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嘘松王国の今後

章分けました。

 

 俺と文香は再び席に着く。軽く話をして再び本題に入る。


「まず、結論から言いますが、軍事同盟は組むことはできません。というのは、第一に我々嘘松王国には常備軍というものが存在していないからです。その上で私は先代の十六夜天狐から国民を頼むという使命を受けています。したがって、国民の命が危険にさらされるようなことはできません」


「もう一度考え直してもらうことはできませんか? 我々の国の一大事なのです」


「それは理解しています。歴史などを調べてみても和の国と嘘松王国のルーツは同じであるようですし、私たちとしても仲間の危機には助けの手を差し伸べたいと思っております。なので、軍事同盟を結ぶ代わりに経済協定を結びたいと思っております。私たちはあなたの国の刀が欲しい。こちらとしては魔法のノウハウを提供します」


「刀ですか? それは難しい相談です。和の国の刀には我々の魂が込められています。粗悪な模造品は他国に溢れていますが、本物の刀は厳重な条例そして職人たちのプライドによって諸外国に流出したことは今までありません。その輸出を解禁することはほぼ不可能と言ってもいいでしょう。しかも、仮に経済協定を結んだところで我々の問題の根本的な解決にはならないはずです」


「そうでしょうね。経済協定を結んだところでは、根本的な問題の解決には至りません。ただの威嚇程度にしからならないでしょう。そこで私たちは一つ提案をしたいと思っています」


「提案?」


「はい。今回我々と経済協定を結んでくださることを条件に、相手の戦力を削いでみせましょう」


「それは、どのような方法で?」


「私自ら敵陣に乗り込み、煉獄を無力化します。『存在の耐えられない軽さ』」

 俺は朝起きたときにセットしたスキルを発動する。


 スキルを発動した瞬間、俺の姿は徐々に消えていき、完全に背景に溶けこんだ。

 俺は孝行の横へ行くと再びスキルを発動する。


「『The Gre(グレート)at Gatsby(ギャッツビー)』」

 極限の集中力は何も素早い動きをするためだけのものではない。超スローな動きをするのにも集中力を使う。俺はそっと、孝行の腰の鞘から刀を引き抜く。

 俺が触った瞬間、刀も徐々に透明になっていく。元の席に戻り全てのスキルを解除する。


「おぉ!」

 突然目の前に姿を現した俺が自分の刀を持っていること視て孝行が驚きの声をあげる。幸美も目を見開く。


「納得していただけますか?」


「これは凄い。どんな手段を使ったは分かりませんが、その腕は確かなようですな」


「天叢雲剣も万が一発見できた場合は持ち帰りましょう」


「かたじけない」


 その後、孝行とは正式に協定を結ぶ日と場所を決め、会談は終わった。



 ***



 夜。俺と文香は楓、紅葉、朱莉、皐月の4人を食事に誘った。

 普段とは違って打ち解けた雰囲気でご飯を食べた後、文香が食後の紅茶を淹れ真面目な話をはじめた。


「皆に集まってもらったのは他でもなく、今後の嘘松王国について話すためだ」

 俺は話を切り出す。


「知っての通り、俺と文香は使命を持ってこの世に存在している。少なくともあと4人を始末しなければ目的は達成できない。

 その過程において、この国を離れなければいけない時が来るだろう。その時までにこの国は自立しなければならない。

 現状のような俺と文香に力が偏っている状態は望ましい物とは言えない」


「そうですね」

 楓が言う。


「陽菜さんとの約束がある限り、俺にはこの国と国民を守らなければいけない義務がある。だからこそ国力の強化に力を注がなければならない。

 そのための一歩はもう踏み出していている。今日の会談では和の国から刀を輸入できるように取り付けた」


「それはどのような理由で?」

 朱莉さんが口を開く。


「私が答えるわ」

 文香が言う。文香はジョブスキルにより、何冊かの古びたぶ厚い本を具現化する。

「ここの資料は全て資料室に保管されていました」



 嘘松王国の地下には鏡の合ったあの部屋の他に資料室が存在していた。

 天狐になってから今までの間に、そこにあった約3000の資料全てに俺は目を通し、嘘松王国周辺の歴史や地理、妖狐の文化や生態的特徴などを学んだ。

 それをするためには『The Gre(グレート)at Gatsby(ギャッツビー)』を使って集中力を高めることによって1日に100以上の資料を読みこむこともあった。

