朱莉と皐月
甘々回。ブラックコーヒーを片手にお読みください。
俺と文香は国に5つある学校のうち、一番大きな都市部にある学校に向かった。
学校と言ってもかつての世界にあった完全に組織されたものではなく、小学生くらいの生徒に魔法についての簡単な話をするようなところだ。
現在は、朱莉と皐月が外の世界の知識を教える特別講師として勤務していた。
二人とも今日の授業は午前だけで終わるらしく、政府の仕事をしていた楓もちょうど仕事に暇ができたので、久しぶりに5人で会って食事会を開くことにした。
今回は前回のように堅苦しい話をするでのはなく、より身近な出来事や、楽しい話を昔のような調子で話したいと俺が希望し、口調なども昔のように戻すことにした。
カフェでお茶を啜りながら会話をする。
「楓さんは最近困ったこととかありました?」
文香が言う。
「そうですね。紅葉が大きくなってきたこととかかなぁ。だんだん大人びていくのが嬉しくもあり少し寂しさもあるというか」
嬉しそうに楓はそう言った。
幼い頃に両親を亡くした紅葉にとって年の離れた姉である楓は母親のような存在なのであろう。それは逆も同じことが言える。
「私なんか会うたびに紅葉ちゃんが美人になって驚いてるよ」
朱莉が言う。
楓が頷いて、紅葉がどれほど可愛いかということを立て板に水のごとく話し続ける。しばらくすると、楓は満足したような顔をしてお茶を飲んだ。
「朱莉さんと皐月さんは最近元気そうですよね」
俺が新たな話題を切り出した。二人の様子がいつもとは少しだけ違うのが気になったからだ。
「え! そうですか?」
皐月が驚いたような反応をする。心なしか顔を少し赤らめている。
「何かいいことでもあったの?」
楓がそう聞く。口元には悪戯な笑みを浮かべている。
「えっと、それは.......」
普段は元気な朱莉も下を向いて赤面してしまう。
これらの仕草がある一つの事実を表していることに気が付かない者は俺たちの中にいなかった。
二人して顔を真っ赤に染め下を向いている様子を見てるうちに、ついに楓は噴き出した。
「おめでとう。よかったわね。朱莉」
心からの気持ちを表すように楓はそう言った。
「やっぱり気づいてたんだ?」
朱莉は言う。
「そうに決まってるじゃない。皐月を見てるときの乙女の姿を見たらね」
「リーダーにはバレてるかなとは思ってたんだけど」
「陰ながらずっと応援してたのよ。二人きりになれるチャンスを何度作ったことか」
「え、もしかして......」
朱莉が思い出せる限りのシチュエーションを並べる。その全てに楓は頷いた。
「で、いつ告白したのよ」
楓さんは澄ました顔で朱莉にそう問う。
「この間」
朱莉が素っ気なく答える。
「この間っていつよ?」
楓はさらに迫る。
「この前の蛍祭のとき、朱莉から呼び出されたの。そこで想いを告げられて......」
皐月が答える。
「何て告白されたんですか?」
悪のりをした文香が皐月に聞く。
「えーと、『好き。一生隣にいて欲しい』って」
皐月は少しだけ朱莉の真似をしながらそう言う。
「もうやめてよ。恥ずかしい」
顔を真っ赤にした朱莉が言う。
「それで皐月はなんて答えたの?」
楓さんが聞く。
「最初は『私も好きだよ』って答えました。でも、朱莉は『そうじゃない』って言ってきて、私のことが恋愛的な意味で好きだって言ってきたんです。私、すごく戸惑いました。だって朱莉のことは好きだったけどそういう意味で見たことは無かったから。でも朱莉との思い出がたくさん浮かんできて、気がついたんです。私も朱莉のことが好きなんだって。だけど、どう伝えればいいかわからなくて、朱莉のことを抱きしめました」
「それでそれで?」
「そしたら朱莉はいきなり泣き出して、私変なことしたかなと思って焦りました。『なんで泣いてるの』って私が言うと、朱莉が『言葉にしてくれなきゃわからない』って言ったから、私すごい恥ずかしかったんですけど、朱莉に『愛してる』って伝えたら、朱莉が『私も愛している』って言ってきて。しばらくして、朱莉が私のことを黙って見つめてきて、私も朱莉の顔をずっと見てたら、どちらともなく、そのまま・・・・・・」
「わああああ! ストップ! ストップ! ストーープ! もうこの話は終わり!!」
