最後の稽古 VSガグ
久しぶりの戦闘回です。「ガグ」で検索するとイメージ湧くかと思います!
――ヘルヘイム帝国――
「目。乳様突起。頸椎」
短剣でイメージをしながら須磨太郎は華麗に素振りをする。
突き刺し。柄での打撃。逆手で引くような動き。
「心臓。肋骨。みぞおち」
突き。手首の向きを変えて再び突き。左手の盾で打撃。
「上腕骨。上腕三頭筋。腋窩」
素早い切り。鋭い突き刺し。逆手のまま切り裂き。
「膀胱。脛。アキレス腱」
突き刺して裂くような動き。蹴り。大きく素早い振り下ろし。
「手首。こめかみ。首」
スナップをきかせた切り付け。打ち付けるような素早い動き。えぐり取るような剣さばき。
「素晴らしい。完璧ですね」
かたわらにいたエルニクスが言う。今までの動きは短剣と盾で相手の急所を攻撃するための動きだ。全てエルニクスが実際に人を使って見本を見せ、これらの部位を攻撃するとどのようなダメージが与えられるのかを須磨太郎に教えた。須磨太郎は人を使うことはしなかったが、稽古毎に生々しいイメージと共にこれらの動きを行い、マスターした。
「気を付けてほしいのは、これらがあくまで対人間用のものであるということです」
「どういうことだ? 俺が殺すのは人間だろう?」
「いいえ。そうとは限りません。その可能性は高いですが、そうでない場合もあります」
「俺の『地獄変』みたいなものか」
「少し違いますが、まあそういうことです。身体を怪物に変形させて来る可能性も否めません」
「なるほどな。お前の仲間にそんなやつがいるのか?」
「隠す必要もないでしょう。そうです。リザさんの『山月記』と同じです」
「理解した」
世界樹の落とし子の一人、セバスチャン辰巳は龍の力をその体に秘める。部分的に使用することで感覚を高め、器用な動きが可能になる。ゆえに裏方では武器などの製造を手伝うこともある。だが、その力を全て開放すると、セバスチャンは龍となり、邪眼みゆりを凌ぐ力を発揮する。
「今日はガグと実戦をこなってもらおうと思っています」
「ガグ?」
「あなたが丘の上で戦ったあの化け物の名前です」
エルニクスは続けて言う。
「それと、これが実質的な最後の稽古と考えてもらっても大丈夫です。近いうちに最終テストが行われると思います。そこでは稽古ではなく、本番をしてもらうつもりです」
パチン。
エルニクスが指を鳴らすと、地面が機械的に開く。リフトが上がってきて、その上には鎖に拘束された4体の化け物がいた。ガグは既に防具をしている。
「盾とスキルは使ってもらっても構いません。そうですね、ギフトも使っていいでしょう。と言っても使いようがなさそうですが」
稽古室の扉が開くと、信者が荷台にガグの使う武器を乗せて運び込む。
絶縁体の素材で作られてた巨大な大剣。カーボン製の棍棒。大盾。淡い光を放つ黄金の大斧。
「これらの武器は一定以上のクオリティを保っています。麒麟の電撃は通しません。ご注意を」
エルニクスはガグ達の目の前に行く。
「《ラスト・マテリアル》」
エルニクスの魔法により、ガグの拘束具が錆びる。ガグたちはここぞとばかりに力を振り絞り、鎖を引きちぎる。
「ウウウウ!!!」
ガグの野太い叫びが空間に響く。
ガグは状況を理解し、4本の腕で武器を取る。
「試合開始!」
エルニクスの叫びと共に、両者は動き出す。
ブン。
ガグの1体が斧を投擲した。予想できなかった行動。だが、須磨太郎はそれを盾で防ぐ。
「ウウウ!」
2体のガグが須磨太郎を襲う。須磨太郎はそれらの攻撃を盾ではじき、膝の関節をめがけて鋭い刺突を繰り出す。ガグは須磨太郎の攻撃に体制を崩す。須磨太郎はその隙を見逃さない。盾を巨大化させるとそのままガグを押し倒す。盾を挟んでガグに馬乗りになると、4つの目に突きを食らわせる。
「《パーフェクト・アーマー》」
他のガグたちは須磨太郎を攻撃するが、魔法で自身の背中をガードする。ガグたちの攻撃は須磨太郎に通らない。須磨太郎は再び盾を変形させると焔の盾にする。すると目を潰されたガグに火が着き燃え上がる。
素早く盾を小型化し、須磨太郎は立ち上がる。
「残り3」
須磨太郎はガグを睨む。
「ウウウウウウウウ!!!!」
4本の腕で縦の長さが8mもある巨大な大盾を持ったガグが2体のガグを背にして、盾を地面に突き刺し障壁をつくる。後ろにいた巨大な剣と斧を持ったガグと、棍棒を持ったガグは武器を地面に突き刺すと、両手の手のひらを合わせ、魔法を詠唱する。
バリバリ。
地面に亀裂が走り、須磨太郎のほうに迫ってくる。亀裂からは電撃が放たれる。
「《グランディア・シールド》」
裂け目の上に薄く硬いシールドが5枚作られる。須磨太郎はその上に立ちながら麒麟を前方に掲げる。
「麒麟!」
ガグの電撃の魔法は全て、麒麟に吸収される。須磨太郎にもダメージは入るが盾の効果により傷は一瞬で癒える。電撃により麒麟は帯電し、青白い光を放つ。
「《グランディア・シールド》」
再び須磨太郎は魔法を使用する。大盾の前に3つの盾を足場として階段のように展開させる。浮遊した盾を目指して須磨太郎は一気に距離を詰め、階段をのぼりつめる。そのままの勢いで大盾を飛び越え跳躍すると、地面に向かって身体が平行になるような空中姿勢を取り、真下にいる盾を構えていたガグに麒麟を投擲する。
グサリ。
ガグの頭頂部に麒麟が刺さったのを確認すると、着地と同時に須磨太郎は技を発動する。
「〈サンダーボルト〉」
ビシャン!
