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おすすめ
私は他者に何かを薦めるということをしない。
相手の嗜好を事細かに把握して、最適なものを薦めるという高等技術がないからだ。
学生の頃、知人に小説を薦めたことがある。
薦めるくらいなので、私にとっては面白いと思える小説だった。
だが、結果として相手から返ってきた感想は、
「つまらなかった」
「買うんじゃなかった」
「即行で売った」
だった。
正直、自分の好きなものをディスられたことに対してはショックではなかった。
人の薦めるものを受け入れられない経験は自分自身がよくしているので、しょうがないよなあ、と納得するのも容易かった。
ただ、好みに合わないものを買わせてしまったのは罪悪感になった。
薦められた物を買うのも読むのも相手が決めることなのだから気に病む必要はない、と慰めにもならないことを言う者もいたが、薦めた以上、やはり大なり小なり責任はあるだろう。
自分の好悪だけで、相手の価値観に頓着せず軽率に何かを薦めるものじゃない、忖度出来ない人間が手を出していい領域じゃない、と痛感させられた。
以来、本に限らず、食べ物でも道具でも方法でも、何かを人にすすめることはしていない。