朱莉が話を止める。
顔を真っ赤にして下を向いている皐月。同じように顔を真っ赤にしながら騒ぐ朱莉。幸せそうな二人を見て、楓さんは涙を流していた。
「っちょ、なんでリーダーが泣くのよ!」
「だって!」
楓さんは幸せそうな二人を見て、どれほど自分が安心したかということを語り、最後には満面の笑みを浮かべて改めておめでとうと二人に言った。
そのあとはグダグタと話をして、少ししたら、あとはマジックフォックスのメンバーで話しててくださいと言って、俺と文香は席をたった。
***
翌日。俺と文香は桜の樹を見に行った。桜の樹はまだ満開だった。その風景が何故か不気味に感じた。
桜の樹の近くにはドワーフの鍛冶屋がある。それは元々文香が魔法で作ったものだが、その外見がかなり変化していた。街とまではいかないまでも、嘘松王国とはまた違った趣のある家々がそこに建っていた。
ドワーフ達に技術を学ぶ物好きな妖狐たちはその家に住んでいるようだった。
ドワーフが要求する材料などを直ぐに輸入できるように、空孤から外交官を任命し、この場所には住まわせていた。
俺と文香は外交官の様子を確認し、ドワーフ達の働きぶりを見た。妖狐用の様々な武器が造られているようで安心した。
ドワーフからは魔導銃の素材は揃ったかと聞かれたが、俺はもう少し待ってほしいといった。
旧ザルバド王国が所有する鉱山に魔導銃の製作に必要な素材があるのはわかっているため、今回行う予定の旅ではそれも目的の一つにしている
そんなこんなで国中を一通り回ったあと、俺と文香は旅に出た。
***
――ヘルヘイム帝国・某所――
「案外、この場所も悪くないですね」
ナターリアがベッドに寝ころびながら須磨太郎の方を向いて言う。その白い肌は少しだけ赤みを帯びている。
「そうだな」
須磨太郎は肯定した。須磨太郎はベッドの端に腰かけながら、火をつけたハーブを吸っている。
ガラガラ。
シャワー室からバスローブを身に纏ったリザが出てくる。女性特有のフローラルな香りが部屋に広がる。
「お待たせしました。どうしたんですか。浮かない顔をして」
リザは須磨太郎の隣に座る。
「少しな」
須磨太郎は煙草の火を消すと、立ち上がり部屋の電気を消した。
「さっきはあれだけ元気だったのに」
ナターリアがぼそりと呟く。
「今日も素敵でしたね」
リザが言う。
3人で一つのベッドに潜り込む。月明かりが部屋の窓から差し込んでいた。
「須磨太郎様、何か隠していることがありますね?」
ナターリアが言う。
「・・・・・・一つ考えていることがある」
須磨太郎は上を向きながらそういう。
「他の転生者のことですね?」
リザが言った。
「そうだな」
須磨太郎が言う。その心は複雑な思いに満ちていた。
少し考えをしたあと、須磨太郎は重い口を開く。
「俺は今までお前たちに人殺しをさせたことはなかった。どんなに悪いやつであろうと命までは奪わなかった」
サトゥー須磨太郎はそういう人間だった。人の理を外れた化け物を「剣」である二人に殺させたことはあっても、人の命を奪ったことは今までに一度もなかった。
「もう俺に選択肢がないのは分かってる。だが、今更になってもまだ決心がつかない俺がいる」
須磨太郎がそういうと、横に寝ていた二人は須磨太郎の胸にしがみついた。
温かい二人の体温を須磨太郎は感じる。
「大丈夫です。須磨太郎様。私たちはあなたの剣です。心配することは何もありません」
そっと優しい声で二人はそう言う。
「もう今日は遅いです。明日また考えましょう」
二人の優しさに包まれて、須磨太郎は再び答えを出すのを保留する。
「あぁ。そうしよう」
こうして3人は眠りについた。須磨太郎の問題はまだ解決していない。
百合カップルが多いんですけど、私にはそのような趣味はないので、本当にたまたまです。
次回からは3~4話完結のサイドストーリー的なものを2回挟みつつ、須磨太郎サイドの心理描写などをしていこうかなと思ってます。日常回はしばらくお休みです。評判がよかったらまた挟んでもいいかなと考えてます。
今週の土曜は用事があるので投稿できないかもしれないです。タイミングがあればしたいと思ってます。
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