大蛇の願い
ブン。ブン。
ガグは無表情のまま機械的に棍棒を振り回す。攻撃は全て躱されるが、ナターリアとリザは回避に専念しているため攻撃ができない。
邪眼は遠距離から刀を振り紅の斬撃を飛ばす。連戦により血の量が残りわずかになっている。高速再生のためにも血は残しておかなければならない。魔法を連発できる余裕は既にない。
ガギン!
ガグ2体の目の前にサトゥーが割って入る。その盾は全ての攻撃を受け止めた。
「《アースマジック・ミネラリゼーション》」
ガグの脚の動きが固まる。
「リザ!」
距離をとった中島リザは弓を大きく引き絞る。そして強力な一撃を放つ。
グサリ。
ガグの顔面に巨大な透明の矢が刺さる。
ブン。ブン。
だがガグの攻撃は止まらない。痛覚は既になくなっている。
サトゥーは盾をあえて構えず、ガグの攻撃を全て食らう。するとサトゥーの後ろの半透明の化身が同じような動きでガグに攻撃をする。
「《コントロール・オブ・ゴースト》」
邪眼は魔法を使う。化身の動きが止まった。
「くそ!」
サトゥーはスキルを解除し、盾を再び構える。ガグから受けた傷は既に再生している。
邪眼はいっきに距離を詰める。ガグと戦っているナターリアに狙いをつけ、紅桜を打ち込む。
キン!
剣と刀がぶつかり合い、激しい音がする。紅桜を纏う血が、ワンテンポ遅れて同じ軌道を描く。押し寄せる衝撃にナターリアの剣がはじかれる。邪眼はその隙を見逃さず、紅桜で突きを放つ。バックステップをとったナターリアに剣は当たらない。しかし、続く斬撃が鋭い形をしてナターリアに襲い掛かる。
「《マテリアル・シールド》」
サトゥーが魔法を発動すると、ナターリアの目の前に盾が生まれ、血の斬撃を防ぐ。
「いけ! ナターリア!」
ナターリアの背後に、サトゥーが回り込んでいた。サトゥーはアイギスの盾を弾力性の高い巨大な盾に変えていた。ナターリアは後ろを振り向かず、盾を壁にして後ろ足をつけると、そのまま盾を蹴り、前方に飛び出す。
空中に浮いたまま刺突を放つナターリア。邪眼は突きをしたままの体勢で体重を前に傾けていた。邪眼は素早く身体を無数の蝙蝠に変える。が、ナターリアの一撃は邪眼に大ダメージを与えた。
「〈アロー・レイン〉」
リザは邪眼の無数の蝙蝠が集まる場所を知っていたかのように50本の矢を山なりに放っていた。矢は全て邪眼に命中する。
邪眼は再び回避行動をしながら、血を消費し身体の傷を癒す。
ナターリアが邪眼に近寄り再び剣と刀が交わる。
キン!キン!
金属同士のぶつかる激しい音が響いた。剣術の腕は明らかに邪眼の方が戦った。しかし、リザが援護射撃をしていた。
二人に向かって矢が放たれる。通常ならば仲間が接近戦をしている時に矢を放つのは、仲間を巻き込む可能性が高く、愚かな行為であるといえるだろう。だがしかし、リザの放った矢は全て邪眼にヒットした。リザの弓の才能は確かに優れていた。500年に一度と言われるほどの才能を彼女は持っていた。しかし、矢が全て邪眼にヒットしているのは才能だけでは説明がつかない事象であった。
リザの援護射撃により、邪眼は徐々に押されつつあった。
バーン!
