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敗者復活戦-1

 

 ――ヘルヘイム帝国・大広間――


 広間には49人の冒険者がいた。彼らのうち半数以上が既に人をやめている。吸血鬼になった者、屍食鬼になった者、人間のままいる者。

 それらを統率していたのは、冒険者のレジェンド、ボネルフェルトだった。ボネルフェルトは【カリスマ:Lv5】のギフトを持って生まれた天性のリーダーだった。

 彼のギフトにより、メンバーは以心伝心の動きができるだけでなく、そのステータスは格段に強化されている。その上、彼のギフトはそこにいた者の死への恐怖さえ消していた。

 ある種の集団洗脳を可能にするこのギフトは、かつて存在していた独裁国家の大統領が持っていたともいわれている。そんな一歩間違えれば危険なギフトを然るべき方法で使いこなすボネルフェルトこそ冒険者の頂点であり、伝説の存在であった。


 ボネルフェルトとタッグを組むルイーゼも彼に劣らず強かった。妖狐族と深い関係のある特殊なギフト【魔力増加:Lv5】を持って生まれた彼女も冒険者の中では間違いなく一番強い魔術師だった。

 火、氷、雷の三属性の攻撃魔法を状況に合わせて打ち分け、超火力で凶悪な敵を焼き払うことができた。また、彼女は魔法の複合属性について浅はかながら研究を始めており、新たな魔術師への一歩を踏み出す存在でもあった。


 ボネルフェルトとルイーゼ、二人は元々吸血鬼狩りを目的とする冒険者だったが、今の彼らはその肩書を既に捨てた。ボネルフェルトは司令塔、ルイーゼはキャスターへとジョブを変更し、種族もプライドを全て捨て、人間をやめ、あれほど憎らしかった吸血鬼へと変わった。

 吸血鬼の専門家である彼らは新たな体の使いかた、人間ではできない戦い方の理解も速かった。それらすべてをボネルフェルトは仲間に伝え、集団は更に強くなった。




「短期決戦で終わらせる。作戦は昨日話した通りだ」

 ボネルフェルトが最後の確認をする。

「俺たちの中の一人でも生き残れば俺たちは全員帰れる。自らの命よりも勝利を優先しろ」


 ボネルフェルトはルイーゼの方を見る。ルイーゼはボネルフェルトに頷く。

 ルイーゼは今回の戦いで禁術を発動させるつもりでいた。死んでも蘇生してくれる約束がある。発動のリスクはない。


「来たぞ」

 ボネルフェルトの一言で集団に緊張がはしる。


 扉が開き、一人の男が現れる。


「思ったのと違うな」

 冒険者の一人が呟く。


 それは多くの人間が感じたことだった。ボネルフェルトたちは巨大な怪物、もしくは人外に近い狂人が敵だと思っていた。だが、盾と短剣を構えた男は視たところあまり強くはなさそうだった。


「気を抜くな」

 ボネルフェルトが叱咤する。


 冒険者たちは武器を構えて、これから始まる戦闘に備えた。




 ***



 須磨太郎は覚悟を決め大広間の前の扉に立っていた。目の前には2人の美人なメイドがいた。


「そろそろ試合が始まります。入場してください」

 メイドは大きな扉を開く。須磨太郎の目には中の光景が映る。


 これから殺す者たちは既に武器を構え、広間の中央に待機していた。人数はあらかじめ聞いていた通り49人。奥にいる人間の顔は見えなかったが、手前のメンバーだけを見ても、それぞれが充実した防具身に着け、長年の戦いで養った玄人のオーラを放っているのがわかる。


 須磨太郎は入場をする。すると、広間全体が見渡せる2階の突き出たスペースにカインズとエルニクスが現れる。

 カインズはゆっくりと赤色の椅子に腰かけた。エルニクスはその隣で待機する。エルニクスの隣にはナターリアとリゼが手の前で手錠をさせられたまま立っていた。二人は手すりまで身を乗り出して須磨太郎に声をかける。


「「須磨太郎様!」」


 二人の声に反応して須磨太郎は上の階を見上げる。


「「頑張ってください!」」


 二人の返事に応えるように、須磨太郎は盾をかかげた。



「さてと」

 まだ戦闘開始の合図は出されていなかった。だが、既に須磨太郎は先手を打つことを決めた。


「【星の王子さま】」

 須磨太郎はギフトを発動する。須磨太郎の目が黄金に輝く。そして通常は見ることのできない「運」を視る。




「カインズ様、彼はギフトを発動させました」

 エルニクスがカインズに耳打ちをする。


「見逃していた。よく気が付いたな」


「えぇ。観察は私の取柄ですから。それで、どうしますか? 一度解除させますか?」


「いや、その必要はない。正々堂々と戦う必要なんて初めから無いんだ。少しでも勝利に近づくためにどんな手も使う、素晴らしい態度じゃないか」


「わかりました」


 エルニクスは立ち上がり、ナターリアとリゼを後ろに下がらせると、声をあげた。

「皆の者! 我らが皇帝カインズ・ジョージ・オーウェル様にひれ伏したまえ!」


 エルニクスの命令により、須磨太郎を含め、集まった者たちはみな、自分の意思で膝をつき礼をした。


「顔をあげ、武器を構えよ!」


 この合図により、元の態勢にもどる。


「今日行われるのは紛れもなく、死者同士の争いである。お前たちは一度その命を失い、カインズ様により再び生を与えられた!

 その感謝をこの場で示してみせろ! カインズ様は弱者を好まない。勝つ者が正義で、負けた者が悪、これは世界の唯一の理である。

 この戦いで勝利した者は全てを取り戻し、敗北した者は全てを失う。だが、恐れることはない。お前たちは既に一度全てを失っているのだから。全力を尽くして、死闘に挑め。私からは以上だ。試合開始の合図はカインズ様が行われる」


 エルニクスはそれだけ言うと、再び席に戻った。


 椅子に座ったまま、カインズはギフトを発動する。

「【 1 9( ナインティーン) 8(  エイテ) 4 年(ィフォー) 】」


 闇のオーラが広間を一瞬で包み込む。

 カインズは全ての人間に同時に命令を与える。


「30秒後に試合を始める。それまでお前たちの身体の自由は縛らせてもらう。30秒ぴったりに身体の拘束を解除する。それがスタートの合図だ」


 カインズは魔法を発動する。

「《カウントダウン》」


 魔法陣が空中に生成され、その外側をなぞるように虹色の光がゆっくりと回る。これが一周した時に、試合が開始される。



 須磨太郎は恐ろしいほど冷静にその時を待っていた。

 ボネルフェルトは使命感を抱きながらその時を待っていた。

 ルイーゼは希望を胸にその時を待っていた。

 エルニクスは期待と共にその時を待っていた。

 二人の少女は不安に耐えながらその時を待っていた。



「時間だ。試合を始める」


 カインズが身体の動きを許可する。


 死者たちの敗者復活戦が始まった。



4章中編もあと少しで終わります。最近、ブクマが増えていて嬉しいです。あと少しで100に届きそうですね。


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