 学生時代に鍛えた力が生かせてよかったと思っている。



 文香が話した内容はこのようなものだった。



 嘘松王国が建国されるよりも前の時代、妖狐は戦闘民族として恐れられていた。

 その当時の妖狐の武器は二つあった、一つは今でも妖狐のメインとなる尻尾。大陸にある全ての物質の中で一番魔力伝導率が高く、高火力の一撃や遠距離からの攻撃は妖狐と対立した種族を粉砕していった。

 もう一つが刀。元来、鬼などの種族と比べると物理攻撃力の低い妖狐は、苦手な近距離での戦闘に刀を使っていた。一部の妖狐の中には自身の尻尾を硬化させる魔法を使用し、近距離での戦闘を好むものもいた。

 嘘松王国が建国され、土地と安定した生活を手に入れた妖狐たちは、魔法の研究にのめりこむようになり、攻撃魔法が発達を遂げると、刀を好んで使う妖狐の数は減っていった。

 最終的には刀を製造する技術が受け継がれなくなり、妖狐が刀を持つことは無くなった。刀よりも扱いの楽なレイピアなどが流行ったが、外部との交流が途絶えたことによりそのブームもなくなった。

 トルキン公国との戦争の際には、刀を持つ者は既に存在せず、発展し体系化された魔法による圧倒的な火力でオークたちは殺されていった。それからは周りの国は嘘松王国に敵対心を露わにすることは殆どなくなった。




「ということだ。俺と文香は軍事力を強化するには一人一人の戦闘力を高める必要があると思っている。

 昔の時代の妖狐が刀を扱うことができたなら、今の時代の妖狐もそれができるはずだ。刀を持った妖狐は吸血鬼を超える最強の種族になるだろう」


 更には、と俺は話を続ける。


「俺と文香はこの国に徴兵制を導入したいと考えている。国民すべてに戦闘の技術や知識を身に着けてもらうことで、恒久的な平和が訪れると信じているからだ。そのために様々な計画を既にスタートしている。食料品や武器の備蓄庫の設立は既に済ませてあるし、文香の研究によって簡易的な《部位硬化》の簡易的な魔法式が出来上がっている」




 楓たちは俺と文香の話を聞いた後、簡単な質問をし、それからみんなでこの国の今後について話し合った。

 最終的には他の気孤や空孤にこの趣旨をどう伝えるべきかを取り決め、夕食会は終わった。




 ***



 孝行と幸美が来てから1週間後、正式な経済協定が結ばれた。旧ザルバド王国でも多少の動きがあったものの、直ぐに和の国との戦争が起こるような様子はなかった。

 俺と文香は2カ月間かけて、国の制度を整えた。1年間後に徴兵制が施行できるようなところまで制度を定めると、旅に向かうために必要な仕事の手続きをした。


 国を留守にするのには不安もあったが、旅に向かうのには文香のジョブスキルが必須になるし、俺の新たな10のスキルがなければ作戦は実行できないため俺と文香んの二人で旅に出ることに決まった。

 文香のスキル欄には気がついたら『以心伝心』が追加されていたため、楓の付き添いは今回は不要だった。


 出発の1週間前、出発予定日までに全ての仕事を終わらせた俺と文香は、自分たちの足で嘘松王国を回り、国民の様子を伺うことにした。

主人公視点。

次回は糖分やばめです。ブラックコーヒーを片手に読んでください。


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