オープニングその2
さてと…じゃあやるかな。」
そういって数時間寝て1時間ほどテレビを見たアーサーは、端末で【起動アプリ:カグヤ】を開いた。
ちなみに先ほどテレビを見ていたら、その内容のほとんどが例の難易度SSSSSのことか俺のレアアイテム入手についてだった。
《今回コチラの神楽上公園周辺のエリアで史上初の難易度SSSSSのゲームエリアが確認されました。
コチラの開始条件は、難易度SSSのレアアイテム3つ以上の所持または難易度SSSSをクリアした経歴がある者とされています。
これにより、プロゲーマーで現在こちらに挑戦できる方は現在総合1位で数時間ほど前に難易度SSS5か所のすべてのレアアイテムを入手したばかりのアーサー選手のみとされています。
果たして彼はこのゲームに挑戦するのか、彼の今後の動向に注目が集まっています》
《今回の件に関しまして、どうお考えですか?》
女子大学生《私はアーサー様の大ファンなので、もし彼が敗けてしまったらと心配な一方で、アーサー様が華麗に攻略してくれるのではという期待があるのもたしかですね!》
20代会社員男性《やっぱりアーサー様の動向が気になるのも確かですが、それより一体SSSSSの中身はどういったものなのかっていうのも気になりますね。》
《このように世界中の人々が彼の動向に注目を寄せる一方で、難易度SSSSSが出現したことを記念して、この居酒屋では___》
(……ふう。案外緊張するもんだな。)
改めてゲームの内容を確認して、緊張をほぐすように息を吐いた。
難易度SSSSS 危険度???
現実での死亡アリ
(死亡条件:残機30の消失また期間までにゲームをクリアできなかった場合。
なお、ゲーム内での死亡、ゲームのミッション達成条件を満たせなかった、?????、また殺害してはいけない人物を殺害した場合、残機の消失とみなします。)
途中退場不可(ある条件を満たすと一定期間可_条件はミッションを1つクリアするごとに一定期間のみ起動アプリで一時的に現実世界に帰還ができる)
【?????】??? [ゲームクリア条件:?????]
<挑戦条件:難易度SSSのレアアイテム3つ以上の所持または難易度SSSSをクリアした経歴あり>
〔報酬:100億ドル〕〔報酬アイテム:不明〕
といったものだ。
本来【】に入るのがゲームの題名、その横がゲームの種類である。
(しかし???しかねぇな、SSSSですら危険度以外は表示されてたんだけどな…)
ちなみに危険度とは、難易度とは別のもので、痛覚の有無_ゲームの残酷表現の度合い_ゲームの仕様などを加味して表されたもので、
たとえ難易度が高くても危険度が低ければただ単に難しいだけだったり、逆に難易度が低くても危険度が高ければ難易度以外の障害が大きくなる。
報酬金は難易度よりも危険度にひっぱられやすいので、危険度の高いクエストを好き好んでやる人も多い。
報酬金の違いは、例えば難易度がSで危険度がCならば5000ドル。難易度がSで危険度がSならば20万ドルぐらいに跳ね上がる。
報酬金が多すぎないかと思う人も多いだろうが、第一難易度S以上または危険度A以上をクリアできる人はほとんどいないので、これでも少ないくらいである。
ちなみに危険度に最も反映されやすいのが現実での死亡アリである。
これは名前の通りある条件を満たしてしまうとゲーム内での死ではなく現実世界での死亡となってしまう。つまりゲームで死ぬだけなら復活してやり直しができるが、現実世界で死んでしまうとそこで人生が終わってしまう。
難易度F~Aにこの条件は滅多になく、Sですら半々といったところ。ちなみに難易度SSSは5つあるといったが、すべて例外なく現実の死亡アリがある。
つぎに途中退場不可だが、これも名前のとおりである。
これは現実の死亡よりも出現頻度は少なく、ほとんどの場合設定されている時は現実の死亡とセットで設定されている。
基本ゲーム内で食べるご飯などだけでも生きていけるため、やろうと思えばゲーム内で一生を終えることもできる。
でも、たまにはやっぱり現実世界には帰りたいと思うのはしかたのないことである。
しかしこの条件が付いていると、一時的な帰還を除いてゲームをクリアするまで一切途中退場ができないのだ。
ちなみに一時的に帰還して現実にいる間に期間が終わると、強制的にゲーム世界に戻される。
あと難易度SSSは全部途中退場不可だ。
(さて、問題はステータスやアイテムがどれくらい引き継がれるかなんだよな…
俺の予想としては難易度を高く設定してあるしほとんど引き継げると思うが…)
ステータスとは、HPや攻撃力などおなじみの能力値、また自動HP回復などの自動スキルや魔法などの自発スキルなどの総称である。
ただ、これが関係しないゲームも多く、FPSや格闘ゲーや対人ゲーム系などはほとんど関係しない。もろに関係するのは難易度の設定されているゲームだけである。
代わりに現実での能力が関係するものや、能力は固定で技のみで競うゲームも多い。
現実の能力はいわずとも筋肉量や瞬発力などで、これはゲームをやっていれば自然と増えていくものなので間接的にかかわっているとはいえる。
能力値はいわずともわかるだろうが、自動&自発スキルは共通スキルと限定スキルがあり、
