狐狩りの報復
3章最終回です。
ハスターが降臨した翌日、大河と文香は事件の調査を行い、その後に帰国した。
大河と文香が国を離れていた2週間の間に嘘松王国では狐狩りが問題となっていた。
大河たちが天狐になってすぐのころ、外の世界を旅し、大河と文香を連れてきたという楓の話が嘘松王国中に広がった。その話の影響で若い妖狐たちの間で外の世界を旅するのがブームになっていた。
そこで外の世界を何も知らない妖狐をターゲットに、狐狩りが行われるようになった。大河と文香が国を離れているとき、その勢いは更に盛んになった。
大河はその報告を聞くとすぐさま手を打った。
根本的な解決を目指すために調査隊を結成し、情報を集めた。1カ月半後、狐狩りの多くはトルキン公国を挟んだ向こうにある人間の国、アルトリア共和国の人間が関わっていることが分かった。
大河はアルトリア共和国と何度か会談を開き、1カ月間の間、交渉を重ねたが、事態の改善は見られなかった。
『時計仕掛けのオレンジ』なども利用されたが、アルトリア共和国自体が民衆を放任する国であり、トップをコントロールしても効果は薄かった。
最終的な手段として、大河と文香は狐狩りを行った犯罪組織を直接的に叩き潰すことを決定した。
「ターゲットは5つの組織。既にアルトリア共和国には通告をし、許可を取らせてある」
大河は文香と最終確認を行っていた。
「あなたは手を汚さなくてもいいのよ?」
文香が大河を気遣う。大河は現在、PTSDを患っている。
「大丈夫だ。既に決めたことだ。奴らは人間ではない。今回行うのはゴブリン狩りだ」
大河と文香は戦いの用意をし、アルトリア共和国に向かう。
***
「これで最後か」
大河は球状の魔導銃を放つ。いまの一撃により3つの組織が壊滅した。
大河と文香は『存在の耐えられない軽さ』を解除する。
「あなた、無理してない?」
「あぁ。全く何も感じない。やっぱりこいつらは人間の形をしたゴブリンだ」
大河は断言する。
大河が普段の魔導銃を使わないのはその情報を知られたくないからだ。イキリト以外の者は大河の攻撃方法がどんなものか知らない。
大河はCQC&Mの華麗な動きで、犯罪組織を殺していった。
「残りの2つだが、青頭巾に関しては警戒をしておきたい」
「そうね。構成員が全員グールという噂もあるわ。雨月物語『青頭巾』何か関連があるのかも」
「それに、2か月半前は盛んだった行動がここ最近では完全に途絶えている」
大河と文香は事前の情報を頼りに、青頭巾のアジトに乗り込んだ。
しかし、そこには誰もいなかった。
「感づかれたのか? いや、今までのは全て暗殺だ。目撃者はいない」
「もっと前から組織ごとここを離れていたんじゃない?」
「俺たちが動くことがわかっていたのか?」
「何か全く別の理由でいなくなったのかもしれない」
大河は『時計仕掛けのオレンジ』で周囲の人間から情報を集めた。
結果として2か月前に組織ごとインスマスという都市に向かったことがわかった。
「いないなら仕方がない。再発防止のために最後の組織を徹底的に叩き潰し、周囲に恐怖を与えよう」
「『存在の耐えられない軽さ』は使わないのね?」
「あぁ。いらない。ここ一帯の犯罪者すべてに俺たちの国民に手を出したらどうなるか知らしめてやる」
***
デビルタランチュラ。アルトリア共和国を裏で仕切る巨大犯罪組織。
麻薬密売や奴隷商売、暗殺なども請け負っており、構成員の数は2000を超える。
「足」と呼ばれる8人のトップが存在しており、各人がそれぞれの部門を取り仕切っている。
8つの部門のうち一つが狐狩りである。といっても狐狩り自体は一攫千金という側面が強く、半年に一度行えば利益が出るような事業だ。
大河と文香は事前の潜入捜査により3つのアジト全てを把握していた。
その中でも一番中枢となるアジトに大河たちは乗り込もうとしている。
「狐狩りに関わっていた奴らは全員始末する。他の奴らは取り逃しても問題はない。何人か取り逃しておけば恐怖を蔓延させるのが楽になるかもしれない」
「二つは『白鯨』でいいのよね?」
「あぁ。幸い中央のアジトに狐狩りの部門が存在していた。そこは直接乗り込んでやるしかない」
「そろそろね」
文香が大河の時計を確認する。
「時間だ。作戦を開始する。『白鯨』」
30mを超える巨大な白鯨が二つのアジトの真上から落下する。
質量攻撃。単純、故に成す術がない。
ドゴーン!
