和の国の使者
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『IQ250の天才詐欺師が、異世界転生者から【最強の武器と能力】を奪い取り、家族の復讐を果たすために、世界の全てを欺く物語』
https://ncode.syosetu.com/n9099fr/ (8/18追記)
久しぶりに主人公登場
俺は目を覚ますと、いつものように顔を洗った。隣で寝ていた文香はもういない。
俺の寝起きはいい方ではないから、何か特別な事情がない限り、朝の会話は極力しないようにしている。
食事の席について、初めて顔を合わし、文香と朝の挨拶を交わす。
「おはよう、文香」
「おはよう、あなた」
文香は俺の表情を感じ取って、少しだけ悲しそうな顔を浮かべた。
それからは二人して黙々と朝食を食べる。朝ごはんは召使が作る日と文香が作る日が交互にあるが、今日の朝食は文香のものだった。
ご飯を食べ終わった後は、文香が紅茶を入れてくれる。紅茶は十六夜陽菜が開発してくれたもので、前の世界の最高級品と比べても香りや味は全く劣らない。
「それで、戻ってきたのよね」
文香が話を切り出す。
「そうだな。この紅茶がまた飲めて得した気分だ」
俺は答える。
「何があったの」
「今日の和の国との会談で致命的な失敗をした」
「『時計仕掛けのオレンジ』に何か対策をされていたの?」
「正解だ。会談の内容自体はこちらにとってかなりメリットのあるものだった。だが、俺が結論を急ぎすぎたみたいだ。『時計仕掛けのオレンジ』を使っても効果がなかった。隣の席にいた付き添いの女のギフトが洗脳を無効化するギフトを持っていた」
それから俺は続けて今回の会談の内容を話し、文香とお互いで軽く議論をした後、同じ結論に達した。
会談の時刻は昼過ぎ、それまでの間、文香は魔法の研究をし、俺は国の歴史をまとめた資料に再び目を通していた。
***
時間ぴったりに和の国の使者がやってきた。
一人は和装をした若い男。烏帽子のようなものを被っている。この男は和の国のNo.2であり、軍を指揮する能力はこの男が持っている。
女の方も和装をしている。艶やかな長い黒髪、色白の肌、女性らしい体型と、落ち着いた雰囲気などは文香とにたところがあるが、文香よりも明るそうな印象がある。
それに、この女は確かに美人だが、文香の方が何億倍も美しいと俺は思う。
「はじめまして。この度、和の国から参りました与謝野孝行と申します。こちらは従者の幸美です」
「よろしくお願いします」
孝行と幸美は頭を下げる。
「嘘松王国天狐の川霧大河です。今日はよろしくお願いします」
「同じく天狐の川霧文香です。わざわざお越しいただいてありがとうございます」
俺たちも頭を下げた。
そのあとは形式的な話を軽くした。しばらくして、紅茶をいれた楓が部屋に入ってくる。
人数分の紅茶をそれぞれの前に置き、楓は下がる。
「これが噂の紅茶ですね」
孝行が言う。
「よくご存じで。先代の研究により、この飲料は開発されました」
孝行がカップに鼻を近づけ、香りを嗅ぐ。
「いい香りですね。様々な花の匂いがします」
孝行はそのまま紅茶を飲み下す。
「どうですか? お口に合えばよろしいのですけど」
文香が言う。
「とても美味しゅうございます」
幸美が言った。
「確かにこれは旨い。是非うちでも作りたいものだ」
孝行が言った。
「本来は製造方法は秘密なのですが、そうですね。我々の会談が上手くいき、友好関係が築けた暁には紅茶を共同開発しませんか?紅茶と似たような飲み物としてお茶というものがあります。恐らくそれも気にっていただけるかと」
「それは実にいい提案だ。ならばこの会談が上手く終わるようにしないといけませんな」
このような会話をしてから俺たちはは本題に入った。
「孝行さん、そろそろ本題に移りましょう。今回我々と会談を望んだ理由は何ですか?」
俺は話を切り出す。
「ズバリ言わせてもらいます。我々和の国は嘘松王国と同盟を組みたいと思っています。今回はその相談に来ました」
