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1話「恋愛ゲームと始めての高校」


「帰りたい……」




無事にゲームに転移することができたアーサー。

彼が行うゲームは、学園を舞台としたゲームである。

主人公が5月頃にこの【私立常流聖学園じょうりゅうひじりがくえん】に転校してきたという設定で、ゲーム内容は

3月の春休みに入るまでの約10か月ちょっとの間までにすべてのミッションを達成するというもの。

そしてその学園で行うゲームとは…恋愛ゲームである。


恋愛ゲームはゲームのジャンルの一つである。恋愛ゲームはシミュレーション系とアドベンチャー系の2種類があり、

選択肢を選びながら物語を進めていくタイプのものがアドベンチャー系と言われている。サウンドノベル形式のものがこれにあたる。

シミュレーション系は、ある事柄を仮想的に体験するというもので、これは非常に広義的である。

そしてこれらの中でも、ギャルゲー、乙女ゲー、ボイーズラブなど細分化されたジャンルがある。


今回はミッションを達成するという目的が設定されているため、おそらくはシミュレーション系であろうと考えた。


そして彼がゲームに転移した時に、彼は自宅と思われる部屋にいた。


主人公のおい立ちとしては、主人公は小学5年生あたりまでこのあたりに住んでいて、親の都合で地元を離れ、そして事情によりまたこの地に舞い戻り、いたって普通のマンションで一人暮らしを始め、学園に転校してきた。という流れである。

主人公の名前はそのまま近江まさやで、見た目や風貌なども現実と変わりはなかった。


しかし、ゲームで後悔することはないとあれだけ言っていた彼が開始数分で後悔しているのには理由があった。

それは、彼に苦手な分野は2つしかないと言っていたが、そのうちの一つが恋愛ゲームのためである。


ゲームには史上最高難易度が設定されていたし、さすがにバリバリの戦闘系だろうと思っていたが甘かった。

恋愛ゲームの腕前については、昔色々な種類のゲームに手を付けていた時、物は試しとゲームワールドのギャルゲーに挑んだ。

しかし引きこもってゲームばかりしていた彼は、対人知識や女心など分かるはずもなく、40時間以上やって一人も攻略することができなかった。

それ以来そういった手のゲームにはすっかり苦手意識がでてしまい、ずっと手を出していなかった。


ちなみに恋愛系のゲームに難易度が表記されることはほとんどなく、危険度もFから高くてもBくらいというのが常識である。

そのため恋愛系のゲームが来るとはつゆも思っていなかった。


余談だが、ゲームエリアで恋愛系のゲームが現れることはほんとに稀であり、クリアすると(この場合は1人のみを攻略またはそれ以上の人数を攻略)攻略した人物の中から一人だけ現実世界に連れて帰ることができる。

現実に存在する人物よりもはるかに見た目の整っていることの多い彼らは一目見れば違いが分かるし、つれてこられた後にアイドルや芸能活動をすることも多い。

しかし、彼女らがアイテムと同じように売りに出されたりすることはなく、連れ帰った後はしっかりと人権が保障されることになる。

まぁ彼、彼女らは連れ帰った人物を慕っているため、そのまま結婚する場合がほとんどだが。

それで誰かが1つのゲームエリアから1人を持ち帰ると、その人物のルートに行くことができなくなり、すべての人物が持ち帰られるとゲームが閉じられることになる。

そのため需要の高さや希少性、そして倍率の高さからトップクラスに人気のあるゲームでもある。


説明が長くなってしまったが、彼のほぼ唯一苦手とするゲームが最高難易度として現れてしまったため、一気に自信が無くなってしまった。

そして、それとは別にもう一つの懸念がある。それは……



「俺…高校どころか中学校すら行ったことないんだが……大丈夫か……?」



そして現在、彼は学園の校門前に立っており、早々にグロッキーな気分になっていた。


彼が自分の部屋に転移した日にちは5月15日(日)であり、今日5月16日(月)は、彼の転校初日となっていた。

そう、このゲームをやる以上、学園生活を送ることは必須であり、それは毎日学園に登校する必要があるということだった。

ただでさえ人見知りの彼が教卓の前で自己紹介をし、さらにほかの生徒に囲まれて過ごすことになる。

それは彼が今まで経験してこなかったことであり、不安要素でしかなかった。


(ていうか一番の問題は、勉強の内容を理解できるかどうかだ…正直ついていける自信がないぞ……)


そう、小学校から引きこもり続けた彼は、一般的な人物が身に着けている一般教養の知識が身についておらず、せいぜい中1程度の知識しかなかった。


(英語は大丈夫として、歴史も割りと知識があるほうだし好きだからいいが…数学や国語とかの知識は一切ないと言えるぞ?)


