仮面の告白 吸血鬼女王
「【仮面の告白】」
邪眼みゆりが仮面を外すと、その身体は鮮血の波に包まれた。
深紅のドレス。真っ赤な唇。すらりと伸びた白い美脚。神々しい輝きを放つ豊かな金髪。ほどよくひきしまったウエストに、ふくよかな胸や女性らしさのある腰つき。澄んだ翡翠の瞳は見る者全てを誘惑した。
吸血鬼女王。邪眼みゆりの真の姿にして吸血鬼を統べる鮮血の女王。
「ブラボー。いい女だ」
「あら、私に惚れない男がいるなんてね。魅了対策もあなたのアクセサリーでされてるの?」
「いいや。魅了対策をした宝石は確かにあったんだが、燃やされてね。まああれがあったところで俺はお前に惚れてたと思うよ」
「告白かしら? 無論、お断りするわね。私には既に愛する人がいるのよ」
「別に俺のことを好きになってもらわなくてもいいんだ。俺は俺の愛し方がある!」
鈴木が距離を詰めてワンツーを放つ。邪眼の身体はすぐに無数の蝙蝠になり、その攻撃をいなす。
邪眼は鈴木の後ろで再び身体を形成すると、左腕を高く掲げた。その腕は変形していき、鎌のような形になる。邪眼がそれを振り下ろす。鈴木は危険を察知して回避する。
「私が好きなんて嘘ね。あなたは本気で私を殺す気じゃない」
「あぁ。好きだからこそお前を殺したいんだ。殺してお前の死肉を食べることが一番の楽しみだ」
「いやな趣味ですこと」
再び二人は接近しそれぞれの攻撃を始める。
「デストロイ!」
鈴木がそう叫ぶと黄金のメリケンサックから棘が伸びた。
グサリ。
鈴木の一撃は確かに邪眼の身体にダメージを与えた。しかし邪眼は一切怯まずに鎌を振り下ろした。
ザッ!
鈴木の身体に浅い切り傷ができる。鈴木の身体から血が勢いよく噴き出す。
「打撃の攻撃をしても蝙蝠になってダメージが通らない。だが、切断系の攻撃ならダメージは通るようだな」
「あら。傷の治療はしなくていいのかしら?」
「問題ない。血と肉は昼間の間に沢山摂取していたからな。だが少し目障りだ」
鈴木は胸の十字架をかかげる。
「《ヒール》」
鈴木の傷が癒える。
「対吸血鬼用のアーティファクトを集める貴族がいてな。これがあれば俺はダメージを負わない」
「少し面倒ね。でもそれはこちらも同じよ。私の傷はあなたの攻撃を超える速度で回復する。そして消耗戦なら有利なのは私」
邪眼の身体はすぐに再生する。それだけでなく、魔力もすぐに再生することができる。
「いや、それはどうかな。俺の方としても朝まで待つつもりはない。ここで決着をつけようじゃないか」
鈴木が再び距離を詰める。
「『鮮血の朱宝』」
5つの紅玉が浮遊する。
「爆ぜろ! デストロイ!」
鈴木の突きと共に、メリケンサックが爆発する。
打撃でも斬撃でもなく爆発。唯一邪眼に通る攻撃を鈴木は選択した。爆発の規模は小さかったがゼロ距離の攻撃だった。邪眼には確かなダメージが入った。爆風が晴れたとき、鈴木は何事もなかったかのようにその場に立っていた。
邪眼は羽を生やし、空中へと飛翔した。
それからなぜ鈴木の身体に爆発のダメージがなかったのか思考する。
「お前は俺がダメージを受けてないことを疑問に思っているだろう。答えは簡単だ。爆発を軽減するアーティファクトの効果もあるが、それを抜きにしても俺の丈夫な皮膚にこの程度の爆発は効かない」
邪眼は紅玉の一つを凪のヒルの前に持って行った。
凪は血の一部を邪眼の紅玉に譲渡する。既に15mは超えたヒルの身体が少しばかり縮んだ。
鈴木は左手のメリケンサックを邪眼の方へ投げつけた。
「デストロイ!」
「《ブラッドマジック・レリギアス・ボルダス》」
邪眼の背後にあった3つの紅玉から魔法が放たれ、メリケンサックを空中で破壊した。
「やるな」
鈴木の手には既に新しいメリケンサックが装備されていた。
