天国と地獄
地獄ではここ数年、野球が盛んになっている。
というのも数年前、新たな法律ができたのだ。
年に一回、代表チームが天国に行って、向こうの代表チームと試合をする。「地獄代表」対「天国代表」。
それに勝ったら恩赦だ。代表チーム全員が、そのまま天国に移住できる。もう地獄の苦役に耐えなくてもいい。
ところが今年、試合当日にいきなり、代表選手の一人が食中毒になってしまった。
まだ地獄を出発する前だ。選手の変更は可能である。
バスの前で代表監督は決断した。
「選手の変更はしません。このメンバーで戦います!」
一人欠けたところで、試合ができなくなるわけではない。それよりも、新たに選手を入れて、チーム内に不協和音が生じる、そっちの方が嫌だ。
代表チームを乗せたバスが、地獄の一丁目を出発する。
そのあとに続くのは、地獄の救急車だ。こちらには、食中毒になった選手が乗っている。
二台は天国に到着した。
そして、地獄代表は試合に挑む。
天国代表は強かったが、辛くも勝利。恩赦による天国移住が決まった。
救急車に乗っていた者たちも同様だ。食中毒になった選手の他、救急隊員たちも天国移住が決まる。彼らが抱き合って喜ぶ写真は、『天国新聞』と『地獄新聞』、双方の一面を飾った。
で、その翌年である。
試合当日にいきなり、代表選手のほとんどが食中毒になった。一人や二人ならまだしも、この人数は・・・・・・。
さすが地獄だ。悪い奴が、いっぱいいるらしい。
これでは試合にならないと、今年の代表監督は新たな選手たちを追加招集することにした。
ところが、食中毒は止まらない。追加招集した選手たちも、バスの前まで来るなり、次々と倒れていく。
さすが地獄だ。悪い奴が、いっぱいいるらしい。
そんな中、「試合ができる人数」をどうにか集めた監督。代表チームを乗せたバスは、地獄の一丁目を出発した。
そのあとに続くのは、百台の救急車だ。一度選んだ以上は、たとえ食中毒だろうと連れていく。目指せ、恩赦だ!
しかし、天国は甘くなかった。
戦力の大幅ダウンした「地獄代表」では、昨年よりも戦力を増した「天国代表」に勝てるはずもない。
あっさりコールド負けして、地獄にUターンするはめになってしまった。
次回は「記録達成」のお話です。




