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高野聖 ――100体の干からびた死体――

かなり好きなギフトです。

 

「【高野聖こうやひじり】」


 八目がギフトを発動した瞬間、洞窟中を黒い雲のようなものが漂った。そしてそこから大量のヌメヌメとしたものが落ちる。


 ボタ。ボタ。


 10cmほどの気持ち悪い太さのソレは地面を這いずり回ると、近くにいるものの脚から昇り始める。

 中には屍食鬼たちの身体の上に落ちて、そのままべっとりとくっつくものもいた。

 屍食鬼の一人が自分の身体についたそれを振り払おうとした。


 ギュー!


 それは屍食鬼の身体にくっついてはなれなかった。

 屍食鬼はそれを握って取ろうとする。


 ぬちょり。


 気持ちのわるい感覚が手に感じる。


 ギュー!


 再びその黒いクネクネした生き物は音を発する。


 ギュー! ギュー! ギュー!


 そこら中で気持ちの悪い鳴き声が聞こえる。

 音を発していたのは巨大なヒルだった。


 大きいものだと20cmもあろうか。その黒くて長い生き物はナマコのようにもみえる。だがそれはナマコではなく間違いなくヒルだった。


 ヒルは皮膚からテカテカと光るどす黒い液体を分泌し、ぬめぬめと屍食鬼たちの身体を移動していく。


 1000以上のヒルが閉鎖空間を這いずり回っていた。

 ヒルたちは太い血管の通っている部分に到達すると、口を開き鋭く尖った歯で対象を吸血し始めた。

 通常ヒルには歯がついていない。しかし、その巨大ヒルたちにはヤツメウナギのように気色の悪い歯が円を囲うようにして口の周りについていた。

 血がヒルたちに吸われていく。血を吸ったヒルは徐々に太く大きくなっていく。大きくなったヒルはそのまま膨らむと、血しぶきをまき散らしながら破裂した。それによってまき散らされた血は全て宙に漂う紅玉に吸い込まれていった。


 ヒルたちは次から次へと産み落とされていく。


 1mほどの超巨大ヒルも何匹か出現し、屍食鬼たちを襲い始めた。超巨大ヒルは真っ黒な皮膚をしている。

 数cmのヒルも大量に生まれては、屍食鬼たちに張り付き吸血を始めていく。いま3mほどの巨大ヒルが出現した。そのヒルは宙に漂い、クネクネと空中を泳ぐように移動した。巨大ヒルには八目と同じ赤い目があった。



 その光景はおぞましいものだった。


 数千のヒルが屍食鬼たちの身体を見つけては血を吸い破裂して血をまき散らした。中には体中の皮膚全てがヒルに覆われ真っ黒になるものもいた。



 キャハハハハ!



 八目の高笑いが洞窟に轟いた。八目のギフト【高野聖】では大量のヒルを召喚することができる。ヒルが吸血した血は全て八目の鮮血の紅玉に集まる。



「《レリギアス・アイジス・ワイド》」


「《フロスト・ワールド》」


 ボネルフェルトとルイーゼもヒルたちを殺すがきりがない。


 既に6体の超巨大ヒルが2人を囲んでいた。洞窟の壁に張り付いた超巨大ヒル7体も二人の方向を向いている。巨大ヒルも2人の方に向かって宙を移動していく。


「《オーバーマジック・レリギアス・ダークボルダス》」

 黒い稲妻がヒルたちの口から発射される。

 予想外の攻撃に2人は防御をすることができない。


 超巨大ヒルたちは魔力触媒としての役割も果たす。ゆえに、多方面からの攻撃が八目は可能になった。


「少し人数が足りなかったみたいだけれど満足だわ。もう終わりにしましょう」


 巨大ヒルたちが一斉に二人の元に食らいかかる。ボネルフェルトとルイーゼの脚や腕、腹、首元に何体ものヒルがくっついた。



「爆ぜなさい。《リーゼナル・エクスプロージョン》」



 轟音と共にヒルたちは爆発した。爆炎が二人を包み込む。洞窟内を衝撃波がこだました。


 煙が消えたとき、二人の身体はこの世に一片たりとも残されていなかった。


 八目が【高野聖】を解除する。ヒルたちは血となり溶けていった。

 鮮血の紅玉がその血を吸い尽くす。洞窟内に残ったのは干からびた100の死体だけだった。



 ***



 鈴木と望月は高台に来ていた。月読人つきよみびとのあとをつけていたのである。

 月読人は望遠鏡で天体観測をしたあと、ノートになにやら書き込んでいた。

 鈴木は月読人に話しかけにいく。


「何を記録しているんですか?」


「星の動きを観察しているんです」


「どうしてですか?」


「どうしてでしょうね。私もわかりません。先祖代々この役割を任されてるんです」


「なかなか面白そうですね」


「そうですか?」


「はい。とても。実は結構星に興味があるんですよね」


「あら。そうなんですね。よかったら今度家に来ませんか? 資料がいっぱいあるんですよ」


「是非。行かせてください。あの大きな家ですよね?」


「そうです。いつでも来てください。昼の時間ならほとんどいると思います」


 鈴木はその後、軽く挨拶を済ませて望月の元に戻ってくる。


「ずいぶん女の扱いがうまいじゃない。案外プレイボーイなのね」


 鈴木は金髪のワイルドな好青年だ。その美貌に惚れる女は多い。鈴木の雄としてのフェロモンが人を惹きつけるのだろう。


「そうか? まあ俺にとってはただの食糧問題だ。若い女の死肉ほどうまいものはないからな」


「あら。勘違いした私が馬鹿だった」


「お前も大概だろ?」


「まあそれもそうね」


 この会話を交わした後、望月は何も言わずどこかへ旅立ってしまった。鈴木は食料を食べるために洞窟に戻るが、そこで大量の干からびた部下の死体を発見したのだった。

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