激しい爆発がした。サトゥーが引き付けた2体のガグと共に、自爆をしたのだ。サトゥーは傷だらけの状態で出てくるが、その皮膚はすぐに再生を始めた。
「あとはそいつだけだ! ナターリア回避しろ!」
この前と同じようにしてサトゥーはダイナマイトを投げつける。
ナターリアはいち早く回避を始める。遅れて邪眼も回避を始める。邪眼は馬鹿ではなかった。今度はナターリアと同じ方向にステップをした。
ダイナマイトの一つが爆発した後、邪眼がそこに行くのを知っていたかのようにもう一つのダイナマイトが降ってくる。だが、今回はすぐそばにナターリアもいた。
ポトリ。
ダイナマイトは爆発をせず、そのまま地面に落ちた。不発弾。この隙を邪眼が見逃すはずがなかった。
「〈血塗られた戦場〉」
邪眼は全魔力を消費して、あらゆる数の武器を具現化した。槍。斧。弓。刀。短剣。大剣。薙刀。ハンマー。500以上の武器が3人の人間にめがけて襲い掛かる。
「〈パーフェクト・アーマー〉」
鈴木がアイギスの盾の技を使用した。ナターリアとリザは緑色の殻に包まれる。殻は武器がぶつかってもびくともしなかった。
このアーマーにより、ナターリアとリザに攻撃は通らなくなった。しかし、裏を返せばその間は攻撃ができなくなる。
邪眼はサトゥーに向けていっきに距離を詰めた。紅桜でサトゥーに切りかかる。
「〈マグネット・シールド〉」
キン!
紅桜が盾と接触した瞬間、両者は反発した。その勢いで紅桜は邪眼の手を離れ、後方へ飛んでいった。
「《オーバーマジック・ブラッド・ライトニング》」
サトゥーの後ろに浮遊させていた5つの朱宝から魔法を放つ。魔法がサトゥーにヒットする。サトゥーは大きなダメージを負うがそれでもなお立っていた。
邪眼がサトゥーの左脇ばらに目がけて右腕で突きを放つ。その爪は鋭く伸びていた。サトゥーの盾が変形し、炎の形を模した小さな盾になると、サトゥーは突きを防いだ。
ぐにゃりと邪眼の右腕が曲がると、火が付いた。邪眼は構わず、空いている首に向けて左腕でチョップを放つ。
スパ。
サトゥーの盾は一瞬で大きな盾となる。盾の周りは鋭い刃になっていた。切り離された邪眼の左腕が空へ飛ぶ。
サトゥーは盾で力任せに邪眼を押す。両腕の無くなっている邪眼はバランスを崩しそのまま後ろに倒れた。
「ナターリア! リザ! 今だ!」
***
「カインズ様、準備が整いました」
「やれ」
八目凪が大蛇の瞳に手を突き刺す。それから紅色の目玉を取り出した。
大蛇はグルグルと大きく一周をすると、天に向かって、昇り始めた。
「〈大蛇の願い〉」
八目がパンと両手を合わせると、技を発動した。
「【 1 9 8 4 年 】」
鈍い音と共に、カインズを中心にして黒色の禍々しいオーラが広がった。
***
尻もちをついて倒れる邪眼に、ナターリアとリザが襲い掛かる。
ナターリアは邪眼の首に目がけて剣を振るい、リザは虎の鋭い爪で邪眼の腹を引き裂こうとする。
ピタ。
二人の動きが止まる。
「何を迷っている? 殺せ!」
サトゥーが言う。
グサリ。
「え......」
ナターリアの銀獅子はリザの心臓を貫いていた。
リザは絶望に顔を歪ませながら、バタリとその場に倒れる。ナターリアは唖然とした表情を浮かべたまま、血で塗れている剣の刃を自身の首筋に当てると、そのまま自分の動脈を切った。
首から血を勢いよく噴き出しながら、ナターリアもその場に倒れる。
サトゥーはその場に立ち尽くしていた。
次回でカインズ視点が終わりますね。個人的に邪眼みゆりと八目凪のペアが好きなので少し悲しいです。
一番好きなキャラは十六夜陽菜さんですけど、2番目に好きなキャラは邪眼みゆりだったりします。
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