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吸血鬼のティータイム

 八目凪と邪眼みゆりはインスマス郊外の屋敷でティータイムをとっていた。

 深夜12時。ヴァンパイアは夜の生き物である。暗闇の中だとしても二人の目には昼の時間のように部屋の中を見渡せた。


「この紅茶はすごく美味しいわね」

 仮面を外したゆみりが話す。


「そうね。カインズ様がお取り寄せしてくれたみたいよ。十六夜天狐が紅茶の研究をしててカインズ様によく送ってくれたみたい」


 十六夜陽菜がカインズに紅茶を送っていたのは別の理由があった。

 彼女の姉に対するプレゼントの意味合いと、カインズに対する強烈な皮肉の意味合い。

 しかし、彼女たちはアンデットであり紅茶を味わえないカインズがわざわざ自分たちのためにそれを取り寄せてくれていると勘違いをしている。


「たしかダージリンっていうのよね。ストレートがすごく合うわ」


「ストレートもいいけれど処女の血を数滴入れると風味が増すわよ」



 穏やかな時間。



 八目と邪眼はお互いのことを愛している。それは自然に発生したもので【魅了】が関係しているわけではない。

 日中は常に八目が邪眼の影に隠れて過ごしている。夜中になると二人で行動を共にする。

 邪眼は普段夜であっても、その真の姿をあまり人に見せない。しかし、このティータイムだけは仮面をとることにしている。

 一日のうちで唯一邪眼が素顔をさらし、二人で話し合うティータイム。

 だからこそこの夜の時間は二人にとって特別なものであった。

 そこに邪魔をするものがいた。


「17人?」


「そうみたい。数が多いわ。どうする?」


「あなたはカインズ様の下にいって。私は様子を見てくるわ」

 邪眼はそういうと、仮面を再び装着して、窓から飛び降り外の様子を見に行った。



 ***


 スンスン。


 邪眼は周囲の匂いを嗅ぐ。


「鬼の匂いに似ているけれど、死肉の香りもする。屍食鬼かしら?でもそれにしては少し違った匂いがする」


 屋敷の外では17体の武装した屍食鬼がいた。


 邪眼は一人の背後に忍び寄り、吸血をした。



 ***



 邪眼が17体の屍食鬼全てを殺したころカインズ達が出てきた。

 邪眼は既に仮面をつけている。


「仕事が早いな。吸血したのか?」


「最初の3人は吸血しました。あとはカインズ様のスキルのほうへ回した方が良いと判断し、全て首を落とすだけにしています」


「そうか。良い判断だ」


 邪眼が腹の方を探り、肉をつねる。

 つねられた肉は蝙蝠として邪眼の身体から分離した。その蝙蝠は赤く輝いている。

 蝙蝠が分離した部分からは血が垂れる。それから直ぐに再生を始めた。

 邪眼が赤色の蝙蝠をゆっくりと割く。中からは深紅に輝く玉がでてくる。


 八目は玉の下で手で器の形を作った。

 紅玉からは血が滴り始める。八目の手に血が満杯になると、彼女はそれを飲んだ。


 真祖である八目は吸血したものの記憶を吸収することができる。


 カインズのスキル『早すぎた埋葬』を使えば死者をアンデットもしくは人間として復活させることで情報を得ることができる。

 しかし、そこで得られた情報は言語情報だけにすぎない。視覚、聴覚、嗅覚の情報で本当は大事なものが抜け落ちてしまうことがある。

 そのためのリスクケアとして邪眼は血を吸血し『鮮血の紅玉』にそれを吸収させ、真祖である八目に受け渡した。


 カインズが屍食鬼の一人に対して『早すぎた埋葬』を使う。アンデットとして一人が蘇る。


「お前たちの目的はなんだ?」

 カインズがアンデットに問う。


「貴族から財を強奪しろと命令されてここに来ました」


「誰がそのような命令をした?」


「鈴木ペンドラゴンです」


「そうか」


 カインズは思考する。鈴木ペンドラゴンはほぼ間違いなく転生者であることをカインズは知っていた。

 屍食鬼17人で襲撃にくるということはカインズが近くにいるということを鈴木は気が付いていない可能性が高い。

 つまり、今回の襲撃はカインズ達にとって結果的に有利なものということになる。


「鈴木は今どこにいる?」


「わかりません。拠点はインスマスの東の屋敷にあります」


「他に鈴木がいそうな場所は?」


「インスマス郊外の洞窟に大量の死体があります。鈴木も3日に一度はそこにいくはずです」


「わかった。下がっていいぞ」


 アンデットは屋敷に戻ると、他の従者と同じように雑務に戻っていった。


「みゆり、鈴木の顔はわかるか?」


「記憶で観ました。わかります」


「そうか。では洞窟にいってくれ。好きに暴れてきていい。だが鈴木がいたらすぐに退散しろ」


「了解です。カインズ様」


「念には念を入れておきたい。『早すぎた埋葬』」


 カインズはスキルを使用する。カインズの『早すぎた埋葬』はリゼのギフト【蛇性の婬】によって強化されている。

 本来はエピクロスの杖の効果によって強化されるものだったが、カインズがミーミルの泉に飛び込んだ際、杖の力も分解され、リゼのギフトとして再構成された。

 それによって普通のアンデット創造とは別の能力をカインズは使用できる。

 アンデット創造では死者をアンデットとしてこの世に蘇生させる。そこに魂はない。

 もう一つの力では死者を元の人間のまま蘇生させる。蘇生させられたものは自我を持つし、蘇生によるデメリットもほとんどない。

 唯一存在するデメリットは対象のスキル欄が一つ減るということだけだ。冒険者であれば2つか3つのスキルを持っていることがほとんどであるため2,3回は蘇生できる。

 一般人でもスキル欄を一つは必ず持っている。故にカインズは生死を状態として扱えると多くの人々から見られている。


 カインズは屍食鬼の死体から、元の人間として彼らを蘇生させた。

 この蘇生方法を選ぶ場合は生き返った者はカインズの支配下にはない。通常ならばすぐに【1984年】が使用され、カインズの部下として扱われるようになる。

 しかし、今回の場合は違う。彼らは血液タンクとして復活させられた。


「こいつらの血を持っていくといい。屍食鬼の血はまずいんだろう?」


「ありがとうございます。カインズ様」

 八目は戸惑っている人間の首を一瞬にして全てはねた。


「『鮮血の紅玉』」

 深紅に輝く玉が空中に現れると、死体から血を吸っていく。玉は少しだけ大きくなった。


「では洞窟に視察にいってきます」


 八目はインスマスの闇に消えていく。



 ***


 鈴木と望月はある家にたどり着いていた。


「大体の情報はわかったな。月読人か。あとは時間と場所さえわかればいい」


「家に突入して全員屍食鬼化すればいいじゃない」


「いや、そうとも限らん。外堀は埋めた。あとは聞き込みでもしてゆっくり探ってみるよ」


「あらそう? 私そろそろコレクションがしたくなってきたわ」


「逃亡はもういいのか?」


「5日たっても噂は全く聞かないわ。見失ったんじゃない?」


「そうか。俺としても鍵のヒントが得られてよかったよ。好きな時に自由にしてくれていい」


「じゃああと少しだけ滞在しようかしら。行き先を決め次第出発するわ」


「わかった」

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