敗者復活戦-2
「ウアウ!!」
試合開始と共に、5人の冒険者がいっきに距離を詰めて、武器を振り回してきた。その動きは人間のものではなかった。目は赤く光り輝いていた。5人が理性を失っているのは明らかだった。
キン!
鈍い金属音が広間に響く。突然の攻撃だったが須磨太郎はとっさに盾で攻撃を防いだ。しかし、いくつかの攻撃は被弾してしまう。
「《パーフェクト・アーマー》」
自身の身体を覆う緑色のアーマーを具現化して、攻撃を防ぐ。
5人の狂人は素早く人外の動きで須磨太郎に切り付けるが、攻撃は須磨太郎にあたると弾かれた。だが、5人の猛攻は止まらない。
ビキビキ。
アーマーにひびが入り始める。須磨太郎は覚悟を決め、攻撃に移る。
一人のロングソード使いが大振りするのを見て、それを盾で思いっきりはじきパリィする。サイドからは斧使いと双剣使いの二人が切り付けてきて、ダメージを負うがそれを無視する。
「うおおお!」
武器をはじかれ隙ができた男の喉元に須磨太郎は躊躇なく短剣を突き刺す。血が噴き出し、須磨太郎の顔を血で染まる。男は最後の一撃を須磨太郎に食らわせようと動く。が、須磨太郎は冷静に首元に指している短剣を両手で掴むと、それを思い切りひねる。
グニョリと男の首が変形して、男は絶命した。
「《マテリアル・シールド》」
背中から大振りの攻撃が来ることを直観的に察知して、魔法を発動させる。須磨太郎の読み通り、大剣を一人が振り下ろすが、半透明の盾によって弾かれる。
須磨太郎は殺した男から短剣を抜き取ると、そのままの勢いで回転しながら、右側にいた双剣使い切りかかる。
双剣使いは須磨太郎の攻撃を2本の剣で受け止めはじく。
電撃は通らなかった。つまり、相手の武器のランクは高い、そう須磨太郎は判断をする。
須磨太郎は左手の盾を少しだけ大きくしつつ、の淵に刃がある形に変形させる。そのままノールックで後ろに腕を引くと、丁度斧を振り下ろした男の腕が盾の淵に当たり、すぱりと両腕がぶっとんだ。
両腕が飛んでも男は戦意を喪失せず、須磨太郎の首筋に噛みついてきた。男はそのまま吸血をする。須磨太郎が振り払おうと短剣を男に突き刺そうとした時には既に男の両腕は再生していた。
「吸血鬼か!」
須磨太郎が男の心臓を狙って短剣を振り落とした時、男は回避行動をしていたが、運悪く須磨太郎の攻撃が新しく生えた左手首にヒットし、血が噴き出す。
男は残った右手首で斧を拾おうとするも、飛ばされた斧の柄は反対側を向いていた。
須磨太郎は背を向けた男の心臓部を正確に狙って短剣を突き刺し、直ぐに抜いた。男が倒れるのをしり目に、後ろを振り向いて、双剣使いの攻撃を盾で防いだ。
だが、同時に攻撃してきた大剣の攻撃までは防げない。攻撃に咄嗟の回避をして致命傷は回避するが、深い傷ができる。しかし、傷はできてから直ぐに再生を始めていた。
これらの攻防を見て、ボネルフェルトは呟く。
「やはり、一筋縄ではいかないか」
先陣を切った5人の冒険者は吸血鬼のなれの果てだった。ボネルフェルトは昨日の事を思い出す。
***
「あの質問なんですけど」
作戦会議の最中、冒険者の一人が口を開いた。
「もし俺たちがあなたの血を吸うとどうなるんですか?」
男は凪に質問をした。
「吸血鬼になったばかりの者はまだ血が安定していない。そんな状況で私たちの血を吸えば、理性は消え、血を求めるだけの怪物になるわ。私たち吸血鬼は高貴な種族よ。理性の無い化け物とは違う」
「その化け物になりたいといったらどうしますか?」
「あなた随分愚かなのね。そんなことをしたら暴走して、ここにいる周りの仲間を攻撃し始めるだけよ」
みゆりが言う。
「そうとは限りません。我々にはボネルフェルトさんがいます」
「あぁ。そういうこと。いいわよ。試してみる?」
凪はそういうと鮮血の紅玉を展開する。
「じゃあまずは吸血鬼になってもらわないとね」
みゆりが男に近づく。
右手で左手の指を軽くひかっくと傷痕ができ、血がにじむ。それから左手に力を入れると血管が浮き出て爪が伸びる。みゆりは左手を男の心臓に突き刺す。数秒ほどで手を引き抜くと、男の傷は徐々に塞がっていく。それと同時に男の犬歯が鋭くなり、瞳が赤く充血する。
「ゆっくりと呼吸しなさい」
邪眼の指示に従って、男は深呼吸をする。男の眼の色は正常に戻っていき、男は吸血鬼となった。
「さてと。どう吸血鬼の身体は? 力がみなぎってくるようでしょう? 血が吸いたくなるはずよね」
「確かに血が飲みたいです」
「ほら、手を出してみなさい」
男は手で器を作る。凪は鮮血の紅玉をその上に持っていくと、血を垂らした。
「飲みなさい。これであなたは吸血鬼でも人間でもなくなれるわ」
「ボネルフェルトさん、お願いしますよ。もし僕が言うことを聞かないと判断したら容赦なく殺してください」
ボネルフェルトは頷いて武器を構える。周りの冒険者も距離を置く。
男はゆっくりと口元に手を持っていき、血を飲み下す。
「うあ! ああああああああアアアア!」
焼けるような胸の痛みが男を襲う。男の目は再び赤く充血に、筋肉が隆起し、骨がボキボキと形を変えていく。
「血ガ! 血ガホシイ!!」
男は頭を抱えながらのたうち回る。
「アアアアア!!!」
男はボネルフェルトを睨むと、襲い掛かる。
「止まれ!」
ボネルフェルトが叫ぶ。すると男の動きが止まる。
「いいぞ。指示は聞けるか? 武器をもち、構えるんだ」
ボネルフェルトの指示に男は頷くと武器を持つ。
「よくやった」
男は何かを言おうとするが言葉は生み出せない。しかし、ボネルフェルトに意図は伝わる。
「俺のギフトを使えば暴走した者も制御できる。彼には明日の試合で先陣を切ってもらうことにする。おそらく貴重な戦力になるだろう。彼に続く者はいないか?」
ボネルフェルトの呼びかけに4人の冒険者が名乗り出た。
***
ロングソードの冒険者、斧の冒険者、二人の仲間を失ってもボネルフェルトは冷静を保っていた。やはり彼は一流の冒険者であった。須磨太郎の戦闘スタイルをこのわずかな時間で既に見抜いていた。
再生能力と盾を活かし、致命傷を避けながら防戦をしつつ、チャンスができれば多少の無理をしてでも確実に殺しにかかる戦法。
シンプルだが、それゆえに攻略方法が限られてくる。見かけだけをみればボネルフェルト達が押しているようにも見えるが、それは違った。
須磨太郎の再生能力は異常だった。とどめを刺すには刹那の時間に致命傷を与える必要がある。しかし、冒険者の攻撃は決め手にかけ、須磨太郎は着実にボネルフェルトを削っていた。
「コードBだ」
ボネルフェルトたちは次の作戦に移った。全てはまだ想定通りだった。
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