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四本腕の怪物

 

 盾の奴隷商サトゥー須磨太郎は虹色に輝く神器、アイギスの盾のみを武器に2人の奴隷と共にカインズたちの目の前に参上した。

 サトゥーは正義感の強い人間だ。

 奴隷の数人が望月望に誘拐されたことの報復のため彼女を追っていた最中に、偶々通りかかったインスマスで異変が起きているのを察知し、人々を助けるために街を捜索した。

 インスマスで起きていた異変とは八目凪のギフト【高野聖】による、ヒルの雨である。街を数百万のヒルたちが徘徊し、人を見つけてはその生き血を吸っていた。

 一定量以上の血を吸ったヒルはそのまま破裂し、血の霧となり、インスマス上空を漂う。その行き先を追うことでサトゥー達は丘の上で何かが行われることを推測した。

 ベルゼブブの出現により、丘周辺の空気が一変したことはサトゥーの推測を確信へと変えた。丘の上にいたのは、3人の怪しな人間と1つの死体。それを囲うようにしている40mほどの大蛇だった。

 血が大蛇の赤い目に集まっているのをみて、サトゥーはカインズ達を悪とみなし、攻撃を与えた。



「みゆり、凪、まだ戦えるか?」


「私はまだ戦えますが、凪は」

 邪眼みゆりが凪の体力について言おうとする。


「戦えます。カインズ様」

 それを遮って八目凪が答える。


「いや、凪は休んでていい。先の戦いで魔力は残り少ないはずだ。それに大蛇の維持にも相当の精神力を使う。凪は〈大蛇の願い〉が行える機会をうかがってくれ」


「わかりました。カインズ様」


「みゆり、あれを頼む」


 邪眼はカインズにそう指示されると、ジョブスキルを発動した。戦乙女のジョブスキルでは武器や防具を収納、具現化することができる。邪眼がカインズの身体に触れた瞬間、カインズの身体は黒色のメイルに包まれる。その手には小型のナイフと楕円状の魔導銃が握られていた。



