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3話「最初の攻略対象?」



そうして予想外の結果はあったものの、検証は順調に進んでいた。

そうして一通りの検証は終えた。


結果は…現実世界とすべて同じ。


彼自身この結果は驚きで、ここまで酷似していることは彼の経験上初であった。

彼はこのことについていろいろ考察したものの、結局考えても理由は分からなかった。

そのため彼は、初のSSSSSだからこそこの結果であったと無理やり納得することにした。


そして彼は今、机に突っ伏しているところだった。

はたから見れば単にやることがないため時間つぶしとして寝ているふりをしているようにも見えるが、彼はこれでも周囲を観察していた。


今教室では、彼以外の人には言えない飛行型カメラが飛んでいた。


〔飛行観察撮影機_Sレア〕

コチラは【ロボット戦争物語_難易度SS】というゲームの工房で制作して入手できるアイテムであった。

文字通り映像を撮影するための飛行小型カメラで、自分以外の人にはカメラの存在を認知できない&壁をすり抜けることもできる便利なアイテムである。

そして撮影した映像はリアルタイムで自分の脳内に直接流したり、ディスプレイなどの映像出力機器に映像を流したりできる。


余談だが、現実世界ではこのアイテムが悪用される可能性があったため、現実世界での一般使用は禁止されていたりする。

非常に難易度が高いゲームのアイテムため、入手できる人は限られているが、手にした場合国に報告する義務が発生し、ゲーム世界でのみの使用を許可される。

もちろんこういったアイテムの売買は禁止されているが、国の秘密組織などが使用することがあるため、国自体が高値で買い取ってくれる。


話がそれてしまったが、今彼はそのアイテムを複数使い、クラスの人々の行動を見ていた。

彼はすでに教師の持つ名簿などを盗み見てクラスの人に関してはすべて顔と名前を憶えていた。


この恋愛ゲームはミッションを達成していくスタイルということだけが現在公開されている情報のため、好感度やらなんやらが必要であるかどうかは今のところわからない。

そのため、いつ何が来てもいいようにしっかりと情報収集は怠らないようにしていた。。

そしてミッションが発令されるまでは基本自由なため、こういった自由行動の時に準備をしっかりと準備しておくことが重要であった。。


(しかし、やはりこの世界にいるNPCは本物の人間にしか見えないな…初めての難易度だからと納得したはずだが、やはり気になってしまうな…)


そう、ゲームエリアにはノンプレイヤーキャラクターがいるのだが、ほかのゲームでは同じことを繰り返す、同じ会話ばかりする、とまではいかないでも、

ある程度やっている人であればプレイヤーとNPCの違いはすぐに分かるのだが、このゲームではまるで違いがなかった。

まさやの容姿を見て感想を持つ、告白される、プレイヤーに注目するなど、何気ないこれらも実はイレギュラーなことだった。

第一NPCは意図的にプレイヤーを助けるか、意図的に邪魔をする、または存在感だけのために用意されているなど用途がしっかりしていた。

しかし彼らはそんな意図を見せることなくごくごく自然に振舞っていた。これこそプレイヤーを意図して邪魔しているという見方もできるが、

それよりもこのゲーム自体がもう一つの現実世界という見方が一番自然だった。


(っと、それを考え始めるとまた途方もなくなりそうだからこんぐらいにするか)


そうして思考を切り替えた彼は、改めて彼らの行動や言動に意識を向けた。


彼はアイテムを活用してクラスを俯瞰的に観察して、些細なことも見逃さないようにしていた。

他のクラスや学年なども観察対象にするつもりではあるが、ひとまずはクラスを観察することにした。

恋愛ゲームということは、おそらく学校内にその対象がいるということ。

そしてクラスにその対象がいる可能性も大いにあるため、ひとまず我がクラスの様子を観察してから他クラスに移るつもりだった。


その甲斐あって、一人だけ対象になりえそうな人物を見つけた。

現実世界と比べるとクラスメイト自体の顔面偏差値はそこそこ高く、みな個性的で魅力にあふれているが、その中でもひときわ目立つ存在がいた。


(すげぇあいつ…男子の視線のほとんどをかっさらっているぞ……)


彼が注目した人物はとある女子生徒であった。


彼女の名前は【姫浜なつめ】

珊瑚色の髪を腰辺りまで伸ばし、前髪はきっちりと切りそろえられており、横髪を水色のリボンでまとめ、頭の上にはカチューシャが乗っていた。

身長は165センチ程度だろうか。胸もそこそこにスタイルがとてもよく、目はぱっちりしており頬は常に薄みを帯びたピンク色に染まっていた。

かわいい系のモデルさん。いやアイドルといったほうが良いだろうか。


そんな周囲の人たちよりも1回りも二回りも整っている彼女は、周囲の視線をかき集めていた。

さらにはそんな見た目の整った彼女を一目見ようとクラスの廊下には十数人の男子の姿があった。

この前まではまさやが注目の中心だったが、それまでは彼女がまさやと同じ立場であった。


そんな彼女は、とある男子生徒にしきりに話しかけていた。


(たしか、相手の男子は石垣ゆうじだったか…)


