転生者グループとカインズ
新章です。
4章では転生者同士の血で血を洗う戦いがメインです。
インスマスの隣町にカインズ・ジョージ・オーウェル率いる集団は滞在していた。
3人の貴族風の男女。それに仕える10人の従者たち。3人のうち中でも2人の相貌はこの上ないほど美しく、見る者の目を引き付けた。
ハスターが降臨した次の日の昼、一人の仮面をかぶった少女が集団の中へ入っていくと、カインズの前にひざまずき、報告をはじめた。
「カインズ様、ハスターが降臨しました」
報告したのは落とし子の中でも特に強い、邪眼である。
1カ月ほど前から邪眼はカインズとエルニクスの指示でアルデバラン周辺の調査をしていたのだ。
「そうか。ご苦労だったな」
信者の一人に憑依したカインズが答える。
既に大陸の殆どの地域の人間が知らないうちに【1984年】の術中にあった。
従者たちは現地で調達された人材だ。オーラの【菊花の約】のためのストックとして常に10人程度がカインズ達に仕え、足りなくなったらすぐに補充される。
カインズがしばらく何か考えるようなそぶりをし、口を開く。
「一度、エルニクスと相談をしたい。30分後に再びそちらに呼びだしてくれ」
「わかりました」
オーラがギフトを解く。
***
――ヘルヘイム帝国 玉座の間――
「ハスターが降臨したと邪眼から報告があった」
カインズは目の前にいる部下、エルニクスに話を伝える。
「そうですか。やはりバベルの塔の崩壊が鍵だったようですね」
エルニクスがカインズに答える。
「そうだな。そうなると今回のルルイエ計画は大きな意味を帯びてくることになる」
「ムーンレンズ、そして時を駆ける獣王の血さえそろえばSO計画は終わったも同然です。肉と魂はそこらじゅうにありますから」
「今回の計画でイレギュラーになるといえば青頭巾の存在くらいか」
「そうですね。私の分析が正しければ、彼らのリーダーは転生者。もしくはそれに近いものだと考えられます」
「お前の【羊たちの沈黙】ではどちらの可能性が高いとみている?」
エルニクスのギフト【羊たちの沈黙】は情報を解析する能力だ。全体の60%の情報を集めればエルニクスは100%の内容を理解することができる。
解析した情報によってエルニクスは未来を予測できる。一見最強の能力に見えるがそれは違う。あくまでエルニクスができるのは未来の予測であって未来視ではない。
未来は確定した状況が存在しているわけではない。何重にも重なった未来の状況を確率的に把握できるというのがエルニクスの能力だ。
例えるならプロのビリヤード選手がどこに玉をあてれば台がどのような状況になるか予測できるようなものだ。突いたボールが予測通りの場所にいくとは限らない。
だが仮にボールが狙い通りの場所に当たらなくても、新しくなった状況で次の最善手を知ることができる。常に最善の手を指し続けていれば最終的には勝利することができる。
「先日お話しさせていただいたほうです。彼らがカインズ様とは別の何者かによって転生させられた可能性を追っています」
「千尋、陽菜、イキリトなどをαグループとし、それとは別のβグループがあるとする仮説か」
「カインズ様はαグループ、そして、森の大賢者とやらも同じグループに所属しているとみております。先日カインズ様が会談したあの川霧という転生者も恐らくαだと思います」
「レアケースの話をしているときに出ていた、望月望とサトゥー須磨太郎はどうみている?」
「彼らが両方ともαである可能性は切れます。2人ともβかもしくは最低でもどちらか一人がβかと」
「そのうちのどちらかがルルイエ計画に関わってくる可能性がゼロではないんだな?」
「可能性としては1%未満の確率ですが、ゼロではありません」
「わかった。準備しよう」
カインズは一度間をとり、別の話題を始める。
「ところで、ティンダロスの王捕獲計画はどうなっている?」
「難しいところですが、もう開始してしまってもいいでしょう」
「カインズ様が送られたドワーフも馴染んできているころでしょう。あの転生者が用心深いものでなければ計画は始められます」
「ドワーフが殺されていた場合はルルイエ計画の終わりが見え次第、直接動こう」
「ではマリーナとセバスチャンはすぐに行動できるよう派遣しておきます。ガゼルがルルイエ計画に参加する以上、トルキン公国とマリーナの【ドグラ・マグラ】が必須になります」
「あぁ任せたぞ。そろそろ時間だ」
カインズは再びオーラのギフトによって憑依を始める。
***
カインズは再び目を開くと、世界樹の落とし子たちに話しかけた。
「こうやってお前たちと旅ができるのも悪くない。今晩も楽しもうじゃないか」
カインズの一言に落とし子たちは感動の表情をみせる。
「そういってもらえて光栄でございます」
眼鏡をかけた男、ガゼルが答える。
「リゼの能力のおかげでカインズ様は3時間も憑依ができるんですよね?」
オーラが話す。
「そうだ。それにこの身体は既に死んでいる。だから睡眠の必要もない。今晩は盛大に飲み明かそうじゃないか」
カインズは心地よさそうな笑みを浮かべる。
カインズは近くにいた従者の一人に話しかける。
「晩御飯の支度はできているのか?」
「はい。もう少しで調います」
その言葉を聞いて銀髪の少女、八目凪が質問をする。
「今日の夕食は何になるのかしら?」
「八目様と邪眼様には別に若娘のスープをご用意しております」
「それは楽しみだ」
仮面を被った金髪の少女が反応する。
「凪もみゆりもヴァンパイアだからな。オーラとガゼルは気を付けないと明日の朝干からびたまま発見なんてことがあるかもしれないぞ?」
カインズの冗談にガゼルは震える。
「カインズ様、私たちは仲間に手を出すことなどするはずがありません!」
凪は真面目な顔をして答える。
邪眼もコクコクと首を振っている。
「ジョークだよジョーク。これがアメリカンジョークっていうやつなんだ。彼らは何のひねりもなくつまらないことを言うんだ」
「アメリカンジョークですか? 始めて聞きました。前の世界の国のことですよね。メモしておきます!」
オーラが懐から紙を取り出しメモをしていく。
「ははははは! お前たちは最高に面白いな。今夜も楽しくなりそうだ」
カインズは笑顔でそう言った。
新生活により投稿ペースが若干ダウン。週3は投稿したいです。
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