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決戦前

 

「明日の最終試験の内容を説明します」

 エルニクスが須磨太郎に言う。


 エルニクスが予定していた稽古はガグとの戦いを最後に終了していたが、須磨太郎の強い要望でその後も続けられていた。そして、とうとう最終試験の時が訪れた。


「ついにか。ガグを100体でも用意するのか?」

 須磨太郎はそんな軽口を叩く。



「いいえ。あなたには明日49人の冒険者と戦ってもらいます。彼らを全員殺すことそれが最終試験の内容です」

 エルニクスは自身のギフトで50人の冒険者のうち一人が食料として犠牲になることを予見していた。故に数は49である。


「そうか......」

 須磨太郎は考えてしまう。明日ついに自分は人間を殺すことになってしまうのだと。


「彼らは人間として死んだあと、屍食鬼として数日を過ごし、人間として蘇生させられ、吸血鬼としてあなたと戦うかわいそうな者たちです。彼らはあなたに勝てば解放されるという最後の希望を頼りに戦います。あなたには無関係な話ですが、彼らにも家族や恋人が待っているでしょう。彼らの最後の希望をあなたは踏みにじらなければなりません。それはあなた自身の最後の希望のため、あなたの大切な人のためにも必要なことです。彼らを殺す覚悟はありますか?」



 既に須磨太郎の心は決まっていた。

「ある」


 須磨太郎の返事にエルニクスは頷く。

「そうですか。それはよかったです。では詳細を説明しましょう。まず相手のレベルですが、彼らは元々手練れ冒険者です。その上、強力なジョブと種族、装備を与えられそのポテンシャルが最大限発揮できるように強化されています。

 盾とギフトのないあなたが戦えばまず負けるでしょう。手加減をしている余裕はありません」



 須磨太郎は頷く。


「この実戦であなたが負けた場合、あなたの自由意思を奪われ、ギフトとスキルを使用するためだけの駒として扱おうとカインズ様は考えています。当然、あなたの仲間や各地の施設にいる奴隷たちは不要な存在となります。直ぐに殺されることでしょう。つまり、彼女たちを救うためにあなたは全力を尽くさなければなりません。わかりますか?」


 再び須磨太郎は首肯する。


 丘の上でカインズが須磨太郎と交わした約束は川霧大河と川霧文香を殺すことのみだった。明らかに約束とは違うことが行われようとしている。

 だが須磨太郎は文句を言わない。元々の約束にほんの些細な条件が加わっただけだとカインズ達は思っているだろうし、自分もそう思っているからだ。

 そもそもの話、インスマスで敗北した須磨太郎には拒否をできるだけの力がない。



「今回の試験の一番のみそを説明します。それは、ナターリアさんと中島さんに観戦をしてもらうという点です」


 それは須磨太郎の人殺しを受け入れてもらうという他に別の意味合いがあった。


「それはつまり、ギフトを使用してもいいということだな?」


 今までの稽古で須磨太郎はギフトを使用しなかった。理由としてはエルニクスから禁止されていたということもあるが、それ以外に使っても意味のある状況が少なかったというのがある。


「はい。そういうことです。あなたは持てる力全てを使い、彼らを殺すのです」


「理解した。今まで俺に剣術を教えてくれてありがとう」


「お礼を言われる筋合いはありません。私はただカインズ様の命令に従ったまでです。ですが、こちらからは是非礼を言わせていただきたい。あなたの成長ぶりは大変興味深いものでした。明日の最終試験は期待していますよ」



 ***


 須磨太郎はカインズから与えられた屋敷に戻る。

 ナターリアとリザと豪華な食事を取り、大きな風呂に3人で入ったあと、須磨太郎はそのまま寝室に移動し、二人は軽く化粧をする。須磨太郎はその間ハーブをふかし二人を待った。バスローブをまとったまま二人が寝室に入り、ベッドに腰かける。

 二人は須磨太郎の様子を伺っていた。須磨太郎が口を開く。


「ナターリア、リザ、俺は明日人を殺さなくてはいけない」


「話は聞きました......」

 ナターリアが言う。


「こんな俺でも嫌いにならないでくれるか?」


「嫌いになるはずがありません!」

 二人は須磨太郎に抱きつく。


「今晩は直接お前たちを感じたい」


「それって」


「あぁ。そういうことだ」


 須磨太郎は旅に連れていく奴隷とはスキンを着けて交わることにしていた。

 だが、今回は違った。何かもを忘れるために二人を直接感じようと思った。妊娠のリスクなんかを考えずにただ獣のように交わりたかった。


「いいですよ。来てください」


 二人はバスローブを脱いだ。





 ***


 ――和の国――


 俺と文香は和の国に滞在しながら数日間にわたり情報を集めた。文香は和の国について調べ、俺は旧ザルバド王国について調べた。

『時計仕掛けのオレンジ』を使い、情報を集めるとなかなか貴重な資料なども収集できた。一番役に立ったのはリザードマンの身体構造などや習性が述べられている学術書で、他には政府に近いものからの詳しい情報も聞けた。バビロンで冒険者をやっていた時に、得られたリザードマンの情報はただ火に強い皮膚を持っているというものだけだったため、他の情報が集められたのはよかった。


 噂話の中で気になったものはいくつかあったが、一番気になったのは緋の目の話だった。

 ザルバド王国では、王族の血を引く者の中で極稀に緋色の目をもって生まれてくる子が存在すると言われている。

 現知事であり、元国王のヌルは妻を10人もっている。そのうち男を産んだのは8人でその8人が王位を争っている。生まれた順に優位は存在するものの、最終的には継承戦の結果で次期国王が決まることになっている。

 第八王子アハトは生まれつきに緋の目を備えていた。緋の目の力は俺自身がよく知っている通り、強力だ。そんな能力を常時発動しているアハトは弱いはずがなく、次期王の座はアハトで確実だろうと言われていた。

 しかし、第一王子アインツがどこからか伝説の七本の一つ煉獄を手に入れると、アハトに決闘を挑み勝利した。奇妙なのはその後の話で、アハトが死んでからアインツの目は緋色になったという噂がザルバド王国では流れている。


 これには『神』と呼ばれる存在が関わっていると言われているがいまいち真相はわかっていない。

 何はともあれ、もう少し情報を集める必要がありそうだ。





次回更新日は木曜日です!


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