酔っていたから、は未だに世の強力な免罪符だ。
私はとにかく酔っ払いが嫌いだ。
身内に酒癖の悪い者がいたからというのもあるが、嫌な運でも持っているのか、質の悪い酔っ払いに遭遇する率が高い。
ただ、決定的に嫌悪するようになったのは、会社に入社直後に女性社員が開いてくれた歓迎会での不快事が原因だ。
女性社員の誰かの知り合いらしい相手(その人物は社員ではない)の自宅?で食事会となったのだが、女性社員達が酒を飲まない私に寛容なのに対し、彼女らの内心の不満の代弁のつもりなのか、単純に個人的な見解なのか、その人物が散々に面と向かって悪態をついてくれた。
酒を飲まない奴は馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ∞。
体裁は一応、飲まない人間全般に向けているようだったが、酒を飲まないと言った私を目の前にして特定個人じゃない、の態を取られてもな。
とどめは、出されたお吸い物に結構大きなビニール片が混入していたこと。勿論私の分にだけ。故意か偶然かは確かめようもなかったが、仮にも飲食店を経営している人間がやるか。しかも都合良く気に入らないと悪態をついている私の物にだけ?(ビニール片は口内に吸い込んだ後に気付いたのだが、入れた当人はともかく、その友人?である先輩社員達の前でこれ見よがしに吐き出すわけにもいかず黙って飲み込んだ。視認せずにビニールと分かったのは椀の中にもまだあったからだ。一応腹は壊していない――そういう問題か? その程度の問題だと言われそうな悪態っぷりだった)。
客そっちのけで既にいいほど酔っていたにしても、いや、だからこそか、そういう人間に人の主義をとやかく言われたくない―――という経緯で酔っ払いが大嫌いになった。こういう連中と同列になりたくないから、以前にもまして酒は断固拒否するようにもなった。
酒好きの人間からは酒に罪はないだの、人生損してるだの言われるが余計なお世話である。
酒の良さとやらが分からなくとも分かる人間より劣っているとは思わないし、飲まないからといって損をしているとも思わない。
まあ、そもそも今は持病の関係でカフェインとアルコールは駄目だと医者に言われたので飲めないのだが。
酒好きにはコレを言っても尚押し付けてくる人間もいれば、理解を示しているようで嘲笑混じりの憐憫を露骨に見せる者もおり、本当に余計なお世話だ。