麒麟から稲妻が放射される。ガグの身体は一瞬で丸焦げになり、びくびくと痙攣しながら死んだ。
その様子を見て残された2体のガグは少しだけ後ずさりをする。
「残り2」
悠々とした態度で須磨太郎はガグの死体から麒麟を回収する。麒麟はまだ帯電していて、びりびりと空気を震わせていた。
「どうした? 来ないのか? ならばこちらから行かせてもらおう」
ぽんぽんと須磨太郎はその場でジャンプする。2回目の着地をした瞬間、すでにその姿は消えている。
ガグの背後に回り込んだ須磨太郎は大きく回転をしながら、ガグの脚の健を抉り取る。
その攻撃に6mはあるガグの巨体が膝をつく。
「《シールド・ウォール》、《チェイン・ロック》」
2体のガグの間に壁が生まれる。地面から4つの鎖が伸びてきて、膝をついたガグの4本の腕を捉え、地面に引っ張る。地面に突っ伏したガグの目の前に須磨太郎は移動する。ガグの顔面は中央で裂けている。それは凶悪な歯を備えた口である。須磨太郎は小型化した盾をその口に突っ込む。ガグは須磨太郎の腕を噛みちぎろうと口を閉じるが、盾につっかえ腕に歯が刺さるだけである。
「死ね」
ガグの口の中で盾が一瞬で巨大化し、ガグの頭は綺麗に真っ二つに裂け、ガグは絶命する。
「次で最後か」
須磨太郎が呟いた瞬間、壁がガグによって破壊される。
「ウウウウウウウウウウウゥゥゥ!!」
最後のガグは怒りに燃えていた。上の2本の手には巨大な剣が下の2本の腕には小さい斧が握られていた。
「悔しいか? だが諦めろ。弱者に生きる資格はない」
須磨太郎は盾を極限まで小型化する。
そのまま一気に距離を詰める。ガグは大剣を振り回す。須磨太郎はそれを短剣で受け止め、更に近づく。
斧の1撃が須磨太郎の腹部をえぐる。だが、須磨太郎は止まらない。太ももに剣撃を与える。素早く的確な攻撃でガグの肉が削られていく。背後から大剣が何度も突き刺されるが、須磨太郎の動きは止まらない。再生能力がガグの攻撃によるダメージを上回っていた。
遂に、ガグは膝をつく。須磨太郎はガグの一つの目に短剣を突き刺す。
「ウウウウウウウ!」
痛みにガグは声をあげる。力任せに須磨太郎に攻撃を放つ。須磨太郎は盾を大きくし、攻撃をはじく。そのまま短剣をガグの腕に突き刺すとガグは大剣を手放す。
須磨太郎は短剣を刺したままにしながら、大剣を手に入れると、自身を軸にして大きな一回転切りを放つ。
ガグの腹部に深い傷ができ、血が噴き出す。短剣を回収すると、その傷口と垂直に交わる方向に短剣を振り下ろす。ガグの身体に十字の傷が生まれると、左腕をガグの体内に突っ込み、再び盾を巨大化させる。
グシャ。
ガグの身体は内部から破裂する。
こうして最後の稽古は終わった。
次回は木曜日に更新します。今週は土日投稿できないので、土曜日か日曜に予約を入れてみたいと思います!
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