「作戦会議は十分か?悪党ども」

 サトゥーが言った。


「サトゥー須磨太郎だな。お前は」


「俺のことを知っているのか?」


「あぁ。知っている。我が名はカインズ・ジョージ・オーウェル。この世界の支配者だ」


「カインズ? 俺のことをはめた、あのカインズなのか?」


「そういえばそうだったな。西大陸でお前を指名手配にした記憶がある」


 カインズがサトゥーに話しかけていたのには当然理由があった。時間を稼ぐことにより、邪眼みゆりの魔力が回復するのを待っていたのだ。


「そうか。なら手加減はいらないな。最初から全力で行く。準備はいいか?ナターリア、リザ!」


「【山月記】!」

 中島リザがギフトを発動させる。身体の半分が虎のように変形していく。


 カインズと邪眼は相手の出方を伺っている。


 リザが何か弓を射るような動作をする。


 ヒュッ。


「カインズ様危ない!」

 邪眼がカインズの前にでて、攻撃を食らう。2本の透明の矢が邪眼の背中に刺さった。


「『名人伝』」

 リザは自身の矢が避けられたことに少し動揺をした。が、直ぐにまた透明な弓矢を構えている。



 ヒュッ。ヒュッ。



「《マテリアルシールド》」

 カインズが魔法の壁を展開させて矢を防ぐ。


 矢が盾にはじかれた音がした。


「紅桜!」

 邪眼がリザへ向けて剣を振るう。血の斬撃が放たれる。

 サトゥーがリザの目の前に立ち塞がると、その巨大な盾で攻撃を全て受け止める。ダメージはゼロだった。


「大丈夫かリザ?」


「大丈夫です。それより、敵はかなり強そうです」


「あぁ。わかってる。よし。準備が整った」


「はい」


 リザは突然上空に向けて見えない弓を構え、何本も矢を放った。


「《マテリアルシールド》」

 カインズは自分の斜め上に魔法の盾を作る。

 邪眼は上空に向けて斬撃を放つ。


 ブスリ。ブスリ。


 リザの放った20本の矢のうち、4本がカインズの身体に刺さり、7本が邪眼の身体に刺さった。


「【金色夜叉こんじきやしゃ】!!」

 ギフトを発動させたナターリアが上空に視線を向けていた邪眼の下に一気に距離を詰めた。


 神速の一撃が邪眼に放たれる。が、邪眼はそれを紙一重で回避する。


「《ダークホール》」

 カインズが魔法を発動する。巨大な黒い球が現れると、辺り一帯が闇に包まれた。周囲の光を全て吸収する闇属性の魔法だ。


「リザ、俺から離れるな。ナターリア、一度戻ってこい」

 サトゥーが言う。何も見えなくても相手の位置がわかるような絆が3人にはあった。3人はお互いに背中を預けながら構えていた。


「《リトルサイレント・ワールド》」

 カインズは三人を中心とする周囲2mの範囲のみの音を完全に消した。この魔法は1分間持続する。




「凪、あとどれくらいかかる?」


「あと7分ほどです」


「そうか。わかった。眷属を召喚する。この身体だと2体だせれば御の字か。凪は俺の護衛をしてくれ。みゆりは彼らが着けられそうな装備を選んでくれ」


 カインズが呪文を唱え始める。


「4の枝。4つの林檎。闇なる地下に光はなく、死臭漂う地上にその血を。犬。既にその四肢はなく、地下の獣は爪を研ぐ。ガグ。誇り高きその力を今ここに」


 カインズは地面に手をつく。地面には魔法陣のようなものが展開され、黒い光を放っている。


「『眷属召喚』!現れよガグ!」


 黒い霧のようなものが集まり、グルグルと形を作っていく。2本の脚、4本の腕。顔の中央には裂けた口。中からは凶悪な歯がのぞく。顔の皮膚は薄黒く、小さな4つの黄色い目が左右対称に配置されていた。全身が濃い黒色の毛で覆われていて、その4mの巨体は見る者を慄かせる。


 2体のガグがカインズ達の前に現れた。邪眼がそれに触れると、鉄の棍棒と簡素な鎧が生まれた。


「巨人族のものが丁度ぴったりね」

 邪眼はガグの影に隠れた。


 ***


 闇が晴れ、音が戻る。

 カインズは大蛇の後ろにいて、みゆりはガグの影に潜んでいた。



 2人の人間が消え、2体の怪物がいた。

「これが本当の姿なのか!?」

 サトゥーが驚き口に出す。


 ナターリアとリザはその異形な姿を見て、あまりの気持ちの悪さに嘔吐した。


「〈ライオンズ・スピリット〉」

 サトゥーが盾の技を使い、二人の精神を回復させる。サトゥーと奴隷の契約を結んでいる者はアイギスの盾の恩恵を受けることができる。


「来るぞ。二人とも、距離をとれ!」


 2体のガグが3人に向かって攻撃をしてくる。


 ガチン!


 棍棒が盾にあたり、大きな音を立てる。サトゥーはびくりともしない。


「反撃だ。『ガーディアン・ゴースト』」

 サトゥーの背後に半透明の化身が現れる。


「グアアアア!!」

 ガグは4本の棍棒をサトゥーに向けて振り回す。


 サトゥーはそれをあえて盾で受け止めず、攻撃を食らう。


「ぐは!」

 サトゥーは吐血する。だが、傷は一瞬でふさがっていく。サトゥーの後ろにいる化身は4本の腕を生やし、手の棍棒でガグに同じような攻撃をくらわせる。


(再生が早い。後ろのあれはカウンター型のスキルなのかしら)

 影の中でみゆりがそう思考する。サトゥーの再生速度はみゆりが血を消費した時よりも早いものだった。


「せりゃあ!」

 虎に変身したリザがガグに飛び掛かる。爪で顔面を引き裂くとダメージがあったのかガグが交代する。


「はあ!」

 一方ではナターリアはガグに寸勁を入れる。が、ガグはびくともせず、攻撃してきたナターリアを腕で薙ぎ払う。


「ナターリア! 内部構造が人間とは違う。打撃はダメージが通らない可能性がある。剣を抜け!」


 ズドン!!


 サトゥー達の周囲に漂っていた紅玉から魔法が放たれた。サトゥーは盾でそれを全て防いでいた。邪眼は影から現れると、背後からリザに向けて切りかかる。が、攻撃は当たらなかった。

「《オーバーマジック・ブラッド・ライトニング》」

 邪眼は空中に放り出されたリザに向けて魔法の追撃をするために紅玉を操作する。


 その隙をみて腰の剣を抜いたナターリアが邪眼に切りかかる。邪眼はそれに気が付かない。


 グサ!


 赤い血しぶきが上がる。腹に痛みが走るのを感じた邪眼は瞬間的に身体を無数の蝙蝠に変えると、回避した。


 サトゥー達も距離をとる。


「あの化け物になったわけじゃなかったみたいだな」

 サトゥーが呟いた。

毎日投稿してます。


明日更新の次回は補足説明回を入れます。文字数的には1話分より少しあるくらいなので読み応えはあると思います。


よかったら、ブクマ、評価、感想、レビューなど頂けると嬉しいです!



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