなずいた。今夜の常連客は全員、何かしらのコレクションをしている。
「俺は鉄道模型を収集しているんだが」
スマホをいじると、一枚の画像を見せてくる。部屋の中は鉄道模型でいっぱいだ。
「こんな状態だから、『車両基地』かよ、って妻と娘に怒られる」
他の常連客たちも口々に言う。
「古いマンガの収集をしているんだが、まるで『一昔前のマンガ喫茶』のような状態でね」
「こっちはミニカーの収集をしているんだけど、部屋の中が『立体駐車場』だよ」
さらに別の一人が口を開いて、
「俺のところは『野球部の部室』かな? 野球のボールがいっぱいあるし」
この常連客はプロ野球ファンだ。応援している球団のグッズをたくさん買っていて、特に「選手のサイン入りボール」を集めまくっていた。
こちらもスマホをいじり、部屋の画像を他の常連客たちに見せてくる。
「ははははは。『野球部の部室』にあるボールだと、こんな風に選手のサインなんて入っていませんよ。遠慮する必要はありません。これは『ベースボール・ミュージアム』です。見事なものだ」
常連客たちが楽しそうに会話している様子を、バーテンダーはカウンターの内側から、笑顔で眺めていた。
世の中には、色んなコレクターがいるものだ。コインのコレクター、鉄道模型のコレクター、古いマンガのコレクター、ミニカーのコレクター、サイン入りボールのコレクター・・・・・・。
で、こんなことを考える。
(このバーにいる私はさしずめ、飲兵衛さんたちを集めているコレクター?)
自分がつくったカクテルを今、お客さんたちが美味しそうに飲んでいる。とても幸せな時間だ。
次回は「ラジオ」のお話です。




