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(117)氷狼の解体

タイトルにも入れましたが、そういう場面です。苦手な方はスルーしてください。


 水に濡れた氷狼の体はずっしりと重かった。あれだけ身体を覆っていた氷石がなくなっているのは、湖の中で溶けてしまったのだろう。リーズがスキルを解除すると、糸はしゅるりと縮んで、リーズの手のひらに収まった。

「やはり、魔力はほとんど残っていないようですわね。」

 アイネが言うと、レオンが頷く。

「ああ。ただ、このままにしておくと、周りの魔力を取り込んでしまう。魔石を持っていってしまった方がいいだろう。」

 レオンの言葉で、ミカサが先ほどの短剣を取り出す。リーズも腰に差していた短剣を取り出す。

「手伝います。」

「ありがとう。まずは体の向きを変えようか。脚を持って腹が見えるようにしてもらえるかな。」

 ミカサ以外の全員で氷狼の脚を持ち上げ、腹が見えるようにする。ミカサは腹の辺りをしばらく撫でていたが、手応えがあったのか、ずぶりと短剣を突き刺した。自分でも解体はするが、何度見ても気持ち良いものではない。リーズは周りの壁へと視線をずらす。氷狼が転げ回って落ちた壁の石が端の方に転がっている。この前逃げ出した場所は、ちょうど岩と土の境目だったようだ。岩の方の崩れは少ないが、その奥、土の部分が出口を塞いでいた。外の様子が見えるような場所はない。

「向こうから入るのは難しそうだね。」

「岩盤ならともかく、土の壁じゃあね。また崩れてくるだろう。」

 リーズの言葉に、同じように周りを見ていたペルーシャが答えた。

「そうすると、あまり素材は持って帰れないかな。」

 ストリペアが残念そうに呟く。また湖の上を渡って帰るのだ。重さが増えるほど、危険になる。

「使えそうな部分だけ持ち帰りますか?」

 リーズも自分で鑑定をしてみた。まだそれほどスキルが育っていないので持ち帰れそうなものの名前だけが浮かぶ。

「毛皮、牙、爪あたりは使えそうですね。肉は食用不可のようです。」

「まあ、持って帰っても重いだけだしね。」

「取れたぞ。」

 ミカサが腹の中から魔石を取り出す。片手では落としそうな大きさのそれは、氷の塊のように見えた。

「大きいですね。」

「まあ、重くはないからね。」

 そういうと、ミカサは魔石を油紙で包むと自分の荷物へと入れる。元々自分で持つつもりだったから、弓を置いてきたのかもしれない。

「この魔石、ギルドで買い取った後、どうするんですかねえ。」

 大きすぎる魔石は魔物を呼んでしまう危険があるのにとリーズが呟くと、レオンが不思議そうにいう。

「むしろ俺の方がどうなるのか知りたいくらいだ。」

 ギルドで買い取られた魔石や資材は別の部署に運ばれるので、リーズも良くは知らなかった。魔術課のアイネなら知っているのかと視線を送ると、小さく頷く。


「危険ではない大きさにまで砕かれて、販売していますわ。この魔石でしたら、それこそ保冷箱にも使えそうですから、領主様から買取の話が来るかもしれませんわね。氷石よりも高価になるでしょうけれども。」

 アイネの話を聞いてふふッとクリシュナが笑う。

「買取額が全部でいくらになるのか、楽しみだねえ。」

 その言葉に、リーズは固まった。それを決めるのはリーズの仕事である。氷狼の素材について、資料はどこかにあっただろうか。問い合わせをするところから始めなくてはならなくなりそうだ。

「さて、他の素材も回収しておこう。」

 レオンの言葉で、解体用の短剣を持っているミカサ、クリシュナ、リーズ、ストリペア、ペルーシャは氷狼の体を仰向けにする。

「毛皮は重そうだから、無理しない程度に。牙と爪は割れないように慎重にね。」

 ストリペアの助言を聞きながら、素材を取り出す。

「残りはどうしようかねえ?」

 クリシュナの言葉に、レオンが剣を取り出す。

「アンデットになられても困るからな。焼いていこう。」

 剣から放たれる炎に、氷狼の体が包まれる。毛皮の部分は炎に強いのか、体が焼けた後もしばらくは残っていた。

「なんて炎に強いんだ。全く、焼き尽くすのも一苦労だよ。」

 焼き尽くすのに、だいぶ魔力を使ったレオンがうんざりしたように言った。

「まあまあ。きっと炎に強い防具が作れるよ。私も何か作ってみようかなあ。」

 レオンをとりなしながらも、ストリペアは貴重な素材に目が釘付けになっていた。結局毛皮もほとんど持ち帰ることになり、荷物は行きと比べてずしりと重い。


 残った骨も、復活しないよう、頭の部分を砕いておく。ストリペアが骨の一部を自分の荷物に入れていた。使えるかどうか試すのだろう。

「レオンが魔法を使ったから、この辺もそのうち氷石でいっぱいになるのかもね。」

 ぐるりと周りを見回しながら、ペルーシャが呟くと、アイネが頷いた。

「そうですわね。では、魔石の心配もなくなったことですし、帰りましょうか。」

 時間は限られているのだ。

 アイネがまた氷魔法で湖に足場を作ると、一列になって渡っていく。

 リーズは最後に氷狼があった場所を振り返る。静かな水面にはまるで何事もなかったかのように、さざ波が広がっていた。リーズは静かに一つ息を吐き、皆の後に付いて言った。




読んでくださり、ありがとうございます。

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