「こいつを出させる数には限りがあるんだ。あと8つしかのこっていない。こうなるとどうにもらないな。他の奴を狙うしかない」
鈴木はカインズに向かって走り出す。が、すぐ目の前に巨大な壁が現れる。
「罠か」
カインズの周囲には、何重もの魔法が展開されていた。全て邪眼と鈴木が戦っている間に八目が展開したものである。
「「《ブラッド・ウォール》」」
八目と邪眼が魔法を発動させる。
真っ赤な壁が鈴木を阻む。
「〈レジスト〉!」
鈴木が魔法に抵抗しようとする。グールキングの種族としての力で魔法を無効化する。しかし、壁は止まらない。
「クソ! 《スペル・キャンセル》!」
鈴木は呪術を発動する。鈴木のネックレスの宝石の一つが消失する。対吸血鬼用の呪術が込められたアーティファクトを消費することで鈴木は血を媒介とした魔法を数回キャンセルすることができる。
「《ブラッド・ローズ》」
八目が魔法を発動する。赤色の巨大な薔薇が鈴木の身体を包む。鋭い棘が鈴木の全身に突き刺さる。
「ぐは!」
鈴木の鋼鉄のような皮膚にも血の棘は突き刺さった。
しかし、鈴木は力を振り絞る。
「おらぁ!」
鈴木は自身の身を拘束する赤い薔薇を己の腕力をもって切り抜ける。
「《オーバーマジック・レリギアス・デゥオデメデル》」
闇と火。闇と氷。闇と雷。闇と土。闇と風。それぞれ複合タイプの魔法が5つの朱宝から放たれる。
「《スペル・キャンセル》!」
鈴木は邪眼の放った魔法をキャンセルする。
だが、二人はそれを見越していた。
「「《オーバーマジック・ブラッド・ライトニング》」」
邪眼と八目が同時に魔法を発動する。
白い稲妻が鈴木の身体を焼き焦がす。
この魔法は消費された血の量に依存する。雷属性を得意とする二人から放たれたこの魔法の威力は壮絶なものとなる。
そしてこの魔法で何よりも優れているのはその速さだ。詠唱後即座に対象に向かって魔法が放たれるため、鈴木はそれをキャンセルすることができない。
じゅー。
鈴木の皮膚が黒く焦げる。だが、鈴木は生きていた。
「うおおおおおおおおおおお!『疾風怒濤』」
鈴木は大きくジャンプをし、空中にいた邪眼の腕を掴むと、そのまま邪眼を下にして落下した。
「《テイル・ウィンド》」
邪眼は落下の衝撃を吸収する。しかし、鈴木は邪眼に馬乗りになったままだ。
「デストロイ!」
鈴木が邪眼の顔面にパンチを入れるとともに、再びメリケンサックを爆発させる。
打撃の攻撃であるならば、身体を無数の蝙蝠に変えることで威力を吸収できる。斬撃でできた傷は元々の再生力に足して血を消費すれば一瞬で無かったことにできる。
だが、爆発だけはそうはいかない。蝙蝠となってそれを回避すれば、一つ一つのダメージが積み重なり、合計で再起不能のダメージを負ってしまう。
ゆえに邪眼には鈴木が放った一撃を直接受ける以外の選択肢はなかった。
八目は叫び声を上げる。だが、邪眼に当たる危険があるために攻撃魔法は使えない。
「《オーバーマジック・ブラックアウト》」
鈴木の視界が暗転する。
「〈ライトイング・スピア〉」
グサ。
鈴木の背後に2本の槍が現れ、それが勢いよく鈴木の背中に刺さる。鈴木は叫び声を上げる。その隙をみて、邪眼は身体を全て蝙蝠に変え、離脱する。
視界の晴れた鈴木が邪眼に向かって立ち直る。
「どんな手段を使ったんだ?」
邪眼の習得しているジョブ、戦乙女はジョブスキルで武器と防具を、収納、具現化することができる。
「あなたに答える義理はないわ」
邪眼の身体はもう再生していた。爆発で負ったダメージは既に消えている。
「《ヒール》」
鈴木もアーティファクトを使って体力を回復させる。
二人の戦いはまだ続いていく。
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