共通スキルは現実世界でも使えるスキルで、限定スキルはRPGなど特定のゲームで作用するものである。
自動スキルは文字通り自動で発動するスキルで、発動のON/OFFも切り替えれる。
自発スキルはMPを消費して発動できるスキルである。能力値でもMPに限っては共通の能力値と言える。
(あとはどんなアイテムが使えるかが重要だな…それ次第で難易度は天と地ほどの差ができるし。)
そうして彼は出かけるために、寝間着から外行きようの服に着替える。
(ゲームエリアが近くて助かった。てか、外に出るのマジで何年ぶりだ・・・)
そう、彼は根っからの引きこもりであり、外出自体も家からゲームワールドにアクセスでいるようになって以来である。
ゲームワールドに挑戦するには本来はわざわざゲームエリア内に行ってアプリを起動しなければいけないのだが、家から世界中にあるゲームエリアにアクセスできるようになるアイテムがあり(以下テレポーター)、それさえ持っていればそのアイテムのレア度以下のゲームに対して、アプリを使うだけでゲームエリアに入らずともその場からレア度内の好きなゲームにアクセスできるようになる。
そして、彼はレア度SSSSの移動アイテムを持っているため、難易度SSSSSは歩いて向かうしかなかった。
ゲームエリア自体は海外に行かなければやることできないゲームも多く、こういったアイテムは非常に人気である。
Aまでのレア度のものであれば比較的簡単に手に入り、ネット販売で安価で売られていたりする。レア度Aで10万円くらいである。
しかし、S以上となると値段が跳ね上がるため、なかなか手が付けられなかったりする。
彼はゲームワールドに手を出し始めたときはSレアのテレポーターしかなく、残念ながら日本に住む彼は海外にしか難易度SSSはないため、
自宅から難易度SSSにアクセスするにはSSSレアのテレポーターが必要であり、まずレア度SSのテレポーターを手に入れるためにSを周回しまくったりしていた。
ちなみに結果としてSSSを飛ばしてレア度SSSSのテレポーターを入手するのだが、それはまた別の機会にお話ししよう。
あと難易度が設定されてないゲームについては危険度がその役割を担う。
(さて、ここから電車で20分のところか。まじで近すぎて、タイミング的にも俺用に用意したみたいになってんな)
彼は日本の東京某所に住んでいるため、距離的に神楽上公園は非常に近かった。
(なんか外出るの緊張するな……。ふぅ……よし!いくか!)
そうして彼は数年ぶりとなる外の世界に足を踏み入れた。
「あちぃ…溶けてなくなりそう……。外ってこんなに暑いんだな…」
初夏の日差しを浴び、駅を降りてからゾンビのようにふらふらとした歩きで神楽上公園に向かっている彼こそが17歳のアーサー王こと【近江まさや】である。
さまざまなゲームで功績をあげ、最も名の知れたゲーマーでもある彼。
しかしその実態は、小学生から家にこもり続けているプロの引きこもりであり、ゲーミングチームにも所属しておらず、友人と呼べるような人物も1人しかいないボッチゲーマーでもあった。
しかし彼自身自分の身の周りのことを話すことはないし、動画配信やSNSなど間接的に交流することもないので、その事実を知る者は唯一の友人であるランキング2位の【ユータ=チャーレック】のみである。
そんな有名人が歩いているというだけあって、周りから
「ねぇ!あれアーサー様じゃない!?」
「キャー!本物!?外で発見されること一回もなかったし、これってすごいレアだよね!」
「うんうん!この辺に住んでるなんて知らなかった!」
「でもアーサー様、すっげぇ苦しそうじゃねぇか?」
「ばか、あれはアーサー様のルーティーンだよ!あの歩行術、一切のよどみもねぇぜ!」
「あれか、唯一彼を知っていると言っているスタイリッシュ王子の異名を持つユータ様がいってたやつか」
「そうそう!なんでも彼は難易度の高いゲームに挑むときはいつもルーティーンを欠かさないんだって!」
などと好き勝手言っているが、彼は神格化されただけのただの引きこもりであった。
(はぁ…さすがに外出4年ぶりとなると、結構体にくるなぁ…)
そんなこんなで歩いてしばらくすると、目的地である神楽上公園に到着する。
彼がここまで来た理由はここに目的のゲームエリアが出現したからである。
難易度SSSSまでは彼の所持するアイテムのおかげで家からでも挑戦できるが、SSSSSのみは現地のゲーム起動エリアに足を運ぶ必要があった。
現在神楽上公園は解放されているものの、初のSSSSSが出現した場所であり、その場所は人でごった返しており、屋台まで並んでいた。
(なんだあの人数……勘弁してくれや……)
彼は渋い顔をしながらもその場所へ向かっていく。
そうすると周りの人々はアーサーが来たことに気づき、「あ、見てみてアーサー様よ!」と声が上がり、皆の顔がこちらに向く。
「本物だ!」「キャー!すごーい!」「まじかまじか!」「頑張ってくださいアーサー様!」などと声が上がる。
そして彼が人の塊に進むと、人々は自然と道を開けた。
彼らも彼に近寄りたいだろうが、皆が気を使って控えていた。
そして彼は神楽上公園に足を踏み入れ、アプリを起動した。
難易度SSSSS 危険度???
