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得体の知れない恐怖

話が動き始めますね!

 ラプト村で生活して10日間。遂に俺たちはこの村を発つ。

 俺は村で得た情報を全てアンリミテッド・ノートブックスに書き留めた。その際に転生してから疑問に感じたことなども書いた。

 今は北に向かっている。ラプト村は標高の高いところに位置していて、この山脈を下ったところに都市バビロンがある。

 気になるのはバビロンにあるというバベルの塔。前の世界の固有名詞が出てくるのは何か理由がありそうだ。元理系の俺でもバベルの塔について最低限のことは知っている。

 かつて人間が神のいる天上界を目指し、バベルの塔を作り上げた。それに怒った神が人間に天罰を下し、統一されていた言語がバラバラのものとなり、人類は意思疎通がうまくできなくなった。これが前世での知識。都市の名前のバビロンも単なる偶然には思えない。だが不可解なことがある。その天まで届くといわれるバベルの塔らしきものがどこにも見えないことだ。バベルの塔はただの伝承にすぎないのかもしれない。


「バビロンでの予定は決まってるの?」

 隣で歩いている文香が聞いてきた。


「ある程度は。まずは宿の確保からだな。行ってみないとまだわからないけど、多分バビロンには長居する可能性が高いから。バビロンでは組合に登録して、冒険者になろうと思ってる。情報が一番得られるだろうし、できるだけコネを作っておきたい」

「冒険者っていい響きよね。私、年甲斐もなくわくわくしちゃう」

「文香はまだ若いと思うけど。まぁそれは置いておくか。バビロンに行っても俺たちは目立ちすぎないように注意しなきゃいけない。天使たちの言うことが本当なら俺たちは突如現れた期待のルーキーになりかねないし、その場合ほかの転生者たちに存在が気づかれるかもしれない。実際、トニーさんの話だと、サトゥーとリメル以外は名が知れ渡っているようだし」


「そうね。あっ!」


 文香が突然空向かって指をさした。遠くの空に天に向かって伸びる巨大な塔が見えた。


「あれがバベルの塔か。でも今まであんなものは見えなかったはずだ」

 俺は荷物を置いて、来た道をダッシュで引き返す。文香から30mほど離れたところからバビロンの方角を見る。しかし、そこには何もなかった。視線はそのまま固定し、文香の方へ歩く、するとあるところを境にして塔が現れるのだった。


「この世界はやっぱり不思議だ。」

 文香の元に戻るとき、あたりが暗くなってきたことに気が付く。

「文香、今日はこの辺でテントを張ろう」


 バビロンまでは歩いて2日かかる。俺たちはテントを張り、夕食を食べ、夜に備えた。夜間は交代で火の管理と見張りをする。ここの山で凶悪なモンスターが出ることはないらしいが一応念のためだ。



 ***


 文香が寝てから、随分と時が経った気がする。時計は持ち合わせてないから大体の時間で交代をすることにした。このまま朝まで文香を寝かせてやってもいいかもな。そんなことを思ったとき、後ろから何か音が聞こえた。


 カサカサ


 草木が震える音。俺は村から持ってきたサバイバルナイフを構え、焚火の中から長めの木を取りだし、松明として左手で持つ。


「こっちの世界の獣も火を怖がってくれるといいが」


 待つこと数秒。嫌な静寂が訪れる。

 こちらの存在に気がついて逃げたのか?でも逃げるような音なんて聞こえなかった。山賊か何かなのか?