そんな彼女がしきりに話しかけている相手は【石垣ゆうじ】

初見の印象としては、“パッとしない男”しかし人好みしそうな優しい笑顔や物腰やわらかな姿勢は、なるほど女子受けしそうではあった。

黒髪で目元まで前髪を伸ばしている彼はなつめに話しかけられて笑顔で優しく対応していた。


「石垣くん!昨日上げたクッキー…お口にあってたかなぁ?」

「姫浜さん、うん!とってもおいしかったよ。やっぱり姫浜さんは料理が上手なんだね。」

「えへへ、ありがとうね、石垣君においしいって言ってもらえるよう頑張ったんだよ!」

「君みたいな可愛い子に何か作ってもらえるなんて僕は幸せ者だな。姫浜さんはいいお嫁さんになるよ。」

「およ!?えへ、えへへへ…お嫁さん……えへへへへ!」

「姫浜さんいつも僕に良くしてくれてるよね。どうして?」

「えへ、石垣君は私にとって特別な人だから!」

「?そっかー、ありがとね!」


(なんかすでにくっつきそうだな。これはワンチャン対象外かもな。

てかあんなさらっとかわいいとかお嫁さんとか言えるのか。今どきの学生は恐ろしいな。)


などと年増しな感想をもつが、彼もれっきとした同年代である。

すでに観察対象外にしようかと考えていた彼だが、一応彼らの話にもう一度耳を傾ける。


「ねぇ、良かったら今日さ……一緒にかえらない…?」

「あ、ごめんね。そうしたいのは山々なんだけど、帰りはいつも一緒の人がいるから…」

「そっか…それって今回も中山さん?」

「うん、いつも中山さんと帰っているからさ。ほんとにごめん。」

「えと…中山さんって確か2年E組のひとだよね。チア部の有名な。」

「うん、少し前に向こうが話しかけてくれるようになって、話をするうちに仲良くなったんだ。」

「ふーん、仲いいんだ。」

「うん、えと、ちょっと前に中山さんから告白されて、その、付き合うことになったんだ」

「そうなんだ、楽しい?」

「うん、とてもかわいくてとても明るいし、向こうは結構積極的なんだ。うれしいけどね。」

「そっか。

でも、たまには一緒に帰ってほしいかな。なんて。」

「ごめんね。前にほかの人と帰る時間作ってもいいか聞いたんだけど、ダメって言ってたから」

「ふーん……」


石垣は少し恥ずかしそうに彼女のことを語っていた。姫浜の表情は変わらないが雰囲気が硬質的なものとなっていた。。


(なんだ、ここにきて少し複雑なことになってきたな。)


そんな風に二人の会話を聞いていると、一人の女子生徒が2人に近づいていた。


「石垣くーん、少しお喋りがしたいんだけどぉ、来てほしいなぁ。」

「あ、中山さん。ごめんね、今姫浜さんとお話してて。」

「そうなんだー。ごめんねー姫浜ちゃぁん。石垣君ちょっと借りるよぉ。」

「う、うん。」

「あ、石垣くんそういえば今日家に親がいないんだよねぇ。じゃーあ…今日も…しちゃう……?」

「な、中山さん!あんま人前でそういうこと言うのは……」

「あはは、ごめんごめん。じゃあいこっか。」

「ごめんね姫浜さん。ちょっと行ってくるよ。」

「いってらっしゃい。」


そういって石垣は少女と共に廊下の向こうに歩いて行った。

そして少女は去り際…姫浜のほうをむいて姫浜に意味ありげな笑顔をむけて、そして石垣に腕を絡ませてどこかに行った。

その少女、中山と言われている人物は茶髪にポニーテールでとても美人で明るそうだった。


(たしか前見たときはめっちゃイケてる連中と一緒につるんでたよな…なんであいつなんだろうか。)


確か前すれ違ったときにみたけど、彼女は金髪のガラの悪そうな男やギャルなど、いわゆるパリピに属していそうな人物達のグループのリーダー的存在だった。

彼女はチア部の部長でとても交友関係が広く、学校での人気もとても高かった。

行ってしまえばヒエラルキーの頂点にいるグループのリーダー。もっとそういった部類にいる人物と付き合うものだと思っていた。

確かに彼は性格はとても好ましいが、彼女が自らアタックするような人物とは思えなかった。


そんな疑問を持った彼だが、ふと取り残された姫浜に注目する。


(なんだあれ…もしかして結構めんどくさいことになってんのか。)


彼女は石垣が消えていった前の入り口を凝視していた。

彼女の目からは光が消え、憎悪、憎しみ、嫉妬、あらゆる感情が渦巻いているようにアーサーは思った。


(このまま何事もなk…うんちっちー、うちっちー。)


華麗にフラグを回避しようとしたアーサー。

その時、ふいに頭の中に通知を知らせる音が鳴った。

まさかと思いステータスボードを開くと、そこにはあることが書かれていた。



〔ミッションが発令されました〕


クリア条件:姫浜なつめの過去、正体を暴き、彼女の計画を阻止する。


ミッション難易度★★★☆☆


失敗条件:石垣ゆうじ、姫浜なつめ、中山ゆなのいずれかの死亡。

     プレイヤー自身の死亡

     ???達の脱走


[ミッション勝利報酬:不明]


現在ミッション達成数 0/6



《備考》


このミッションのクリア後、1週間のみ途中退場が開放されます。








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