調査報告書:ネメシス
天使のハードボイルドの2本目と言う事で書いてみましたが、作者が憧れるハードボイルドにはまだまだ程遠い気がしました。
復讐なんて馬鹿げているってよく聞くけど、私は違うと思う。
復讐は大切な存在を奪われた者だけに与えられる報復の権利だ。
ハンムラビ法典にも載っているでしょ?
目には目を。歯に歯を。
やられたらやり返す。
これが復讐よ。
そして復讐を止める権利は復讐をする者だけがある。
それ以外の者に復讐を止める権利はないわ。
どうして無関係の者に止める権利があるのよ。
奪われた者の気持ちが解るから?
そんな物は戯言でしかないわ。
奪われた者の気持ちは同じ境遇に立った物しか決して解からない。
かつて私に説教をした馬鹿が吐いたセリフに私が返した言葉よ。
大切な者を奪われた事がない奴が奪われた者の気持ちを理解しているなどと言わないでほしいわ。
今は糞みたいに面倒な法律が出来て犯罪者にも人権が認められて復讐は罪で裁かれるって悲しいを通り越して馬鹿げた状態になっているわね。
まったく人間が何を考えているのか分からないわ。
大切な者を奪われたのに、どうして復讐する権利を取り上げるのかしら?
自分が体験しないと分からないのかしらね。
もっとも、私にとっては人間が作り出した法律なんて糞以下の存在だから、私は復讐をしたいと思う者が助けを求めて来たら力を貸すわ。
場合によっては、復讐を代行もする。
法律が何だってのよ。
法律なんて物は人間が自分たちの化けの皮を剥がさないように作り上げた偽善の物。
だったら天が裁くのかと聞かれたら答えはNOね。
天が裁くなんて事はないわ。
もしも本当に心から誰かに復讐をしたいと思う奴が現われたら“ネメシス”に来るといいわ。
ネメシスはフランスのマルセイユの何処かにあるわ。
場所は自分で探しなさい。
復讐したいと思う気持ちがあるなら、きっと見つかるわ。
そこに行けば、復讐代行人が貴方に代わって復讐をするわ。
ところで、ネメシスの意味って知ってる?
ギリシア神話に出てくる女神で因果応報と復讐を司る女神の事よ。
ちょっとネメシスに纏わる話しをして上げましょうか。
ある所にナルキッソスとい少年がいた。
この少年は容姿が優れ女からでなく男からも愛されて美の女神として知られるアフロディーナからも贈り物を送られた。
しかし、ナルキッソスは神からの贈り物を傲慢にも侮辱しアメイニアスと呼ばれる女性を自殺にまで追い込んだ。
それだけでなく呪いによって相手の話す言葉しか話せない森の妖精、エーコーを「退屈」と侮辱して手酷く捨てた。
エーコーは深い悲しみで姿を消して木霊だけが残った。
何だか話しを聞くと何処に惚れるのか分からないわ。
見た目だけに恋したなら馬鹿もいい所だけど、エーコーの場合は心から彼を愛していたらしいから哀れむ余地はあるのかもね。
話しを戻すと、この傲慢で糞みたいな男に業を煮やしたのが復讐の女神、ネメシスだったの。
ネメシスはナルキッソスを自分しか愛せない呪いを掛けてナルキッソスは水面に浮かんだ自分の姿に見惚れて恋をした。
しかし、自分に恋して報われる筈もなく憔悴して死んだ。
そして水仙が誕生した。
これがネメシスに纏わる伝説よ。
この自惚れさがナルシストの元って言われているわ。
名前からしても頷けなくないわよね?
まぁ、そんな伝説があるからネメシスは復讐の女神と恐れられるようになったの。
まさに復讐を頼みたい者が来るには持って来いの店名でしょ?
さぁ、復讐をしたいと思う者よ。
ネメシスに来なさい。
貴方に代わって復讐をして上げるわ。