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吐出口  作者: 鈴木
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桜 【虫】

 私にとっての桜は、儚く美しいものというより、決して下を通るべからずな忌まわしく悍ましい場所のイメージが強い。

 何故か? 毛虫の巣窟だからだ。

 通っていた小学校の校庭に桜が何本も植えられており、その下は丸太を使った遊び場になっていたのだが、これが葉桜の季節になると毛虫がぼとぼとと容赦なく降り注ぐ気持ちの悪い場所に早変わりしたのだ。うっかり下へ入ろうものなら、頭や肩先、下手をすると襟元から背中へ毛虫が入り込んで鳥肌ものだった。典型的なワルガキが駄菓子の袋にその毛虫をいっぱいに詰め、女子に投げつけるなどという嫌がらせをしていたものだ。

 開花の時期は短い。しかも3月下旬から4月上旬は春休みや新学期になったばかりのあれこれであまり学校の校庭で過ごすということがない(少なくとも私はそうだった)。それに対して葉桜になる頃は新しいクラスでの生活も落ち着き、校庭で遊ぶ余裕も出て来る。そして葉が生い茂り、虫たちが生を謳歌する期間は開花時期より断然長い(個々の虫の寿命がどうこうではなく虫全体としてである)。必然、桜の木の下は死体ならぬ生きた虫やら虫の死骸やらで埋め尽くされ、その記憶が何十年経とうと強く残っている為に、私の中での桜は毛虫だらけの近寄るべからずな忌避空間に認識されてしまっている(虫達よ、冒頭から酷い表現ですまん。けれど、生理的に受け付けないものは受け付けないのだ。特にイモムシ系!)。正直、開花時期でもそばには近寄りたくない。

 花を美しいと思う感性も一応持ち合わせているので、遠目に見たり写真で楽しむことくらいはするが、それも樹下に人間がいない状況限定である。

 桜はどうしても花見、イコール唾棄すべき酔っ払いの巣窟なイメージが付き纏う。

 酔っ払いでなくとも自然物を観賞するのに、同空間に人間は要らない。なので、自然をバックに自撮りするなどということもしない。



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