そう、この学園で赤点(この学校では平均点の半分以下を赤点としている)をとると、留年する危険があるのだ。今から夏休みまでに中間と期末が、夏休み明けから冬休みまでにも中間と期末が、そして冬休み明けから春休みまでに学年末テストがあり、テストが2つある場合は両方で赤点を取ると、最後の学年末では1度赤点を取ってしまうと留年となる。そして出席も3分の1以上休んでしまうと留年となる。しかもこのゲームは留年することも死亡判定になってしまう。

ミッションをクリアしながら勉強もし、学校に行く必要もある。なかなかにハードな内容となっていた。


ちなみにだが、彼が苦手とするもう一つのゲームはクイズ系や頭脳を中心としたゲームであったりする。

彼は極端に知識が偏っているため、知っていることはとことん知っているし、知らないことはとことん知らないのだ。


(なるほど、これが難易度史上最高……さすがに伊達じゃねぇな……)


実際この時点では難易度はそう高くないのだが、引きこもりの彼からすると現時点ですでに難易度SSSSSレベルであったりする。

間違いなく彼史上最も苦戦しているといっても差し支えない心境であった。


(とりあえず、職員室に向かえって書いてあったな…)


そう、起動アプリはゲームを開始すると、ある程度プレイヤーに行動を指示したりすることがある。

さすがに転校初日で何をすればよいかわからないため、アプリの指示通りに動く必要があった。


(職員室は校舎に入って左に曲がればあるんだったかな…)


そうして職員室を目指す彼であったが、当然ほかの生徒も同じように登校しているわけで。


「ねぇ、あの人かっこよくない?」


「え、ヤバ!あんなイケメンいままで見たことないんですけど…」


「いままで見かけたことなかったし、もしかして転校生とかかな!?」


…などという会話が繰り広げられ周囲からとても注目を浴びていた彼だったが、彼は職員室に向かうことでいっぱいいっぱいだったため、それらの言葉は彼の耳に入ることはなかった。




そうして彼は職員室に行き、担任の指示をあおいで自分のクラスに担任と共に向かうことになった。

そうして現在、彼は教壇あたりに立って自己紹介をしていた。


「えと、俺の名前は近江まさやです…その…よろしくお願いします……」


人生で初といってもいい自己紹介というイベント。かれは最高潮に緊張していた。

膝はガクガクするわ冷や汗は出るわ眩暈はするわととても正常な状態ではなかった。


(くっそ、ここにきて引きこもりの弊害が……)


その様子は猛獣の檻に入れられた哀れなうさぎのようで、周囲から向けられる視線にギブアップ寸前であった。

そしてクラスの反応はというと……


「キャー!!ものすごいイケメン!」


「まって芸能人かモデルの人!?アイドルですらあんなイケメンいないよね!」


「はわーー!!」


「え、こんなにかっこいい人と同じクラスなの!?うれしすぎてやばい…」


「おいおいやべぇよ、俺達男子の立つ瀬がねぇよ……」


「みろよ、クラスの女子みんなあいつに見とれてるぞ…」


「ちくしょー!うらやましすぎる!」


クラスの女子のほとんどが彼に見とれ歓喜し、男子からは絶望や羨望、嫉妬のまなざしが向けられる。


(ちょ、めっちゃ目立ってるんだが…胃がキリキリしてきた……ああ、家に引きこもってゲームしたい……)


彼自身は引きこもってゲームばかりしており、世間の自身に対する評価は全くと言っていいほど気にしていなかったため、こうも注目をあびると彼は嬉しさよりも吐き気が圧倒的に上回っていた。



(あぁ、無事でいられるかなぁ…俺。)



こうしてゲームは最悪の気分で幕を開けることとなった。







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