「何の匂いだ?」


 生臭い潮の匂い。まるで腐った魚のような。目の前に青い光が見える。


「bouboro,bouvore」


 水が俺の脇を飛びぬけ、焚火が消える。


「魔法!?」


 まずい。仲良くできる相手ではなさそうだ。


「文香、起きろ!」

 テントから文香が出てくる。

「走れ!襲われてる!一度ラプト村に戻るんだ!俺もすぐに追いつく」

 そう言ってるうちに、左手に衝撃がはしり、松明が吹っ飛ばされた。火は消えていた。


「わかった!無理しないで!」

 文香は咄嗟の出来事にも関わらず、すぐさま行動を開始する。振り向いて敵を見る。暗闇で姿は良く見えないが、影はおぼろげに見える。数は4人か?二足で立っている。やはり山賊か何かだろう。

 手前の人影がこちらに向かって突進してきた。俺は後ろに吹っ飛ばされる。

 次の瞬間、敵の拳が飛んできた。俺はそれを本能的によける。初めのパンチは躱した。しかし体勢が崩れたところに追撃の一撃が向かってくる。

 相手の左手は俺の頬にクリティカルヒットし、当たり所の悪さに思わずよろけてしまう。だが俺はすかさず体勢を整え、次の攻撃に備え顔をあげた。

 木々の隙間からは月明りが漏れ、敵の顔がはっきりと目視できる。


「うあ!」


 そこにいたのは怪物だった。筋肉質な体の上にある顔面は人のものではない。それは、なんともおぞましい魚のような顔であった。

 肌はぬめぬめしていて、大きな作り物みたいな目は左右に離れてついている。頬のあたりにはエラのような切れ込み。生臭い匂いがこの気持ち悪さを増幅させる。

 そして、怪物は俺が驚いている隙をみてまた殴ってくる。

 俺はパンチの衝撃を受け、冷静さを取り戻した。次に飛んでくる拳を躱すと、右手のナイフを怪物の腹に刺す。怪物がうめき声をあげて腹に刺さったナイフに手を伸ばす。そのすきに俺はナイフから手を離し、右手で相手の顔面めがけ腕を突き出す。

 パンチが相手の顔に当たる。怪物は顔をのけぞる。良い手ごたえだ。

 想像以上の威力に自分でも驚いてしまう。それは相手も同じなようで、様子見をしていた後ろの怪物たちが俺の攻撃を見て騒ぎ始める。そして、前の二人が俺に向かって走りだした。相手の手には武器がある。

 俺は後ろを向いて逃げたした。すると脚に相手の投擲した武器が当たる。俺は倒れてしまう。その後すぐに投げられた武器を見る。それは棍棒のようなものだった。棍棒を拾い上げ反撃しようとしたところに、もう一人の棍棒が頭に振り下ろされた。

 怪物が倒れた俺の両腕をそれぞれ抑え込み、拘束する。必死の抵抗。利き腕である右手の方がなんとかほどける。

 だが、いつの間にか意識を取り戻していた最初の怪物が落ちてた棍棒を拾うと、それで攻撃をしてきた。最後の抵抗も空しく終わってしまった。

 俺は3人がかりで拘束された。


「boouyu,kokkos」

「boutetekk!」


 怪物たちが興奮した口調で会話をしている。その言語は俺の知らないものだ。俺は抵抗を諦め、相手の観察をすることにした。左側の怪物は俺の抵抗が無くなったあとも、常にこちらを見ていて警戒を緩めない。

 後ろにいるのがリーダーか?会話の様子からすると、発言力が一番強そうだ。外見をよく見ると一人だけ服装が異なってるし、頭の上には他の奴らに無いトサカがある。身体も他の個体より明らかに大きい。今俺を拘束している奴らが俺より低い170cm程度であるのに対して、あのリーダーは2m以上はありそうだ。筋肉も他のものよりついている。


「beteiigtu」


 リーダーが奇妙な言葉を発して、テントに向かってゆっくり歩く。ひとしき荷物をあさると、今度は俺のほうに近寄り、身体検査をしてくる。特に何も発見するものがないとわかると、また口を開いた。


「bkraart、mimira」


 リーダーは懐から何かを取り出す。


「拳銃!?」


 この世界に拳銃があるなんて話は聞いてない。リーダーは拳銃を俺の額に向けると、ニヤリとした顔を浮かべ、その引き金を引いた。


 バン!


