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初稽古

 

 混乱を極める中、誰よりも冷静だった俺と文香は改めて死体を確認した。


 外傷のようなものは見当たらなかった。人間やモンスターなど誰かがいたような痕跡はない。

 死んだのが一人であれば何かの偶然、例えば心臓麻痺や脳梗塞のようなものも考えられる。だが、死んだのは二人だ。二人が殺されたのだとしたならば、俺たちの中の誰かが犯人になる。


 毒殺だろうか? 心臓発作のように思える。何か毒を料理に仕込んでいた、あるいは寝ている最中に飲ませたのかもしれない。


 即死魔法だろうか? だが、そんな高位の魔法を1人で使える者はこの世にはいないはずだ。カインズや陽菜さんでさえも代償なしでは使用できないだろう。


 文香の方を見る。文香は頷く。

 俺は腰の球型の魔導銃を取り出し、スキルを発動する。


「『時計仕掛けのオレンジ』」


 4発の弾が二崎、三村、愛塚、ニーナに当たる。


「お前たちの中にこの二人を殺したものがいたら名乗り出ろ」



 ・・・・・・。


 誰も反応がない。



「何か知っている者はいないか?」



 ・・・・・・。


 再び沈黙。


 この中に犯人はいない。

 俺はそれを確認するとスキルを解除した。



「どうしたものか」


 手がかりになりそうなものは見当たらない。『桜の樹の下には』を発動するまでもないだろうし、彼らの目の前で発動させるのは不可能だ。




 ニーナはひとしきり泣いた後、放心状態に陥っていた。アックス同好会は辛そうではあったが、まだ状況を受け入れていた。


「俺たちは一度戻ります」

 二崎が言う。


「エドワードさんの身体も連れていきます」

 三村が言った。


「私は......」

 愛塚はどうすればいいか迷っている。


「大河さん文香さん、もしよければ愛塚さんを頼めませんか? 報酬は無論、全て貰ってください」

 二崎から言われる。


「わかりました。その仕事引き受けましょう」


 方針が決まる。アックス同好会とニーナさんは二人を担いで、一度戻る。俺と文香と愛塚さんはこのまま山道を進み続ける。



 こうして3人と別れ、俺たちは再び歩き始めた。


「ねぇあなた」

 文香が俺に耳打ちをする。


「わかった」

 少し文香の考えすぎなような気もするが、従わない理由はない。



 ***



「まず、あなたに渡す武器ですが......」


 後日、エルニクスは準備を整え須磨太郎に指導を開始してた。


「これです」


 エルニクスは虹色に輝く短剣を須磨太郎に差し出す。麒麟。伝説の七本の一つであり、須磨太郎が自分を殺めるために使ったもの。須磨太郎は一呼吸を置き、麒麟を受け取る。ずしりとした感触。これが人を殺す質量なのか、と須磨太郎は思った。


「あなたにはこれと盾を使った動きを学んでもらいます。といっても盾の方はもう十二分な実力がありますので、どう短剣の動きと組み合わせるかということが主題になりますが」


 エルニクスは自身の腰から黄金の短剣を取り出す。


「まずは一通り、短剣の基礎をお教えします。そうすれば、あなたにも短剣のスキルが生まれるでしょう。明日からはスキルをセットして練習に臨んでください。最終的にはスキルなしでも完璧な動きができるようになってもらいます」


 エルニクスはそういうと、講義を始めた。


 まず話したの短剣の特徴。その最大の利点である素早さを説明した後、リーチなどの欠点を丁寧に論理建てて話す。それから、短剣の基本的な種類や名称、持ち方や剣の振り方などを実際に動きながら説明していく。最後に様々な流派を説明し、盾との組み合わせの仕方の例なども提示した。


「今言ったことは今日で全て理解してもらうとは思っていません。何度も繰り返し説明するのでいずれは完璧に理解してください」


 では、といってエルニクスは須磨太郎を所定の位置につかせる。


「これから私とあなたで実戦を行います。目的は短剣がどれほどの力を持つか身に持って知ってもらうことです。盾は自由に使ってもらって構いません。本気で来てください。ギフトは私が許可をするまで使用しないでください。とはいっても今回の稽古では関係ないことですが」


 そう言うとエルニクスは短剣を逆手に持ち、構える。

 須磨太郎もエルニクスの話に出てたスタンダードな持ち方をして短剣を構える。


「あなたの再生能力は吸血鬼女王と同等レベルだと聞きます。手加減はしません」


 エルニクスは試合開始のジェスチャーを送る。


 試合が始まる。



 先に動いたのは須磨太郎だった。おぼつかない攻撃。

 エルニクスは短剣でそれを受け止めることもできるが、あえてしない。麒麟の効果により、短剣を受け止めたエルニクスに強力な電撃が走るからだ。

 エルニクスは攻撃を体さばきで躱し、再び短剣を構える。


「《シールド・ウォール》」

 エルニクスを囲うようにして壁が生まれる。


「《チェイン・ロック》」

 壁から鎖が伸びて来てエルニクスを拘束する。エルニクスは回避をするが、右腕は鎖に縛られる。


「《ラスト・マテリアル》」

 右手の短剣を左手に持ち替えてエルニクスは魔法を唱える。鎖は瞬時に錆び始める。


 須磨太郎は刺突を放つ。


 エルニクスは鎖でその攻撃を受け止める。


 ビリビリ。


 電撃のショックをエルニクスは受けるが、同時に鎖が壊れる。

 左手の短剣で須磨太郎の腱を素早く切りつける。須磨太郎は短剣を手放してしまう。


 ぽんぽん。エルニクスはその場で軽く飛び跳ねると、姿を消す。エルニクスの身体から取れた麒麟がその場にボトリと落ちる。


 須磨太郎は背後から殺気を感知し、咄嗟に壁を展開する。

「《マテリアル・シールド》」


 だが発動は一歩遅かった。

 エルニクスのナイフは既に須磨太郎の首元に突き立てられていた。


「これが短剣です」


 二人は戦闘状態を解除する。



「今日のところはこれで終わりにしていきましょう。明日からはスキルのセットをお願いします。『The Gre(グレート)at Gatsby(ギャッツビー)』、『A Study(シャーロック) in() Scarlet(ホームズ)』 、『短剣』をつけてもらえれば大丈夫です。お疲れさまでした」



 初稽古はこうして終わった。




ブクマ増えてて嬉しいです! 次回は土曜日に更新します!!

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