巨大な衝撃波と共に白鯨は地面と接触した。デビルタランチュラのアジトは既に半壊している。白鯨はアジトの上で楽しそうに暴れ始める。
多くの人間がその姿を凝視し、叫び声をあげた。
白鯨には敵のヘイトを集める効果がある。元来、白鯨は敵の攻撃を引き付ける、壁要員として使われるものだ。
白鯨自体の攻撃は単調なものだが、圧倒的な生命力を持っている。上空から落下しても死なないのはそのことによる。
大河は白鯨を小さくさせていく。
白鯨の大きさは大河の任意である程度変えられる。しかし、小さくても2m、最大でも30mほどまでにしからならず、質量は10m大の時のもので一定である。
全長が5mほどになったとき、白鯨には4本の脚が生えた。
白鯨は大河の方に向かって走ってくる。その白鯨を追って組織の人間たちも走る。
白鯨から大河の元へ着くまで約5分。大河と文香はその時間内で任務を終わらせる予定だ。
白鯨の音を聞いて出てきたアジトの人間を大河は体術とナイフで殺していく。
そのまま中に入ると、遠い敵には魔導銃を放ち、近くの敵は魔法やナイフで切りつけ、殺していく。
「『A Study in Scarlet』」
文香は緋の目を使用して逃げようとしている人間を確実に処理していった。
「左の扉の先、とらわれてる奴隷がいる」
「わかった。余裕がある。助けよう」
大河は奴隷たちの鎖を全て断ち切り、解放した。
「奥の通路を曲がった先、研究所のようなものがある」
大河と文香は中にいる人間を全て殺した後、資料を調べた。
「魔法の研究か。参考になりそうなものはないな。全て焼却でいい」
ぺチぺチぺチぺチ。
2匹の白鯨が大河と文香の元に歩いてくる。
「よくやった」
大河がそれに触れると白鯨たちは消えた。
しばらくすると、60人程度の男が白鯨につられてやってきた。
彼らは全員、白鯨の質量攻撃を生き延びたデビルタランチュラの構成員だった。
「いいところにきた。俺についてこい」
男たちは白鯨の姿がないのに気が付き、自我を取り戻す。
異様な光景に驚き戸惑うも、先頭の男が魔導銃で殺されたのを見て、全員が大河におとなしく従うことを決意した。
大河は隠された部屋に侵入する。
広間には100人の武器を構えた人間がいた。
「俺たちのアジトに何かしたのはお前か?」
リーダーの一人らしき坊主頭が大河に尋ねる。
「そうだ。お前たちの中で狐狩りに関わっていた奴は名乗り出ろ」
沈黙。
「いないのか? そんなはずはない。少なくともその6人の中に一人はいるはずだろう?」
大河はリーダーらしき6人を指さす。
「そんなことは関係ないだろう。どうせお前はここで死ぬんだからな!」
坊主頭が大河に切りかかる。
大河は体術でそれを流し、相手の態勢を崩すと、ナイフを心臓に突き立てる。
「仕方がない。ここにいるやつらは全員殺させてもらう。ゴブリンなら問題はない」
大河の蹂躙が始まった。
大河は『The Great Gatsby』や『A Study in Scarlet』を使うことなく、かかってくる人間を的確な動きで殺していった。
その強さに怖気づいたものは逃げようとするが文香の魔法で全て処理された。
3分後、広場に立っていたのは大河と文香だけになった。
「鬼ごっこをしよう。1分だけ待つ。今のうちに逃げろ」
大河は白鯨が連れてきた男たちにそう指示を出した。
男たちはすぐさま散り散りになって逃げていった。
「これで仕事は終わりだ。文香、長時間緋の目を使わせてしまってすまない」
「陽菜さんからもらった大和の指輪と【拍手喝采】を使えばここまで使用時間を伸ばすことができるのね」
「そうだな」
大河と文香はアジトから出ていく。
そして、そのまま嘘松王国へと戻っていった。
次から数話は3.5章となります。物語の中で描写しきれなかった設定や、4章に必要な予備知識などを書きます。
4章では更に群像劇感が増していきます。
転生者同士の戦いがメインです。見どころは沢山あると思います。
最後には主人公が○○してしまうかも?
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