「同盟ですか、なるほど。どのような理由からそう思われたんですか?」
「我々の国宝である天叢雲剣が突然消えてしまいました。それをいいことにザルバド王国が我々との戦の準備をしているという噂があります」
ザルバド王国か。リザードマンの国で、鉄鋼業が盛んな場所だ。
「失礼ですが、今では旧ザルバド王国又はザルバド州という名称が正しいのではないのでしょうか?」
和の国は嘘松王国からみて東、つまりトルキン公国の反対側、山脈を挟んだ向こう側にある。そしてザルバド王国は和の国のさらに東に位置していた。「位置していた」と過去形を使ったのには理由がある。俺が転生した時には既に、バビロンで手に入る地図などを参照してみても、ザルバド王国という名前を見ることはできなかった。
俺の転生する数年前にザルバド王国はなろう王国の領土となっていた。現在ではザルバド州として存在している。なろう王国の領土といっても実態はまだ完全な統治がなされてないと言ってもいいだろう。なろう王国の最西端に位置するこの地域ではまだ、旧ザルバド王国の法令が維持されており、改名前後でもそこに住む者たちの生活はあまり大きくは変わらなかった。
「失礼しました。おっしゃるとおりです。まだ癖が抜けないもので」
「いえいえ。実態はあまり変わってないとお聞きしますし、無理もないことだと思います」
「今後も対談の中で間違えるかもしれませんが、受け流してもらえれば幸いです」
「わかりました」
このやりとりは2回目だ。最初に聞いたときには会談という公の場で正式な名称を使わないとは何とも愚かな人間だと驚いたが、2回目に聞くとその愚かさにもはや呆れてしまう。
「ところで、どうして天叢雲剣は消えたのでしょうか?」
「天叢雲剣がなぜ消えたかはわかっていません。国王しか触れられないように管理されていましたから。
ですが、犯人の目星はついています。恐らくザルバド王国が持ち出したのでしょう。我々の軍事力を削ぐのが目的だと考えています」
「剣一本でパワーバランスが変わるものなのですか?」
「変わります。かの伝説の七本はそれ一本で小国を滅ぼすことができると言われています。天叢雲剣は七本すべてを合わせた力よりも強大な力を秘めていると言われています」
「伝説の七本とは天才ホエクスの手により作られた7本の剣のことですよね?」
「そうです。金獅子。紅桜。闇雲。氷虎。煉獄。麒麟。深海龍。かつて世界中の国に渡っていた伝説の七本のうち紅桜、氷虎、煉獄、麒麟の4本はヘルヘイム帝国が所持していると言われていました。しかし、そのうちの煉獄をどういうわけかザルバド王国の第一王子アインツが所持しているという話を掴んでいます。我々の天叢雲剣が無くなったタイミングにこのようなことが起こるのは偶然とは考えにくいです」
つまり何かしらの形でヘルヘイム帝国は絡んでいる。
「天叢雲剣はいつなくなったんですか?」
「わかりません。少なくとも1年前の祭儀の時には存在していました」
「大体の事情は理解しました。ではより具体的な話を聞かせてください」
与謝野孝行は旧ザルバド王国の脅威を40分ほどかけて詳しく説明した。
その説明が終わった後、俺と文香は少し席を外して、打ち合わせがしたいと言い、別の部屋に向かった。
「ということなんだが、今朝の話の通りの結論で大丈夫か?」
「はい。大丈夫です」
別室では、時間を潰すために、俺が紅茶を作った。文香は俺の淹れてくれた紅茶の方が美味しいというが、俺としては文香が淹れてくれる紅茶の方が美味しいと思う。客観的に評価してどちらのほうが優れているのかは永遠にわからないのだろう。
しばらくて、俺と文香は和の国の使者の待つ部屋へ戻った。
視点が主人公に戻るのが少し難しいですね。
VS十六夜天狐くらいのベストバウト(?)が控えているので楽しみにしていてください。
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