現実での死亡アリ
(死亡条件:残機30の消失また期間までにゲームをクリアできなかった場合_ゲーム内での死亡、ゲームのミッション達成条件を満たせなかった、?????、破壊してはいけないものを破壊した、殺してはいけない人物を殺した場合、残機の消失とみなします)
途中退場不可(ある条件を満たすと一定期間可_条件はミッションを1つクリアするごとに一定期間のみ起動装置で一時的に現実世界に帰還ができる)
【?????】??? [ゲームクリア条件:?????]
<挑戦条件:難易度SSSのレアアイテム3つ以上の所持または難易度SSSSをクリアした経歴あり>
〔報酬:100億ドル〕〔報酬アイテム:不明〕
といったものが表示された。
(難易度が設定されているってことはおそらくRPGかアクションゲームらへんだろうな…)
そう
普通対人系やそれに近いゲームは危険度が設定されていても難易度が設定されていないのがふつうである。
FPSでも危険度によって痛みや現実の死亡または後遺症がのこるなど違いが生まれる。
そのかわり勝利時の報酬が高いため血気盛んな人々や裏社会の賭博などではそれがあえて使われたりもする。
ただしボードゲームなどのゲームは危険度すら設定されていないことがほとんど。
つまり難易度がある。ということは用意されたゲームは戦闘がおこるという間接表示でもあり、おのずとそうなってくる。
(まぁそういう系は俺は得意だし、なんとかなるかもな。)
そう、彼はアクションや攻略もの、FPSなど身体能力を駆使したものが得意であり、それらの種類のゲームが来れば、彼にとって紛れもないアドバンテージになる。
もちろんそれ以外のゲームも名を残すほどには得意であり、そちらが来ても多少不安が残るがあまり問題ではないだろう。一応彼にも苦手なゲームは2種類あるが、それが来ることはまずないだろうと考えていた。
(それにしても少し緊張するな、この感じはいつ以来だろうか……)
そうして彼は端末をスクロールして<ゲームを開始する>のボタンを表示させると、
気持ちを整え、ゆっくりと深呼吸をした。
(あいつには心配させちまったが、やっぱ俺はゲームが生きがいだ。どんなゲームが来ようとも、おれは後悔しないだろう。)
そして体を引き締めた彼は、<ゲームを開始する>のボタンに手を伸ばした。
そしてそれを押した瞬間、辺りが暗転し、先ほどまでいた公園は跡形もなくなっていた。
代わりに、自分の目の前にポップが現れ、ゲームの内容について書かれていた。
そう、ゲームを起動すると、辺りが暗転して、そしてしばらくするとゲーム世界に放り出されるという流れである。
ポップには、端末に表示されていた内容よりも少し詳しく書かれている情報が表示されるようになる。
そして先ほど???で隠されていた部分が表示され、しっかりと確認できるようになった。
難易度SSSSS 危険度SS
現実での死亡アリ
(死亡条件:残機30の消失また期間までにゲームをクリアできなかった場合_ゲーム内での死亡、ゲームのミッション達成条件を満たせなかった、学校を退学また留年した場合、殺害してはいけない人物を殺害した場合、残機の消失とみなします)[30/30]
途中退場不可(ある条件を満たすと一定期間可_条件はミッションを1つクリアするごとに一定期間のみ起動装置で一時的に現実世界に帰還ができる)
【ジョン=ヨハネスの最終審査】恋愛ゲーム [ゲームクリア条件:すべてのミッションの達成0/6]
<挑戦条件:難易度SSSのレアアイテム3つ以上の所持または難易度SSSSをクリアした経歴あり>
〔報酬:100億ドル〕〔報酬アイテム:不明〕
こう表示されていたわけだが、いくつも気になる表記があった。
まず、ジョン=ヨハネスとは、【創造結晶:クリエイティブクリスタル】の存在を証明した人物であり、
ゲームエリアやゲーム起動装置などの生みの親でもある。
そんな彼の名前がどうして題名に表記されているのか。最終審査とはなにか。
そして危険度SSとあるが、これもゲーム史上初であり、Sとどれくらいの差があるのか。など。
いろいろ気になる表記があるのだが、彼はある一点のみに注意が行っていた。それは……
「れ、恋愛……げーむ……?」