 銃声が響く。銃弾は俺に直撃し、重い痛みを与える。銃弾は俺の身体にぶつかると砕けるように消えた。


「bububiip!?」


 動揺したような反応。怪物は直ぐに次の引き金を引く。


 バン!バン!


 2発の弾が先ほどと同じように俺に当たり、また砕ける。


「bububiip!bburppliaa!!」


 リーダーは狂ったように引き金を引く。

 4、5。6、7、8。俺は痛みのなか冷静に弾の数を数える。5発目と6発目に少し間がある。

 怪物の拳銃から血が垂れているのに気が付く。俺は何もしていない。この血はいつから垂れていた?少なくとも身体検査をされている時にはなかった。

 9、10。11、12、13、14、15。まただ。10発目と11発目の間に間が存在している。その間に拳銃が淡い青色の光を出したように見えた。リロードをしているのか?

 15発の弾丸が俺に放たれた。だが俺は死なない。その姿を見て、胴体を押さえつけていた怪物が何か恐ろしいものを見る目をする。震えだしたと思うと、リーダーと同じような言葉を発しながら棍棒で俺のことを殴り始める。

 腹部には棍棒の痛み。頭部には銃弾の痛み。朦朧とした意識の中、俺は思考する。撃たれた弾は21発。装填できる弾の数が銃の見た目に反して多すぎる。そして5の倍数ごとの奇妙な間。この間にリロードをしてるとみて間違いがないだろう。


 バン!


 22発目。

 そろそろ俺の体力も限界のようだ。猛烈な痛みにとうとう意識が途切れそうになる。

 経験したことのある感覚。これは死だ。最後の力を振り絞り口を開く。


「お前ら覚悟しろ。次にあったら殺してやる」


 目の前が暗くなる。


 ・・・・・・。



 ***


 目を開くと、部屋にいた。ここは俺の家だ。【運命を転(ドラ)がす女神の右手(イバー)】が発動したのだ。隣に文香の姿はない。


「文香!」


 思わず叫んでしまう。すると、台所のほうから「はーい」と声がする。そういえば今朝も俺が起きる前に朝食を作ってくれていた。目の前にはスキル欄が浮かんでいる。


「これを真剣に考える時が来たのかもしれない」


 村での生活の中で、何個か目星をつけていたものがある。日常生活に有用そうなものは何個か効果を実験したりもしたけれど、戦闘スキルについてはまだ何も実験していない。名前だけの情報で必要そうなものを選んで、セットする。


『上位察知:Lv1』


『体術:Lv4』


剣術ナイフ:Lv1』


無詠唱魔法サイレントマジック:火』


『The Gre(グレート)at Gatsby(ギャッツビー)


 スキルを付けた瞬間、大体のスキルの効果が直観的に知覚される。

 スキルの中にはレベルがついているものとついていないものがあるが、レベルは高ければ高いほど効果が強いのは検証済みだ。ほとんどのスキルがレベル1だが、中には初めからレベルが高いものもある。現在確認できている高レベルのスキルは『超位運搬術:Lv5』、『超位運転術:Lv5』。

 これ以外もパッと見だと肉体を使うようなスキルはレベルが高いように思える。『上位体術:Lv4』もその一環だろう。推測できる情報は、スキルは下位、中位、上位、超位の順で強さが決められていること、またレベルが5でカンストしているということ。

 スキルのレベルアップ条件は不明だが、普通に考えるなら使用回数や使用時間はまずかかわってきそうだ。他にはイベントをこなしたすると変化するものもあるかもしれない。


 文香がドアが開いた。

「さっきはどうしたの?いきなり大声で叫んだりして。ってすごい酷い顔をしているわ。悪夢でも見たの?」


「あぁ。悪夢みたいなもんかもな。冷静に聞いてくれ。俺は未来から戻ってきた。バビロンに向かう途中、怪物の集団に襲われて殺された」 


 文香が驚いた表情をする。


「とりあえず詳細はあとで話そう。今日の出発は延期する。作戦を立て次第バビロンに向かおう。

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