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吐出口  作者: 鈴木
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化粧

 私は小学生の時にやった巫女舞の装い以外で、まともに化粧をしたことがない(あれをまともな化粧に含めていいものかどうかはともかく)。

 理由はやってもおかめにしかならないというのもあるが、一番の理由は病気だ。何を塗っても皮膚に異常が出るか、元々異常があってまともに塗れないか。

 大学を卒業し、就職した先では、幾ら何でも化粧はしなければならないと、よりにもよって私の病気のことを一番に知っている筈の母親に言われた時は、嫌な "世の常識" だと苦々しく思ったものだ。

 結局、化粧水は染みるヒリヒリする、乳液は直ぐに乾いて皮膚がボロボロするから(頻繁に塗り直すのでもなければ)意味がない、ファンデーションは皮膚のあちこちが剥がれ落ちやすく、斑状態を際立たせるだけでよりみっともなくなる、などなど、相変わらず化粧に意義を見出せず、初出勤時には "恥知らずにも" すっぴんで出社していた。塗っていたのは異常の出ない保湿クリームくらいだ。

 けれど、それで咎められたことは一度もなかった。裏ではともかく、これ見よがしな陰口を叩かれたことも、面と向かって眉を顰められたことも、「女は化粧をするのが当たり前」なる常識(・・)を押しつけられたこともなかった。

 そういう点では、良い職場だったのだと思う。まあ、客と直接関わる仕事ではなかった上に職場の皆が私の病気のことを知っていたからというのもあるのだろうが、客商売でなくても、病気のことを知っていても、化粧しろと言う人間はいる。その病気でも出来る化粧品はあるだろうと。正直、もう何十年も化粧をせずに過ごしてきたので、今更そういう化粧品があると言われても煩わしいだけでしたいとも思わないが。

 そういえば、化粧品を探しに店へ行った時の店員の対応は二分したな。病気の存在を正直に話して、それでも使って大丈夫かと聞いてみれば、医者に相談した方が良いと慎重に言う者と、その病気でも大丈夫だと容易く受け合う者と。どちらが信用に値するかは言うまでもないだろう。販売員としてどちらが理想的かはさておき(売り上げ至上主義なら前者は駄目店員で、リスク管理を重視するなら最悪訴訟になりかねない案件を回避した優良店員?)。





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