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インスマスの影

 A級冒険者マサヨシは仲間のタケル、ヒロシと共にインスマスに来ていた。インスマスには彼らを含め、30人の冒険者が集まっていた。

 緊急クエストが発令されたのである。

 S級冒険者ゴブレイがネオ・ゴブリンロードを倒してから、東大陸ではゴブリンの発見報告がなくなった。ところが、東大陸の最北端の街インスマスの近くの街で徐々にゴブリンによるものとみられる被害が報告されるようになった。

 事件が起こる場所が徐々にインスマスの方に寄っていき、なおかつその被害が次第に大きくなっていくことにギルドは不信を抱いた。そこで緊急クエストが発令され、手練れの冒険者がインスマスに派遣されたのである。


 クエストに参加したものの殆どがS級冒険者だった。そしてその中にはS級冒険者のなかでも特に名高い冒険者パーティーが参加していた。ルイーゼとボルネフェルト、〈ヴァンパイアハンター〉として知られる男女ペアである。

 ルイーゼのギフトは【魔力増加:Lv5】。代々妖狐族と良い関係を築いた者に贈られる加護がこのギフトを発現させた。

 ボルネフェルトのギフトは【カリスマ:Lv5】。グループ内での発言力を高めるだけでなく、仲間に強力なバフをかける能力だ。そして仲間に信頼される分、ボルネフェルト自体の能力も強化される。

 ルイーゼは魔法を扱い、ボルネフェルトは薙刀を使う。二人の功績のうち一番評価されているのは冷凍保存された氷龍の死体を見つけたことだろう。今まで伝説上の生物でしかなかった龍がかつていたという事実を彼らは見つけたのだ。


 そしてその氷龍から彼らは武器をつくった。ルイーゼは氷龍のコアを触媒とした杖を、ボルネフェルトは氷龍の鋭利な牙を薙刀の刃とした。

 それから彼らの強さはインフレーションした。その名声は瞬く間に西大陸にも届いた。一時期、カインズですら彼らを転生者かと疑っていたほどであった。


 そんな二人と共に仕事ができることにマサヨシは喜んでいた。マサヨシのパーティーはみんな【筋力強化:Lv3】のギフトを持っていた。

 全員が大剣やラージクラブを好む脳筋パーティーである。スキルも充実していないし、魔法は一つも使えない。

 しかし、彼らは己の筋肉のみを信じここまで上り詰めてきた。その実力はS級冒険者に限りなく近いものだった。



 30人の冒険者はインスマスで落ち合うと、ボルネフェルトを筆頭に作戦会議をしていた。


「ボルネフェルトさんの筋肉、もしかしたら俺たちよりもすごくないか?」

 マサヨシがタケルにいう。


「そうかもしれないな。憧れるぜ」

 タケルが呟く。


「あぁ。大胸筋だけでも触らせてもらえないだろうか!」

 ヒロシが小さく叫ぶ。



「どうした? そこの冒険者。何か意見があるのか?」

 ルイーゼが尋ねる。


「おい、馬鹿! なんでもありません。続けてください」

 マサヨシがフォローをする。


 ボルネフェルトが首をかしげたあと、話を続ける。

「もし、何か質問があったら気兼ねなく話てくれ。それでさっきの話の続きだが......」



 大きな武器しかもっていない3人は墓地周辺の調査を担当することになった。

 近くでは一番事件の発生率が高い裏路地にボネルフェルトが向かうことになった。

 ルイーゼは他の冒険者たちを引き連れて洞窟の中へ探索にいくことにした。



 ***


 日が暮れる。


 冒険者たちの殆どがインスマス近くの巨大な洞窟に向かった。

 マサヨシたちの筋肉同好会は墓地の見張りにいき、ボネルフェルトは町中の巡回を始めた。


 深夜0時。


「意外と冷え込むんだな」

 半袖にラージクラブを構えたマサヨシが呟く。


「まあな。だが俺たちの筋肉ならこの寒さを耐えられる」

 タケルが言う。


 ガサガサ!


「何か音がしなかったか?」

 ヒロシが言う。


「音?」

 マサヨシとタケルが戦闘態勢になる。



 この場面で油断をしないあたりがA級冒険者らしい。

 彼らは仲間を信じ、決して油断しないのだ。


 ガサガサ!



「風はない。明らかに何かがあの草むらにいる」


「どうする? 行ってみるか?」


「いや、ゴブリンは夜目がきく。狭いところに行くのは悪手だ。この開けた場所で待ち構えていたほうがいい」


 15分が経過した。


「もしかしたら何かの小型の獣だったのかもな」


「そうかもしれない。一度戦闘態勢を解除するか」


 3人は交代制で睡眠をとることにした。

 1人が起きて周囲を警戒し、少しでも異常があった場合他の二人を起こすという取り決め。彼らが何年間も行ってきたやり方だ。


 深夜3時ごろ、マサヨシはタケルに起こされて目覚める。


「交代の時間だ」


「あぁ。何回やった?」


「腕立て1000回かな」


「わかった」

 マサヨシはタケルが寝付いたのを確認した後、腕立て伏せを開始した。



 ***



 タケルが寝てから20分後、マサヨシは周囲に違和感を感じた。すぐさま二人を起こす。


「なにかやばい感じがする」


 二人も起きた瞬間、何かを察する。


「なにか身体が冷えるようだ」


 多数の足音が聞こえてくる。


「来たぞ。構えろ!」


 3人は既に囲まれていた。


「ゴブリンじゃない? 人間か?」


 30人の男女が徐々に3人に向かって距離を詰める。


「答えろ! お前らは何者だ! これ以上近づいたら攻撃をするぞ!」


 一人の男が3人に食いつこうとする。

 マサヨシはそれを躱し、大きな一撃を後頭部にくらわせた。


「やるしかない!」


 戦闘が開始する。


 マサヨシ達は息の合った動きで敵を排除していった。

 しかし、多勢に無勢。3人のスタミナが徐々に削られていく。

 敵は打たれ強かった。そのうえ、殺しても殺してもどこからか沸いてきた。

 3人の攻撃は大振りであるがゆえに集団に対する戦いは不利だった。



 タケルが足元をすくわれ、態勢を崩した。

 その瞬間、敵はタケルを集中攻撃した。

 タケルは剣やメイスの攻撃を受け、やがて力尽きた。


 タケルの死体は素早く回収されると、そこに敵は群がった。

 5人程度がタケルの死体に群がり、その死肉を食べ始めた。



 クチャ。クチャ。



 嫌な音が響いた。

 マサヨシとヒロシは必死にタケルの元に駆け寄ろうとするが、数に押される。


「誰か! 誰かいないのか! 助けてくれ!」

 マサヨシが叫ぶ。



 ピキピキ、パリン!


 氷が墓地全体を包んだ。


 敵はみな氷漬けにされて動かない。


 墓地の外から一人の男が歩いてきた。



「ボネルフェルトさん!」

 ヒロシが歓喜の声をあげる。


 ボネルフェルトは無言のまま彼らの元に歩いてくる。

 そして彼らの横を通り過ぎて、タケルの元へいった。


 ボネルフェルトは地面に武器を置くと、タケルの首元に食らいついた。

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